漫画『もしもし、てるみです。』感想  SNSなんて、しなくてもいいじゃない!

 

 

 

ネットに繋がらない!!という革命的な機能をひっさげ携帯電話業界に参入した「もしもし堂」。失恋を契機に「ミライフォン」から「もしメカ」に機種変更した鈴太郎は、販売員のてるみさんにご執心の様子だが、、、

 

 

 

著者は水沢悦子
本作は『週刊ビッグコミックスピリッツ』にて連載中。
他の著作に
花のズボラ飯
『ヤコとポコ』等がある。

唐突だがうさくんの著作に、
『マコちゃん絵日記』
にゃん天堂』等がある。

 

本作『もしもし、てるみです。』は

電話とSNS、その周辺を描いたギャグ風味の漫画である。

毎回2ページ、フルカラー

 

勿論単行本もそうである。

あえてネットに繋がらない電話の話という事で、SNS批判やノスタルジーを主とした作品と思われるかもしれない。

だが、そんな事はなく、

テーマとして人と人との繋がりを描く、

 

その為の舞台設定であるのだ。

何だか、堅苦しい説明になったかもしれないが、その内容は

中2レベルのチョイエロ溢れたほのぼの漫画である。

 

寝っ転がって半笑いでリラックスして楽しむ事が出来る作品である。

 

 

以下ネタバレあり


スポンサーリンク

 

 

  • うさくんの『マコちゃん絵日記』

本作はほのぼのギャグ漫画である。
毎回2ページのフルカラー。
そして多くのキャラクターが登場する群像劇である。

もしもし堂の販売員のてるみさん。
中学2年生の鈴太郎。
この二人を中心に、

謎のマスコットくろちゃん
もしもし堂のコールセンター
鈴太郎の学校でのエピソード
鈴太郎の元カノのSNSの様子
鈴太郎達中学生が好きな漫画家のSNS
鈴太郎の両親の話、等

毎回2ページの中で、様々な場所の小咄が描かれる。

特徴的なのはコールセンターのエピソード。
てるみとも鈴太郎とも、ほとんど絡まない。

だがそれでも、同じ世界観で同じテーマを別の場所でやっているので、全く違和感がない。

この同じ世界観で様々な舞台を用意し、ネタのサイクルを回す方式は、うさくんの『マコちゃん絵日記』で確立したスタイルだ。

ギャグ漫画というのは、常にネタ切れという恐怖との戦いである。

だがこうやってキャラクターと舞台を沢山用意していれば、書く方も飽きずに、また様々なパターンのネタを用意出来るので長く続ける事が出来る。

自らのスタイルを確立出来ていれば、それを別テーマ、別世界観でも描く事が出来る。

漫画家にとって、スタイル(パターン)確立というのは、強い武器になるのである。

…もっとも、著者の「水沢悦子」と「うさくん」に関係があるのかは、未だにハッキリしていないが、、、

 

  • うさくんのあるあるネタ

うさくんの『マコちゃん絵日記』では、小学生あるあるネタが描かれていたが、本作『もしもし、てるみです。』でもあるあるネタで笑わせてくれる。

個人的なツボは
年上の女性に憧れる中学生ネタ
SNSでの恥ずかしい内輪ネタの暴露
辺りのエピソードである。

こういう日常の細かい「クスッ」とくるネタを汲み取るのが水沢悦子の上手いところである。

 

少し気になるのは、うさくんの作品で必ず出てくる「ふくよかキャラ」が本作では居ない点だ。

今後新キャラで出てくるのか?

もしくは謎のマスコット「くろちゃん」が『星のカービィ』的なフワフワキャラなので、「ふくよか」枠を兼任しているのかもしれない。

それとも、水沢悦子とうさくんには何の接点もないのかもしれない、、、

 

 

本作『もしもし、てるみです。』は、舞台は違えど『マコちゃん絵日記』と同じスタイルで描かれた作品である。

『マコちゃん絵日記』のファンなら、同じ感じで楽しめるだろう。

絵もデジタル描きのフルカラーであるのに、なんと値段は驚異の972円!!
(消費税入れたら千円超えます)

漫画部分は98ページだが、47エピソードもあるので何となくお得感もある。

気楽に読めて楽しい作品だ。

水沢悦子とは関係ないかも知れないうさくんの単行本。
半分くらいは絶版になっており、電子書籍でないと読めないが面白さは保証付きのシリーズだ。

 

 

さて次回は、ノーベル賞などと言う権威に圧倒されずに、まずは気楽に手をだしてみよう。小説『忘れられた巨人』について語りたい。