アルプスの山に暮らすおんじ。彼の元にデーテが一人の少女を連れて来る。名はハイジ。血縁上はおんじの孫にあたる。いきなりの訪問におんじは困惑するが、デーテは構わずハイジを置いて立ち去ってしまう、、、
監督はアラン・グスポーナー。
スイス生まれ。他の監督作に
『リトル・ゴースト オバケの時計とフクロウ城の秘密』(2013)等がある。
主演のハイジ役はアヌーク・シュテフェン。
スイスドイツ語の方言を話す必要がある為、ご当地で行ったオーディションで選ばれた本作デビューの9歳児(当時)だ。
他、共演に、ブルーノ・ガンツ、イザベル・オットマン、クイリン・アグリッピ、カタリーナ・シュットラー等。
ぶっちゃけ一人も知らなかったりする。
原作はヨハンナ・シュピリの『アルプスの少女ハイジ』。
だが、やはり日本人ならばまず頭に思い浮かぶのが、高畑勲、宮崎駿、小田部羊一らが制作したTVアニメ『アルプスの少女ハイジ』(1974)だろう。
そして、本作『ハイジ アルプスの物語』は原作を意識しつつ、
アニメの影響を多大に受けている。
ほとんど、アニメの実写化と言って良いほどだ。
今年観た漫画・アニメ原作系の映画では、ナンバーワンの再現度である。
なので、TVアニメシリーズが好きで
何回も再放送を観たタイプの人間は必ず満足できる。
上映時間111分でコンパクトにまとめられた、まさにダイジェスト版だ。
そして上映時間が一時間を超える辺りから、
自分の涙との戦いが始まる。
アニメで知っているあの話、名場面、どんどん出てくるからだ。
アニメのイメージが大切で、実写化が理想を壊すのでは?と心配する人も居るかも知れない。
心配ご無用、アニメのイメージを崩さず実写には実写の良い所がある。
何より
主演の女の子がもの凄く可愛い。
カワイイからハイジなのか、ハイジだからカワイイのかよく分からないが、他のキャストも含めて何ら問題は無い。
また、スイスの山の広大さ、フランクフルトのゼーゼマン家など、背景美術も素晴らしい。
何も知らないお子様も楽しめる。
しかし、
むしろかつてアニメを観た大人の方が感動する事しきりだろう。
少しでも興味があるなら、ダッシュで映画館に行く事をお勧めする!
以下ネタバレあり
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素人特有?の素晴らしい演技
本作『ハイジ アルプスの物語』に出演しているハイジ役のアヌーク・シュテフェンとペーター役のクイリン・アグリッピは全くの素人である。
しかし、素人だからか?
演技というより素を出しているからか?
二人とも活き活きいている。
反応が生身で素晴らしいのだ。
だが、何も考えていないわけでも無い。
以下、パンフレットにのっていたアヌーク・シュテフェンの言葉を一部抜粋する。
「撮影中は、ハイジのことばかり考えていた。時々、うまくハイジになれなくて成り行きに任せるしかない時もあった。そういう時は、休憩して台本を読み直すのがいいの。あるいは、座って何もせず、ハイジから少し離れてみる。そうすると自然に、突然、ハイジになれたこともあったわ」
これが撮影当時9歳児の言葉である。
う~んファンタスティック。
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席巻!日本のアニメ!
アヌーク・シュテフェンは家庭の方針でアニメを観ていなかったそうだが、
監督のアラン・グスポーナーやイザベル・オットマン(クララ役)、クイリン・アグリッピ(ペーター役)はアニメ『アルプスの少女ハイジ』を観ていたそうだ。
(アヌーク・シュテフェンにも、役作りとしてアニメを観て貰ったそうだ)
日本のみならず、スイスやドイツにおいても幅広い年齢層に視聴され愛されている。
改めて凄い作品である。
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脅威のビジュアル再現度
本作『ハイジ アルプスの物語』は原作を強く意識している、と監督は語っているが、登場人物のビジュアルイメージはアニメの影響を多大に受けている。
ハイジやペーターは素の状態が役になっているが、
おんじやクララのビジュアルはアニメそのままである。
とは言え、一番アニメキャラそっくりだったのが、ゼーゼマン家の召使いのセバスチャンである。
この脅威の再現度は必見である。
また、『ハイジ アルプスの物語』に登場する女性陣は可愛く、そして美人ばかりである。
特にロッテンマイヤーさんが無駄に美人で驚いた。
しかし、美人さ加減が邪魔をしてロッテンマイヤーさんの嫌な感じが軽減されるかと言うと、そんな事は無い。
口を開けばいつものロッテンマイヤーさんだったので安心した。
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自然の美しさ
また、『ハイジ アルプスの物語』においてキャストと共に重要なのはアルプスの風景である。
ロケで訪れたアルプスの風景、そしておんじの山小屋はまさにイメージそのもの。
実際に山上湖などにも行き、こういう実在する自然を映画で撮るという事自体が凄い。
山を登るヤギは勿論本物で、一体どうやって制御したのか(してないのか?)頭をぶつけて喧嘩しているシーンなんかもある。
観たい景色、観たい動物、それら自然の様子をちゃんと押さえてあるのがいいのだ。
因みに、犬のヨーゼフはいない。
どうやら原作には登場しないようだ。
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原作やアニメとの相違点
原作を尊重しつつアニメの影響を受けている映画『ハイジ アルプスの物語』。
しかし、相違点もある。
原作は宗教色が強いが、映画はアニメ同様、宗教色は感じられない。
ハイジとおんじの交流、そして、ままならぬ人の世を描写するにあたり、より現代的に広く受け入れやすくしたものと思われる。
アニメにいたヨーゼフは原作同様、映画にはいない。
また、アニメではクララの車椅子を壊してしまうのは彼女自身だったと思うが、映画は原作同様、クララに嫉妬したペーターが思わずやってしまっている。
そして、ハイジがノートに物語を書くラストは映画オリジナルである。
街で暮らした経験が、家に帰ってもハイジの中に生きているという事を表わしている。
他にも色々違いがあるので、それを調べてみるのも面白い。
言わずと知れた名作『アルプスの少女ハイジ』。
アニメに慣れ親しんだ身としては、その実写化が、原作のみならずアニメ『アルプスの少女ハイジ』の影響も色濃く反映しているのは嬉しい限りである。
それを、スイスの監督が、現地で、現地の人を使って撮っている。
これで面白くないハズが無い、という期待に見事に応えている。
柔らかいベッドより、干し草の方が気持ちよさそう。
フランクフルトのご馳走より、パンとチーズとヤギの乳の方が美味しそう。
それはハイジ目線であるからなのだ。
人にはそれぞれに、幸せになれる場所がある。
この『アルプスの少女ハイジ』のテーマをキチンと描いた『ハイジ アルプスの物語』。
鑑賞後に優しく、気持ちの良い気分になる本作は多くの人に是非観て欲しい作品である。
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さて、次回は『日本SF傑作選1 筒井康隆』について語りたい。こちらも言わずもがなの名作家である。