孤独のグルメ Season1 第七話
武蔵野市吉祥寺喫茶店のナポリタン
監督:宝来忠昭
脚本:田口佳宏
出演:
井之頭五郎:松重豊
ジャズ喫茶のマスター:うじきつよし
占い師:梅垣義明
ウェイトレス:下石奈緒美 他
ふらっとQUSUMI:久住昌之
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*タイムラインはBDソフト準拠となっております。
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ドラマパートあらすじ
「駄目だ、全然決まらない」
店にいる五郎さんだが、注文を決めきれない様子、、、
「どうやらメニューの森に迷い込んでしまった様だ」(48:57)
遡る事 数時間前(49:43)
武蔵野市吉祥寺に現われた井之頭五郎。
行列の出来る惣菜店でメンチカツを購入しようとしている五郎さん。
しかし、まだ販売していないと言われる。
ならば、とばかりに他の物を買おうとするが、、、
「どうしよう、無難にコロッケにしとくか?」
「串カツという手もある」
迷いつつも、両方買ってしまえ、そう決断するも時既に遅く、メンチカツの販売が始まり行列が出来上がってしまっていた。
「してやられた」
待ち合わせに遅れ気味に駆け込んだ五郎さん。(51:39)
ちゃっかりメンチカツをお土産で購入している。
しかし、待ち合わせ相手のジャズ喫茶のマスターに
「どうせ、自分が食べたかっただけなんだろ」(52:23)
と見抜かれる。
「何で分かったんだ?」と訝しむ五郎さん。
いや、みんな分かってますよ、、、
結局二人でメンチカツに舌鼓である。(52:41)
一段落付いてハーモニカ横丁を歩く五郎さん。(53:33)
占い師に呼び止められる。
「あなた、迷いが顔に出ていますよ」
悩みを打ち明けなさいという占い師に、五郎さん、
「今日の昼飯、昼ご飯、何を食べたらいいでしょうか?」
と尋ねる。
しかし、ふざけていると思ったのか、占い師は機嫌を害したご様子。
「昼ご飯、俺にとっては重要な問題だ」
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「駄目だ、考えてたら急に、腹が減って来た」(55:30)
ポン、ポン、ポォン。
「よし、店を探そう」
「さて、何を食うか、今の俺は何腹なんだ?」
しかし五郎さん、目移りしまくり、行ったり来たり。
迷い惑ってふらふら彷徨。
「駄目だ、迷う」
「駄目だ、全然決まらない、こんなに迷うなんて」
「どうして今日はこんなに迷うんだ?」
しかし、ふと立ち止まる五郎さん。(57:39)
「ん? 今、誰かに見られてた様な…気のせいか?」
立ち止まった所は、どうやらレストラン。
「色んなものが食べられそうだ、これだけあればどれか決まるだろう」
そして、店に入るが、、、
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カヤシマ(58:02)
そして、冒頭の描写とリンクする。
五郎さん、注文を取りに来たウェイトレスさんに、ちょっと待ってもらう。
「ん、ナポリタン」
「そうだ、こういう所のナポリタンって案外良いんだよ」
「ケチャップで、真っ赤で」
五郎さん、ナポリタン決定、これで一件落着。
「いい所に着地したんじゃないか」
と思いきや、トッピングを選べるご様子。
「え?また選ぶのか?」
サイドメニューは4種類
ポークジンジャー、
ハンバーグ、
あらびきソーセージ、
シューマイ。
「迷った時は一番上のものだ、ポークジンジャーに決定」
…しかし、男性二人連れの客に、先に注文される。
五郎さん、被ったタイミングが気に入らないようだ。
ナポリタンと、ハンバーグを頼んでしまう。
「ようやく決まった、長い戦いだった」(01:00:23)
額を拭う五郎さん、漸く人心地が付いた。
周りを見渡す余裕が出来た五郎さん。(01:00:33)
落語や、音楽、写真など、色々壁に貼ってある。
ふと見ると、ウェイトレスさん、ぼっ立ちで外を眺めている、
五郎さん、気になって何を見ていたのか尋ねてみた。
ウェイトレスさんは「人」を見ていたのだと言う。
しかも、入って来る人は分かるとドヤ顔で宣言する始末。
そうこうする内に注文の品が来る。
ワクワクセット(ナポリタンとハンバーグ)(01:02:47)
みそ汁付きで良い感じ。
先ずは、ナポリタンから。
ナポリタン(01:03:18)
「コレコレ、懐かしい味だ、時々無性に食べたくなるケチャップ味だ」
「麺が太い、良いじゃないか」
「うん、うん、パスタじゃなくてスパゲッティ、いいぞ、コレは」
ハンバーグ(01:04:12)
「ハンバーグもこうなると、違った意味を持って見えてくるなあ」
「美味い、たっぷりソースのハンバーグは男の子の味だな」
「うん、ケチャップ、ソース、マヨネーズ、そこにみそ汁、コレで良いんだよ。俺には、こういうランチがお似合いなんだ」(01:04:48)
男性客がご飯を頼む、「すみませーんご飯下さーい」
すかさず被せる五郎さん、「すみません、ランチ下さい」
「思わず頼んでしまった、、、」(01:05:23)
ふと横を見ると、初老の男性客が同じセレクトの物を頼んで食べていた。
「ナポリタンってのは、おかずにもなるんだよ」
そういいつつ、初老の男性と対抗心剥き出しでミラーマッチ。
何だかんだとあったけれど、口の周りをソース塗れにして完食。(01:06:37)
満ち足りた良い笑顔の五郎さんであった。
レジで会計、次回の割引券をもらって、五郎さん退店。
「古き良き吉祥寺が、この店一軒に集約されている様だ」
70円の割引券に渋さを感じ、去って行く五郎さんであった。
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ふらっとQUSUMI(01:08:12)
吉祥寺は自分の地元も同然と言う久住さん。
ランチ&食事とお酒「カヤシマ」に御入店。
*2012年当時のデータなので、現在も営業中なのかは要確認
壁の張り紙が凄い、ポスターや写真でメニューが見えない程である。
「混沌としてますね」
椅子の一部、中の綿が見えている。
「酔っ払ってほじるんですよ、お客さんが」(01:09:19)
久住さんが頼むのは、ナポリタンとシューマイ。
やって来たワクワクセット。(01:09:59)
スパゲッティナポリタン:洋食
シューマイ:中華
みそ汁:和食
シークヮーサー・サワー:沖縄
「何処の国なんだって言う、付け足し感ですね」
「口の中が困ってます」と言いつつも堪能、
「これ結局ね、結局これ日本のモノですね全部、これ日本の料理ですよ」
そう結論を下す久住さんでした。
食後、オーナーと語らう久住さん。
オーナー曰わく、
「37年前、開店した時はコーヒー専門店だったんですよ」(01:12:08)
「食事を入れ、お酒を入れ、で、一時はね、あのぉカラオケパブになった時もあるんですよ」
何とも、『孤独のグルメ』っぽいお店だと久住さんをして言わしめたお店でした。
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声に出して言いたい!五郎さんの名台詞
今回の「声に出して言いたい」五郎さんの名セリフは、
「ようやく決まった、長い戦いだった」(01:00:23)
メニューがなかなか決まらない、良くある事です。
目的(食べたい物の確固たるビジョン)が無いから、決まらないんですよねぇ。
とは言え、ヘンゼルとグレーテルよろしく、迷いの森に迷い込んだ五郎さんも、漸く抜け出す事が出来た。
しかし、行き着いた所でも、ウェイトレスの不思議ちゃんの魔女に翻弄されるが、、、
五郎さん、さほど気にならないご様子。
「うん、ケチャップ、ソース、マヨネーズ、そこにみそ汁、コレで良いんだよ。俺には、こういうランチがお似合いなんだ」(01:04:48)
上級国民には決して理解出来ないだろう、
チープでビビッドで、化学調味料塗れのジャンキーな味の魅力は。
こういう、無理矢理際立たせた味のエッジにも対応してこそ、孤独のグルメたる所以なのである。
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感想と解説
冒頭の描写から、過去を遡る形で始まったオシャレな演出。
今回の五郎さんは、迷いに迷って迷いマイマイである。
いつもの五郎さんは、彼なりの信念に添った流れの中で食べたいものを選択しています。
しかし今回は、選択肢がある事が、逆に迷いを生んでいるのです。
物事に迷ったなら、
むしろシンプルに狭い選択肢の中に自分を追い込む、
謂わば背水の陣を敷く事が肝要なのかもしれません。
とは言え、五郎さん、
彼もシンプルな決断、
迷うなら両方買え(51:22)
迷ったら一番上の物を選択する(59:52)
これらを実行に移し、事態のシンプル化を図りますが、それを果たせないという所まで陥ってしまうのですが。
しかし五郎さん、場当たり的に揺れ動きながらも、決断を下す事が出来ました。
無理な事でも、じたばた足掻いている内に、事態が打開出来る。
こういう泥臭い様子を、今回の五郎さんから感じました。
さて、五郎さん、
いつもは人に被せているくせに、他人に被せられるのは好きでは無いご様子。
ポークジンジャーが被った時(01:00:05)
隣のご老人とセレクトが被りった時(01:05:35)
尚且つ、食べるリズムも被った時(01:05:53)
五郎さんは、妙な対抗心を出しています。
(因みに、今回五郎さんが行ったのはご飯の注文の被せですが(01:05:24)、完全に条件反射だったのが笑えます)
おそらくは五郎さん、
食という自らが選ぶ必然性の行為の中に、
他人の選択という夾雑物が混じるのが我慢出来ないのでしょう。
「食」という行為に純粋性を求める、ストイックな哲学が垣間見えます。
人は、好きなものならばこそ、
ちょっと子供っぽい態度を取ったりするものです。
始原の対抗心といいますか、
負けを潔しとしないプライドの発露なのです。
この拘りも、勿論『孤独のグルメ』の魅力であります。
あと、五郎さん、
ウェイトレスさんに何故外を見ているのか尋ねるシーン(01:01:37)、
この場面で、不安げにももをこすっています。
こういう細かい芝居も、流石、松重豊氏、ですよね。
体表現が豊かです。
また、このシーン、本当にウェイトレスさんは人間観察で入って来る人が分かるのか?
それが劇中で明らかにならないのも、粋な感じの余韻をもたらします。
とは言え、彼女の視線で(?)五郎さんは店に呼び寄せられたのかもしれませんが。
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