映画『トロール・ハンター』感想  仕事人!!たった一人で世界を守る男の物語!!

 

 

 

2008年10月13日。映画制作会社「フィルムカメラーテネ」に一本のテープが送られてきた。ノルウェー、ヴォルダの大学生が撮影したらしきそのテープ。地元で発生した熊の密猟事件を取材する中で、怪しげな「ハンス」という男に着目するのだが、、、

 

 

 

監督はアンドレ・ウーヴレダル
本作にて劇場公開映画の初監督を行った。

ハンス役にオットー・イェスペルセン
ノルウェーの有名なコメディアンらしい。

 

北欧、ノルウェーの映画である。

本作『トロール・ハンター』は

POV方式のモキュメンタリーだ。

 

分かり易く言うと、
カメラマン視点で撮った実録風の映画である。

そして、トロールが出てくる。
妖精の一種だが、ほんとんど怪獣である。

そう、『トロール・ハンター』という題名そのまま、

トロールを退治する様子を撮影した映画である。

 

なんだ、B級映画か、と思われるかもしれない。
確かにそうだ。
『トロール・ハンター』は

B級マインドに溢れたモンスター映画である。

 

B級で何が悪い!!
妙に細かいトロールの設定。
哀愁漂う仕事人のハンス。
ノルウェーの自然のもの寂しさ。

いろんなものが相まって、不思議な味がこの『トロール・ハンター』にはある。

「おや」と少しでも思ったならば、この映画をオススメする。
意外な「掘り出し物」として楽しんでもらいたい。

 

 

以下ネタバレあり


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  • POV方式のモキュメンタリー

POV方式とは Point of View Shot の略である。
要するにカメラマン目線、カメラ主観目線で撮った作品の事である。

モキュメンタリー(mocumentary)とは
Mock(偽物の、~の真似をして)という単語と
Documentary(実録、記録映像)という単語の混成語である。
つまり実録っぽく撮った映像作品の事である。

撮影方法としては別のものだが、POVの性質上、作品がモキュメンタリーとなる場合が多い。

有名なモキュメンタリーとしては、古くは米国のラジオドラマ『宇宙戦争』(1938)がある。

POV方式のモキュメンタリーには面白い作品が多い。
映画としては『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』がそのブームの先駆けとなり、以降POVホラーというジャンルを確立させた。

『REC』シリーズの1、2。
『クローバーフィールド-HAKAISHA-』
『パラノーマル・アクティビティ』
『イントゥ・ザ・ストーム』
『クロニクル』
『ヴィジット』等々、、、

勿論、POVでありながらモキュメンタリーではない作品もある。
『ハードコア』は全篇一人称視点、つまり、ゲームで言うところのFPSみたいな感じの映画であった。

また、POVには「素人が撮影した」という形式をとり、荒い映像と手ぶれグラグラを敢えて演出として採用している作品も多い
なので、観ている内に車酔いのような感覚に陥る人もいるだろう。

特に『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や『武器人間』はマジでゲロ吐きそうになりました。

しかし、本作『トロール・ハンター』は違う。

 

  • こだわりの作り

『トロール・ハンター』の映像は手ぶれも無く視点は安定している。
映像も綺麗だ。

常に天気が悪く、ほの暗く広大で美しい自然が余すところなく写されている。
この映画の隠れた魅力だ。

POV方式であっても映像のクオリティは一定に保っていたいという監督の拘りだろう。

そして、その拘りはメインディッシュたる「トロール」の設定にも存分に表れている。

寿命は1000~1200歳。
妊娠期間は10~15年。
加齢により頭が増えるが脳みそはない。ただの突起物。
キリスト教徒の血の臭いを嗅ぎ分ける。
家畜を食べる。人も食べる。木炭とコンクリートの混ぜ物が好物。タイヤを囓るのが好き。
紫外線を浴びると致命的。

ざっくりと、こんな感じのことをトロール・ハンターのハンスが徐々に語ってゆく
細かい生態が設定されている、これがワクワクする

そして、出てくる「トロール」達も味がある。
ぶっちゃけCGだが、夜中や暗視カメラ、薄明の雪の広原をバックにすると汚い野生動物そのものに見えるから不思議だ。

そして、『トロール・ハンター』には奇妙なユーモアもある。

家畜を荒らすトロールの所業を「熊」で偽装する。
ブリキの鎧でトロールの前面に立つ。

字面では伝わらない面白さがある。

 

  • 仕事人ハンスの哀愁

しかし、本作『トロール・ハンター』の最も魅力的な点はハンスの哀愁である。

ハンスは誰に知られるでもなく、感謝もされず、身を粉にしてたった一人で戦い続けている

そして、トロール狩りにハンスは誇りを感じている訳でもない。
ただ、仕事だから、国に只一人のハンターだから、彼以外にやる人間がいないからやっているだけなのだ。

ハンスの行動の真価を知っているのは、少数の人間以外では、当の狩られる「トロール」だけなのだ。

だからハンスは、いつしか狩る対象のトロールに自分を重ねる。
トロールが居なくなれば、自分の価値もなくなるのだ。
彼はだから、最期に立ち去るしかないのだ。

 

少し毛色が違うが、この哀愁はSF小説の『中継ステーション』でも似たものが感じられる。

 

  • 小ネタを少々

本作『トロール・ハンター』は、一応の台本はあったものの、セリフは全てアドリブらしい。

アドリブでハンス役をやったオットー・イェスペルセンは朝食のトロール殲滅エピソードを語ったのか?
どちらにしろ、あのライブ感はアドリブならではだったのだろう。

そして、ラストのノルウェー首相(2010年当時)イェンス・ストルテンベルグの発言は紛れもなく本物の映像である。
首相がトロールの存在を認めたのだ!!

(ノルウェーにあるトロール油田(そういう名前の油田がある)の話らしいが)

 

 

本作『トロール・ハンター』はB級映画である。

しかし、自然描写、トロールの設定、ハンスのキャラクター等、嵌まる人間にはハマる要素が満載である。

それこそ、正しいB級映画であり、『トロール・ハンター』はその系譜を継いでいるのだ。

 

 


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さて次回は、少年漫画の正しい系譜を継ぐ作品『キン肉マン』完璧超人始祖編について語りたい。