『この世界の片隅に』のブルーレイ版には特典DISCと90ページのブックレットが付いた特装限定版がある。
どんな内容か気になる人の為に、簡単に紹介してみたい。
因みに私が購入したのは「普通の」特装限定版である。
Amazon限定版の内容には触れていません。
(レビューは参考にしましたが)
*本篇の感想はこちらのページにあります。
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まずは本篇DISCに収録されている映像特典を紹介してみる。
パイロットフィルム
クラウドファンディング支援者用イベント版冒頭エピソード「冬の記憶」(音声無し/字幕)
特報
劇場予告編
TVスポット集
すずさんのありがとう
ノンクレジットエンディング
特に珍しい物でも無く、ソフトを買ったときによくあるヤツだと思ってもらえれば間違い無い。
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特典DISC、内容目次
では、特典の内容を紹介したい。
コンテンツは以下の通りとなっている。
旅のはじまり~映画『この世界の片隅に』制作準備の日々~
練馬アニメカーニバル2015 映画『この世界の片隅に』公開まであと1年!記念トークイベント
呉市美術館 マンガとアニメで見る こうの史代 この世界の片隅に展
アニメーション映画『この世界の片隅に』制作風景背景篇
アニメーション映画『この世界の片隅に』制作風景原画篇
『この世界の片隅に』ライブ付きプレミア試写会
『この世界の片隅に』公開記念!ネタバレ爆発とことんトーク!
劇場舞台挨拶集
アニメーション映画『この世界の片隅に』オリジナルサウンドトラック発売記念スペシャルライブ
のん、すずさんになる
以上の10コンテンツである。
総時間 4:03:04(243分4秒)結構なボリュームである。
以下、個別の解説を入れる。
題字の横の数字は収録時間である。
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旅のはじまり~映画『この世界の片隅に』制作準備の日々~ (36:39)
2011年から始まった『この世界の片隅に』の制作の様子を撮影、紹介している。
ナレーションは尾身美詞(黒村径子役)。
2011年5月に広島、呉へロケハンに行く。
6月には原作者のこうの史代と初顔合わせ。
11月には脚本の第一稿が完成している。
骨子は結構前に出来ている事に驚く。
そこには片淵監督の制作姿勢、
「描く世界の歴史や史実を徹底的に調べ上げる」様子が撮影されている。
その後、雑草ご飯や楠公飯(なんこうめし)を実際に作る様子、
ファンミーティングの様子等が紹介されている。
長く雌伏していた様だが、事態が動いたのは2015年のクラウドファンディングの結果である。
その結果を見て出資企業が集まりだし、本格的に制作がスタートしたようだ。
そして、2015年のクラウド参加者向けのパイロット上映。
2016年11月12日に劇場公開を迎える。
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練馬アニメカーニバル2015 映画『この世界の片隅に』公開まであと1年!記念トークイベント (28:39)
2015年10月17日、練馬文化センターにて行われた片淵須直監督と原作者のこうの史代氏によるトークイベント。
監督と原作者がお互いを最初に意識した時の話、などなど、色々な事が聞ける。
このイベントで、「冬の記憶」や「パイロット版」を上映したようだ。
クラウドファンディングの事を聞かれたこうの氏の「制作は孤独な作業、応援してくれているという意思表示だけでも励みになる」という言葉が印象的だ。
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呉市美術館 マンガとアニメで見る こうの史代 この世界の片隅に 展 (21:36)
入船山公園内にある呉市立美術館において
2016年7月23日~11月3日まで開催された
『この世界の片隅に』展の紹介。
そして、2016年8月20日、海上自衛隊呉音楽隊庁舎(櫻松館)において行われた片淵、こうのによるトークショーも収録している。
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アニメーション映画『この世界の片隅に』制作風景背景篇 (8:36)
原画篇 (7:33)
背景と原画、それぞれの制作工程が紹介されている。
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『この世界の片隅に』ライブ付きプレミア試写会 (12:57)
2016年11月8日、草月ホールにて片淵須直、こうの史代、そして音楽担当のコトリンゴが登壇して挨拶する。
コトリンゴの歌う「悲しくてやりきれない&タンポポ スペシャルメドレー」も収録。
片淵監督は、このままでは終われないという思いから、エンディングのコトリンゴの歌に絵を合わせたのだという。
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『この世界の片隅に』公開記念!ネタバレ爆発とことんトーク! (38:58)
2016年11月20日に行われたトークイベント。
第1部:片淵須直、こうの史代、真木太郎(プロデューサー)
第2部:高渕須直、こうの史代、尾身美詞、新谷真弓(北條サン、広島弁ディレクション)、岩井七世(白木リン)
第3部:高渕須直、こうの史代、尾身美詞、新谷真弓、氷川竜介(アニメ研究家)、藤津亮太(アニメ評論家)
公開後の高評価を受けてご機嫌のスタッフ、キャストによるトークイベント。
赤裸々で面白い話が聞ける。
こうの史代の言葉、
「コトリンゴの『みぎてのうた』を聴いて私の歌だと思った。すずが右手を失っても生活が続くように、私の手を離れても作品は飛び立っているのだなと」が特に印象的だ。
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劇場舞台挨拶集 (19:46)
2016年11月12日公開初日他、節目節目において行われた劇場舞台挨拶の様子を収録。
のんの猫背とキャストの明るい表情がいい。
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アニメーション映画『この世界の片隅に』オリジナルサウンドトラック発売記念スペシャルライブ (38:31)
2017年4月11日、Mt. RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREにおいて開催されたライブイベント。
コトリンゴとカタスミクインテットが出演。
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のん、すずさんになる (30:39)
のんに対するインタビューとアフレコの様子を収録。
作品に対する思い、何を心がけていたのか、難しかった点、お気に入りシーン等が聞ける。
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特典を観て、総合解説
制作開始時には全く先が見えていなかった『この世界の片隅に』。
出資者が集まらず、行き詰まった現状を打破したのがクラウドファンディングであった。
この結果を見て出資者が集まり、制作がスタートしたその様子がこの特典DISCによって明らかにされている。
このクラウドファンディングの出資者、なんと日本全国47都道府県全てにいるのだという。
何故これほどまでに支持されたのか?
それは、監督・片淵須直に対する期待、こうの史代作品のファン、そして呉という街を応援する気持ちが結実した結果であるのだ。
片淵監督は、制作が進まなかった間もファンとの交流を大切にしていた。
それは、監督の前作『マイマイ新子と千年の魔法』がファンの口コミでロングランを達成したという事実を受け、ファンこそ大事なのだという思いがあったればこそだろう。
その流れで挑戦してみたクラウドファンディングと、その結果。
ファンの期待が実際に数字として表れ、制作の後押しとなったのだ。
実際にお金を出したファンは思う。
「この映画の制作には自分の力も少なからず役に立っているのだ」と。
この思いが、制作段階からの支持に繋がり、傑作だった作品を観た後の誇らしい思いにも繋がる。
だからこそ、この作品と関わったファン達は熱狂的に支持してゆく事になる。
ファンに愛され、その大切さを痛感していた片淵監督。
そのファンの力を信じ、クラウドファンディングを行ったことが転機になった。
公開後も片淵監督は劇場を回り、その数は100を超えるという。
ファンとの交流を大切にするこの姿勢こそが、『この世界の片隅に』が圧倒的に支持される要因なのだ。
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結局「買い」なの?
本作『この世界の片隅に』の特典DISCには本篇の追加映像は無い。
作品自体の世界観が広がる様なタイプでは無いのだ。
この特典DISCの見所は、
制作の苦労、
原作者こうの史代との関わり、
ファンとの交流、
ヒット後のキャスト達の明るい表情と裏話、
といったものである。
作品それ自体というより、
作品を作った制作陣の様子がメインである。
なので、作り手自体や、
作品制作の過程、裏話などに興味がある人向けである。
そこに価値を見いだせなければ、観る必要は無い。
だが、作り手目線を理解する事は作品の理解にも繋がり、世界観が圧倒的に拡がる。
一筋縄ではいかなかった制作過程を知る事、それもまた私には面白かった。
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補足
ブックレットは96ページ。
フルカラーで非常に見応えがある。
5倍増しによく出来たパンフレット、といった感じだ。
Amazon限定の映像特典は、のんのアフレコの様子がメインに収録されているそうだ。(14分)
Amazonレビューによると、のんと片淵監督の熱量が伝わってくる、いい映像という事だ。
14分に値段分の価値を見いだせるならば、こちらを買ってもいいだろう。
(個人的に、映像を特典DISCから分離した意図に不満ではある)
結局は、お好みでどうぞ、という事である。
アマゾン限定版はこちら。お値段は多少高めだ。
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さて、次回は世界の片隅に存在する脅威の存在を描いた作品『人間以上』について語りたい。