世はセレブ戦国時代。互いが相手より格上感を出すために、究極の「おもてなし」で相手の心を砕く。そう、おもてなしとは、セレブ達の決闘であった。今日も互いにマウントを取り合い、セレブ界の全国統一、セレベストを目指して戦いが始まる、、、
作者はジェントルメン中村。
本作はWEBコミック、リイドカフェにて連載中。
上記のURLで見ることが出来る。
他、代表作に『プロレスメン』がある。
あなたはセレブですか?
私は残念ながらそうではない。
だから、本書を読んでビックリした。
『セレベスト織田信長』は
現役セレブの実態を余す事無く描写している。
そう、我々ビンボー人から見ると、隠された裏のセレブの実態はきっとそうなのだ。
セレブの実態、それは
我々の想像を遙かに超えた「おもてなし」の数々に満ちている。
この奔放過ぎる発想力には脱帽を通り越してため息が出る。
発想が斜め上どころか、異次元に突入している。
セレブ達が己のプライドをかけてマウントを取り合う「おもてなし」合戦。
それに小細工はいらない。
むき身のままに戦うのだ。
基本戦いの場面では、
50がらみのオッサンが裸で競い合う。
正に、肉食の野獣同士の争いである。
とにかく熱い!!
暑苦しくて胃もたれ上等の贅沢(ラグジュアリー)を感じる!!
本書『セレベスト織田信長』を読めば、あなたもきっと明日からセレブの一員になれるだろう。
以下ネタバレあり
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歴史の人物
ギャグ漫画やアクション漫画において、登場人物に実在の人物や歴史上の人物の名前を付けるのは大変有効である。
何故なら、その名前のイメージで、既にキャラクターが出来上がっているからだ。
一から説明せずとも、成長した形で作品に組み込める。
NEWゲームをイキナリLv.20から始める様なものである。
(最近の代表的作品で言うと『ムダヅモ無き改革』がそれにあたる)
本作『セレベスト織田信長』は、題名通りに主人公の名前は「織田信長」。
どうやら舞台は現代であるので、歴史上の織田信長では無く、「織田信長」的なキャラクターをもった人間なんだな、と言う事が1ページ目で直ぐに分かる。
このインスタントな魅力がデカイのだ。
しかも、「織田信長」という事は破天荒な事をしてくれるハズ。
さらに、「豊臣秀吉」や「徳川家康」も出てくるのではないか?と読者に思わせる。
まさにベストなチョイスと言えるだろう。
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野獣の眼
ジェントルメン中村の描く登場人物は、他の漫画家には無い特徴がある。
それが、「目」である。
黒目の部分が極端に小さいのだ。
普通の漫画では、やはり「目」の描写は力の入る場所なので、独特の書き込みをする人が多い。
つまり、「目」で作者の特徴が分かるのだ。
そして、ほとんど「くるっ」と書いただけに見えるジェントルメン中村の目にも、作者自身の特徴が滲み出ている。
作者の登場人物の目は、すべからく野獣の眼(アイ・オブ・ザ・タイガー)なのだ。
どいつもこいつも猫科の肉食獣の目をしている。
今の草食時代にあって、ガツガツの肉食獣同士の食み合いを存分に見せてくれる。
そういう目である。
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合うか、合わざるか、それが問題だ
ギャグ漫画は難しい。
意外とそうなのだ。
作者の脳の限界まで絞り出さないと面白いものにならない。
さらに「ギャグを面白がる基準」には人によって合う、合わないがあるからだ。
その意味で、本作『セレベスト織田信長』は私の趣味にマッチしている。
そしてバツグンに面白い。
まず、パターンを確立しているのがいい。
起:信長の破天荒な日常
承:信長に「おもてなし」を申し込む挑戦者
転:相手の「おもてなし」を喰らう信長
結:信長が相手の想定を上回る贅沢さ(ラグジュアリー)を見せつける。
このパターンを作っているのが偉い。
パターン化には水戸黄門的な安心感がある。
ギャグ漫画においては特に有効な方法だ。
展開自体が分かっているからこそ、その内容と発想を楽しめるのだ。
そして、その発想も異次元の面白さがある。
特に「おもてなし」のシーンが凄い。
狂人すれすれの天才的な発想のおもてなしの数々は、完全に読者の発想の埒外に存在し、さらに毎回挿入される見せ場の大ゴマにファンタジックな魅力を感じる。
かつて、『BSマンが夜話』の「賭博黙示録カイジ」の回にて漫画家・いしかわじゅんがこんな感じのことを言っていた。
「俺は漫画家が描く金持ちの描写に興味がある。何故なら、それはその漫画家本人が認識する金持ち像であるからだ」と。
…一体ジェントルメン中村の金持ち像とは何なのか?
それは、欲望を自信満々にひけらかし、個性的な自己主張に生きがいを感じる者、であるようだ。
だがしかし、魅力溢れる奴らである事は間違い無いのである。
ジェントルメン中村の『セレベスト織田信長』。
今ならまだ注目度が低い。
漫画好きで先物買いをしたい人間なら、間違い無くチェックするべき逸品である。
残念ながら絶版中だが、こちらも面白い
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さて次回は漫画『もしもし、てるみです。』について語りたい。暑苦しい漫画を読んだ後はチョイエロの可愛いヤツを読むのだ。