幻想・怪奇小説『ぼぎわんが、来る』澤村伊智(著)感想  コワ~イお化けが、きっと来る~♪

 

 

 

正体不明の怪異、「ぼぎわん」が来る!!妻と子供を実家に帰し、霊能者の指示に従い対決する準備を整えた田原は、自らの過去を思い出す。「ぼぎわん」は自分の子供時代から、ずっと狙い続けていたのか、、、

 

 

 

 

著者は澤村伊智
本作にて第22回日本ホラー小説大賞を受賞しデビュー。
他の著作に
ずうのめ人形
などらきの首
『恐怖小説キリカ』
『ししりばの家』がある。

 

まず、残念なのが、四半世紀の歴史のある「日本ホラー小説大賞」が消滅してしまう事です。

文庫本に挟まっていたチラシで知りました。

「横溝正史ミステリ大賞」と統合されるという事で、選考委員を拝見しましたが、どうやらミステリ寄りですね。

数々の名作、名作家を生み出してきた小説大賞が消えてしまうのは残念です。

 

さて、その歴史有る「日本ホラー小説大賞」において、史上初、選考委員が全員推薦したというのが、本作『ぼぎわんが、来る』です。

迫り来る謎の怪異、「ぼぎわん」。
圧倒的リーダビリティを持つノンストップ・ホラーです。

 

本作の特徴としては、まず、

お化けが怖い!!

 

怪異「ぼぎわん」の存在が意味不明で、「分からない事の恐怖」をかもし出します。

そして、

ミステリ的な面白さがある!!

 

話の構成が巧みで、
「あ、そういう事だったのか!?」というサプライズがあります。

よくある、無理矢理な謎解きでは無いので、このトリック部分がすんなり受け入れられるのがポイント高いです。

また、

キャラクターにも魅力あり!

 

近年の角川ホラーは「キャラ売り」を推していますが、
本作にも魅力的なキャラクターが出演しています。

ですが、ホラーである本作においては、

その生命の保証が出来かねる点がシビアですが、、、

 

読み易く、コワくて、面白く、キャラもいい!

これがデビュー作とは思えない完成度。

流石、「日本ホラー小説大賞」。
また一人、脅威の新人を発掘せり!

さらば、「日本ホラー小説大賞」!
永遠なれ!!

 

 

  • 『ぼぎわんが、来る』のポイント

「ぼぎわん」が怖い!こっち来るな!

話の展開が巧みで面白く、リーダビリティが高い

キャラクター小説としても魅力アリ

 

 

以下、内容に触れた感想となります。

 


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  • 構成の巧みさが生むリーダビリティ

本作『ぼぎわんが、来る』はホラー小説。

最初は詳細不明な怪異「ぼぎわん」の由来が徐々に解き明かされる部分が恐ろしくも興味深く、読者の関心を引く最大の部分です。

このホラー的面白さ部分もさる事ながら、
本作を名作なさしめているのは、そのミステリ的な構成の巧みさによる圧倒的リーダビリティによる所が大きいです。

第一章、冒頭にてイキナリ危機が描写され、怪異が実際に危害を加える存在であるという事が強調されます。

その後冒頭に至るまでの、追い詰められてゆく顛末が語られるのですが、その部分も迫力満点。

「ぼぎわん」の怪異が、モブキャラをばったばったと倒して行く感じが恐ろしさをいや増します。

そして、読み進め、冒頭の場面に帰って来た時には、当初抱いていた印象とは違った感じで読めるのが上手いです。

同じ描写なのに、その裏には違った印象が潜んでいる

このパターンは、続く第二章、第三章にて、語りの中心人物である主人公を変更するという手法でも見られる構成です。

第一章の主人公、田原秀樹の行動は、
第二章の主人公である妻の香奈の視点から見ると、また違った意味があるのです。

秀樹の善意の行動や提案も、
香奈からすると勝手な思い付きの押し付けに過ぎず、日々我慢とストレスを感じるものだったのです。

さらにこの家族間の溝、コミュニケーション不全が怪異を呼び込むという意味合いもあり、
ここまで、ストーリー、ネタ、伏線を無理なくまとめたのかと、構成の巧みさに驚嘆せざるを得ません

第三章の主人公はオカルトライターの野崎。

彼のパートでは怪異解決に向かって「ぼぎわん」と直接対決する様子が描かれ、
それまでとはうって変わってアクション的な描写でクライマックスを迎えます。

突然噴出して来るB級映画感ですが、
しかし、このB級感こそホラーの神髄であり魅力の一つであるので、個人的には「よくぞやった」と言いたい部分です。

 

章毎に違った主人公を設定し、
第二章は第一章を前提としながらどんでん返しをし、
第三章では一章、二章を受け継ぎつつ怪異に決着を付けんとする。

この「話をリレーして行く構成と展開」が、先をどんどん読み進めて行くリーダビリティを生んでいるのです。

 

 

 

新人離れした技巧と構成を持つ『ぼぎわんが、来る』。

選考委員が満場一致で評価したというのも納得の出来であり、
このレベルの高さこそ「日本ホラー小説大賞」たる所以なのです。

もうなくなる小説公募大賞に思いを馳せつつ、作者の他作品もチェックしてみたいと思います。

 

 

比嘉姉妹シリーズ

『ずうのめ人形』はコチラのページにてそれぞれ語っております。

『などらきの首』はコチラのページにてそれぞれ語っております。

 

 


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さて次回は、怪異が訪れるのは異世界!?ネット!?小説『裏世界ピクニック』について語ります。