午前3時、弁護士のマルコム・ロス宅に突然訪問者がやって来る。それは、つい先日知り合った魅力的な女性、マーガレット・トレローニーの遣いであり、父が倒れたので至急応援に来て欲しいという要請であった、、、
著者はブラム・ストーカー。
世界で一番有名な怪物の固有名詞を広めた作品、『吸血鬼ドラキュラ』にて有名な作家だ。
本書『七つ星の宝石』、冒頭はミステリ風に展開するが、
ジャンルはオカルトだ。
しかも、物語を語るタイプの小説というよりは、
独自設定、世界観解説で読ませるタイプの小説である。
なので、その設定に面白味を感じられなければ読むのが辛いだろう。
超有名な『吸血鬼ドラキュラ』を著した作家の別作品!と、過大な期待を持って読むと、
「ああ、こんなもんか」と肩透かしを喰らう。
怪奇小説って、こういうタイプの物もあるのね、
と広い心を持って接すべき作品である。
以下ネタバレあり
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設定小説
本書『七つ星の宝石』は設定で読ませるタイプの小説である。
なので、ストーリーには余り力が入っていない感じを受ける。
設定小説というのは、独自設定や世界観の解説をその主軸にしている小説。
本書ではオカルト設定を解説している。
なので、物語小説とはその質が異なる。
他のジャンルとしてSF小説などでも見られるタイプだが、物語を期待して読むと肩透かしを喰らってしまう。
メルヴィルの『白鯨』や、
グレッグ・イーガンの作品なんかがそうだろう。
細かく語られる設定、世界観を楽しめないと、読んでも頭に入らない。
この「設定」というのは、実在してない作者独自の物である事が多い。
その事を念頭に置き、理解しないと「なんで他人の戯言に時間をとってるんだろう、、、」と理不尽な気持ちになってしまうのだ。
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ツッコミたい作品
ミステリ風に始まった冒頭、トレローニー氏は自分に何かあるという状況を予想し準備していたというが、その解説はしない。
男女二人で見張る必要性、部屋の物を動かさない意味、それらの説明をしないので、読んでいて「?」となる。
また、ケネディ看護師が何故人事不省に陥ったのか?
その説明もしないし、いつの間にか復活している。
その癖、理由無く目覚めたトレローニー氏が、イキナリオカルト話を延々と語り出す。
自分の語りたい事しか語らない、コミュ症オタク的展開の小説である。
しかも、描写がいちいち冗長に感じる。
余計なセリフを省き、地の文で簡潔に済ませれば3分の1位のページ数に抑えられたのでは?と思ってしまう。
怪奇小説としてのストーリーやアイデアは面白いので、長篇では無く短篇として簡潔にまとめれば良い作品になったのではと思う。
しかし、作者が語りたい事はオカルト設定だったので、それが望めなかったのだろう。
本作『七つ星の宝石』は、結局そのオカルト設定を楽しむ作品である。
読んでいてその設定を楽しむか、
「長ぇ、、、」と言って辟易するか、
それは人それぞれだが、物語を楽しむタイプではないと、それだけは言っておきたい。
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さて次回は、物語というか、人生を楽しむにはどうするか?映画『パターソン』について語りたい。