小説『恥知らずのパープルヘイズ』上遠野浩平(著)感想  今一度の光を!!

 

 

 

かつてジョルノ達と袂を分かった男、パンナコッタ・フーゴ。しかし現在は組織内の勢力が変わり、彼は自らの忠誠心を示す為に任務を遂行せねばならなくなった。フーゴは自問する。自分の選択はあれで良かったのか?と、、、

 

 

 

荒木飛呂彦・原作の漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の第5部のその後をオリジナル小説化。

著者は上遠野浩平。代表作に
『ブギーポップは笑わない』(1998)
『ぼくらは虚空に夜を視る』(2000)
『製造人間は頭が固い』(2017)等がある。

 

本作『恥知らずのパープルヘイズ』の発売は2011年。
再評価がなされた『ジョジョ』を盛り上げるため、
また、ジョジョ連載25周年記念として企画されたものだ。

映画『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない第一章』が公開されたので、合わせてノベライズの紹介をしたい。

 

本作は原作付き小説である。

タイプとしては原作の世界観を再現したタイプの作品だ。

 

なので、原作である『ジョジョの奇妙な冒険』第5部を知っている事が前提となる作品だ。

そして、原作では取りこぼされたキャラクターである

フーゴにスポットを当て、新たな「奇妙な冒険」を描いている。

 

本作『恥知らずのパープルヘイズ』は、

原作のイメージを逸脱する事なく、キャラクターのイメージを壊さない事に細心の注意が払われている。

 

なのでこの新たなフーゴの冒険も、ファンは違和感無しに読む事が出来る。

誰もが疑問に思った「フーゴのその後」を読み手が期待する形で小説化した本作。
余計な物を足さず、非常に丁寧に作られた『恥知らずのパープルヘイズ』、『ジョジョ』のファン、特に第5部のファンは必読と言えるだろう。

 

 

以下ネタバレあり


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  • 原作付き小説の種類

原作付き小説といっても大きく言うと2種類のものがある。

一つは、原作の世界観を忠実に再現した物語。
もう一つは、原作の世界観で自分独自の物語を作った物だ。

本作『恥知らずのパープルヘイズ』は「原作の世界観を忠実に再現したタイプ」である。

しかも、かなり徹底している。
読者が『ジョジョの奇妙な冒険』第5部読了済み、という前提を考慮し、原作の雰囲気を壊さない事に細心の注意が払われているのだ。

 

  • フーゴの物語

その上で5部の読者が気になっていたであろう「フーゴのその後」の物語を描いている。

そのやり方も上手い。

フーゴの思い出、ブチャラティ達と過ごした日々を思い出しながら(原作の描写を使いながら)、彼の思考を辿っている。

そしてあの瞬間、ボートに乗らなかったもしくは乗れなかった時点からの思考を描写しているのだ。

フーゴは乗らないと決断したのか?
それとも乗るという決断を出来なかったのか?

その自問自答こそフーゴの物語の核になるものであり、読者が意識せずとも疑問に思っていた点である。

この「フーゴの物語」を発掘し、キチンと1つの小説として完成させている点は流石としか言い様がない。

作者・上遠野浩平はジョジョファンである事を公言している。
この『恥知らずのパープルヘイズ』の中でも細かいセリフ回しなどに注意が払われており、ファンも納得の出来に仕上がっている。

 

 

敢えて不満点を言うなれば、敵が弱かった点か。

しかし、フーゴのスタンド自体強すぎるし、物語のテーマがバトルにはないので、その点はある意味仕方がない。

そこは置いておくとして、やはり、これほどまで原作に忠実に、且つ世界観を崩さずに新たな物語を付け加えられた小説作品は他にない

ファンにも必ず満足いく物語であろう。

 

 

 

 

 

 


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さて、次回はこれも『ジョジョの奇妙な冒険』のノベライズ『OVER HEAVEN』について語りたい。