エス・エフ小説『スペース・オペラ』ジャック・ヴァンス(著)感想  まさかの出オチ!!

 

 

 

音楽パトロンのデイム・イザベルの劇場から、惑星ルラールの第九歌劇団が忽然と姿を消した。デイム・イザベルは歌劇団を追って宇宙に繰り出す、、、

 

 

 

本書『スペース・オペラ』は
長編「スペース・オペラ」と
短編「新しい元首」
「悪魔のいる惑星」
「海への贈り物」
「エルンの海」
の5つからなる作品集。
国書刊行会より出版された「ジャック・ヴァンス・トレジャリー」シリーズの3冊目である。

著者はジャック・ヴァンス。他の著作に
『竜を駆る種族』
『奇跡なす者たち』
『宇宙探偵マグナス・リドルフ』
『天界の眼――切れ者キューゲルの冒険』等がある。

さて、
本作『スペース・オペラ』の表題作は

ハッキリ言って出オチである。

 

今から買って読むならば帯を外そう。

帯でネタバレしている。

 

まぁ正直ため息が出てしまう。

しかし、長編内のパート毎のネタや短編がSFとして面白い。
ジャック・ヴァンスの持ち味とは

SFの設定・ネタをミステリ的に解決する

 

事だと思う。
この職人芸的面白さ、体験する価値は十分である。

 

 

以下ネタバレあり


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  • 出オチ

帯に書いてある通りである。

「スペース・オペラ」とは
「宇宙冒険活劇」という意味ではなく
「宇宙歌劇団」という意味だったのだ!!

と、自分で気付いてツッコミを入れるのが一番面白い所なのだ。

まぁしかし、帯でネタバレしてるんですけどね。

 

以上、終わり!!

 

…では少し寂しいので、もうちっとだけ続くんじゃ

表題作「スペース・オペラ」は一応長編であるが、ほとんど連作短編の様なモノである。
前半部分より、エピソードを連ねる宇宙冒険のパートの方が面白い。
短編も一緒に収録してある事もあり、短編集の様な読み味になっている。

本書の中で特に面白いのがp.157~p.177の囚人惑星のパートである。
当然トラブルが起きるのだが、偽物が連鎖してゆくのが本当に笑える。ぷよぷよかよ!!

  • 短編部分

短編部分は普通に面白い。
SFの一発ネタを描いている。

どれも面白かったのだが、「新しい元首」に印象深かったセリフがある。以下に抜粋したい。

「かりに鷲が百獣の王を決めるテストをおこなうとすれば、鷲はすべての候補者を飛行能力で評価するでしょう。当然ながら、鷲が勝者となります。同様に、土龍は土を掘る能力を重要とみなすでしょう。土龍の評価システムによれば、土龍が百獣の王に選ばれるわけです」
(p.288~p.289より抜粋)

これを読んでどう思われるだろうか?

あなたがもし、就職活動で思い悩んだ時は上記のセリフを思い出してほしい。

もし就職試験に落ちたとしても、それは人格が否定された訳では無いのだ。
あなたはその会社にとって鷲でも土龍でもなかっただけである。
自信を持って、獅子たる自分に似合った会社を見つければよいのだ。

 

と、思えば、気が楽になるのでは?

 

はっきり言って表題作は「スペース・オペラ」と言いたかっただけで、残りは蛇足感が否めない。
しかし、エピソードのネタ自体は面白いし、むしろこのちょっと外した所がジャック・ヴァンスの味の一つなのかもしれない。

抱き合わせ感があるが、短編は流石の面白さなので読んで損は無い作品集である。

 

 

 


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さて次回は、一発ネタならぬ当代随一の顔芸を披露してくれる藤原竜也主演、映画『22年目の真実―私が殺人犯です―』について語りたい。