とある超構造体(メガストラクチャー)内での話。
備蓄食料が枯渇寸前の集落に住む「ずる(人名)」率いる「電基漁師」一行は、食料獲得遠征の途上で駆除系の襲撃を受ける。危うい所、そこに現れた謎の風来坊に助けられる。その男は霧亥(キリイ:人名)と名乗り、「ネット端末遺伝子」を探していると告げた、、、
『BLAME!』は同名漫画『BLAME!』を映画化したもの。1997~連載を開始し、月刊『アフタヌーン』の全盛期を支え、コアなSFファンを獲得した。今回の映画化は、原作者・弐瓶勉氏の別作品『シドニアの騎士』のヒットをうけて過去作品の発掘がなされた形だ。
本作のストーリーは原作のエピソードの一つを映画用にアレンジして構成している。無難にまとめてあり、アクションも派手なので、
初見も原作ファンも等しく楽しめるだろう。
画の方は、アニメの『シドニアの騎士』風の絵だ。あのタッチを意識してもらえれば問題無い。
以下ネタバレあり、原作ファンからのツッコミあり
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(今見ると私の記憶違いや認識不足も多いが、映画を観た直後のライブ感を残したいので、訂正しないままにしています。その点はご容赦下さい。)
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とにかくありがとう
原作の連載開始が1997年、もう20年も前だと知って改めて驚く。そんなに前なのか、、、
しかし、今でも好きな作品なので、映画化してくれて大変嬉しい。初回の上映に行ったが、席はほぼ満席。ファンがこんなにいたのかと、ちょっと感慨深いものがあった。SFファン受けは良かった様に思えるが、賞や評価とは無縁だったので一般には知られていなかった。今回の映画化が再評価の契機になればいいと思う。
しかもこの映画、ちゃんと面白かった。「コアなファンがいるから」という理由で変に凝った作り方をすると一本の映画としてつまらなくなってしまう。本作はそれを避け、万人が楽しめる作りを目指したのが良かったのだろう。
おそらく、ヒットしたアニメ『シドニアの騎士』のノウハウがあり、それを援用したのが功を奏したのだと思われる。
CGベースの無機質でデジタルな感じの画が本作にもあっていた。
特に駆除系のキモさに拍車をかけている。『エクソシスト』のスパイダーウォークよろしく、まるでゴキブリのようにカサカサ高速で這い寄る様は生理的な嫌悪と恐怖を感じた。また、光線や爆発のエフェクトも綺麗でよかった。
アクションの魅せ方もいい。追っかけっこが単調にならない様にカメラワークが工夫されていて飽きさせない。また、銃撃戦、肉弾戦ともに迫力があり楽しめる。
それと、ちょっと驚いたのが、世界観の説明があった事だ。
原作漫画では、「ネット端末遺伝子」を何故探しているのか?とか駆除系が襲ってくる理由は何か?等の理由ははっきり明言されていなかった様に思う。(ですよね?)この言外に横たわる設定を、物語の中で断片的に語られる事から自分なりに推測するのが原作の楽しみの一つであった。
その設定を、本映画であっさり語ってしまった。観客がわかりやすいようにと配慮したのであろう。ちょっとさみしい感じがする反面、時を超えて答え合わせが出来て嬉しくもあった。
また、霧亥のキャラ設定もよかった。このキャラには「風来坊が立ち寄った場所の事件を解決してまた去ってゆく」タイプの物語がいいのだ。定番だが、ツボを心得ている。無口な霧亥のキャラに似合った物語形式だ。(映画で言うと『用心棒』とか『椿三十郎』とかのアレ)
兎に角、作られた事、そしてそれが面白かった事が素直に嬉しい。ありがとう。
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原作ファンからのツッコミ
しか~し。
ちょっとツッコミたい所もある。
まぁこれは原作ファンであるが故のワガママなのでちょっと聞き流す程度にしてもらいたい。
まず、霧亥のしゃべりがたどたどしいのがちょっとわざとらしい。寡黙キャラなのでああいう喋りの演出をしたのだろうが、話す時は普通に喋ってもよかったと思う。むしろセリフを減らして目や、間や、行動で示したりして欲しかった。正直この演出は難しいし、CGで表現するのは困難なのだろうが、そっちの方向もチャレンジして欲しかった。
それから、シボは金髪じゃなくて銀髪(というか白)にして欲しかった。美白な肌の色とかぶるから敢えて避けたのか?顔も丸っこくてちょっと優しい感じになっている。見た目がもっと、とっつき難い感じでもよかった。
あと、ゾンビシボを出すなら名セリフ「からだがいっぱいあるよー」も言ってほしかったが、これは欲張り過ぎか。霧亥がシボの髪の毛を無慈悲にむしって「やめて」と言われるシーンも観たかったなぁ。
そして、画がちょっと綺麗すぎた。私のイメージのメガストラクチャーはうらぶれた廃墟のようであり、グリースや黒カビ、煤煙なんかで薄汚れた建物だ。
確かに建設区画は「誰も住んでいない新しい建物」の感じでよかったのだろうが、もっと「ページをさわったら指が汚れる」ような感覚の場所も描いて欲しかった。なんと言っても『BLAME!』はメガストラクチャーもメインの一つなのだから。「建物を貫通、両断する重力子放射線射出装置」の画も少なかった。
画の綺麗さは、まるで人物にスポットライトが当たっている様な明るさから来ているのだろう。『シドニアの騎士』の様に宇宙船内部ではなく、打ち捨てられた構造体内部の話なのでもっと影が多くてもよかった。まぁそれでは暗くて訳がわからなくなるので、それを嫌ったのであろう。
あと、女の子が可愛らし過ぎた。ちょっと萌えを意識している。と言うか霧亥以外のキャラデザインが全体的にアニメの『シドニアの騎士』寄りだった。これは、『シドニアの騎士』ファンも取り入れる為に仕方のない事ではあるのだが、、、難しい所である。
と、まぁいろいろ言ったが、これは不満点ではなくて要望である。
本作がバカウケして次回作が作られれば、私の希望が取り入れられる事もあると信じている。
久しぶりに新しい霧亥やシボやメガストラクチャーや駆除系に会えて嬉しかった。それを言いたかったのだ。
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さて、次回はこれまた謎の構造物内部での話。小説『迷宮1000』について語りたい。