映画『ベイビー・ドライバー』感想  音楽のパッチワークで作り上げた疾走映画!!

 

 

 

赤いスバルWRXに乗る4人組。3人が銀行強盗の実行犯。そして、運転席に座りiPodに聞き入る童顔の青年。彼の名は「ベイビー」。天才的なドライビング・テクニックでどんな窮地をも切り抜けてみせる凄腕のドライバーであった、、、

 

 

 

監督はエドガー・ライト
イングランドの映画監督。他の監督作品に

『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004)
『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』(2007)
『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』(2010)
『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』(2013)がある。

主演はアンセル・エルゴート
映画デビューは『キャリー』(2013)
他、出演作に
『ダイバージェント』(2014)
『きっと、星のせいじゃない。』(2014)等がある。
身長191センチ。

他、共演にリリー・ジェームズ、ケヴィン・スペイシー、ジェイミー・フォックス、ジョン・ハム、エイザ・ゴンザレス等。

 

本作『ベイビー・ドライバー』はどんな映画か?

カーアクション?
クライム映画?
恋愛映画?

どちらも正しい。
しかし、もっと正確に言うならば

音楽によって奏でられる疾走映画である。

 

ベイビーは常にiPodを聞いている。
そのベイビーの聞く音楽にのせて、

ホットに、リズミカルに、テンポよくストーリーが駆け抜けて行く。

 

そのサウンドトラックは実に30曲。
もう、映画中ノリノリで流れまくっている。

正に、音楽によって構成されたと言える『ベイビー・ドライバー』。
観た後はホットに爽やかな気分になれる。

 

 

以下ネタバレあり


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  • 音楽のパッチワーク映画

本作『ベイビー・ドライバー』は音楽の映画である。

音楽を扱った映画ではない。
音楽によって構成された映画である。

映画『ラ・ラ・ランド』と比較してみればよく分かる。

『ラ・ラ・ランド』は音楽を扱った青春映画。
『ベイビー・ドライバー』は構成自体が、音楽の歌詞、リズムによって作られている映画である。

音楽があって、それにストーリーを合わせたのか、
ストーリーに合う音楽を色々探したのか、
どっちに重点を置いて作ったのかはハッキリしないが。

この二つの映画はテーマが違う。
音楽と青春という共通点はあるが。

ハッピーな時は優しげに、クライマックスではノリノリに、そして、時には場面と全然違う音楽でそのアンバランスさを演出してみせたりする。テキーラ!

 

  • フィルターを通して見る世界

ベイビーの趣味はセリフのサンプリング。
人の言葉を勝手に録音、スクラッチしたりして音楽にする。

パッチワークなのは音楽だけではない。

ベイビーはTV番組をザッピングし映画のセリフを引用する事で、他人と会話(らしきもの)をしてみせる。

常にサングラス、耳鳴りを消す為にiPodを標準装備。

ベイビーは世界と自分の間に常にフィルターを置いている
一歩引いた見方をしているのだ。

 

  • やめたげてよぉ

そして、その我関せずのスカした態度が気に入らないのが犯罪仲間の面々である。

この、「ベイビーをいじる強面連中」という図式がまたリアルである。

あなたの学生時代にもなかっただろうか?
もの静かな同級生にやたらと絡むイキリ系の人物が。

彼等は、ベイビー系の無表情の態度が気に入らない。
その超然(としたように見える)態度が高見にいるように思えて、自分の居る場所まで堕としたくて無様な格好を晒させようと絡むのだ。

完全に言い掛かりであるが、当人のコンプレックスの裏返しなのでタチ悪い。

もっとも、『ベイビー・ドライバー』ではベイビーのドライビングで悲鳴を上げさせられているので、その憂さ晴らしでもあるのだが。

 

  • 生まれ変わりのイニシエーション

だが、ベイビーにも我慢の限界がある。

それが爆発するのがクライマックスである。
もう滅茶苦茶、後先考えずに疾走し出すのだ。

まるで、イジリにイジられたいじめられっ子が、キレで爆発するかの如しである。
しかし、過剰であろうとも、観客はその爆発こそが観たいのだ!

そして、大立ち回りの末
サングラスは無くなり、
iPodは吹っ飛び、
引用セリフは批判され、ベイビーはだんだん剥き出しになって行く。

結局収監されるが、刑期を終え、まっさらになってムショから出た時にベイビーは見る。

自分がフィルター無しでコミュニケーション出来た相手、夢で見たデボラが、その白黒のフィルターを取っ払い、鮮やかに自分を待っていてくれた様子を。

一連の騒動を通過儀礼としてベイビーは生まれ変わり、再び自分の人生を歩みだすのだろう。

 

 

と、色々語ったが、『ベイビー・ドライバー』の核となる音楽についての考察を私は全く出来ないのが、残念至極ではある。

しかし、その楽しみはとっておこう。

このオモチャ箱の様なハイテンション映画『ベイビー・ドライバー』には語り尽くせぬ魅力がある。

 

 

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さて、次回は別ベクトルのテンションで燃やし尽くす、小説『火の書』について語りたい。