映画『ローガン』感想 不死身だった男の墓碑銘

 

 

 

時は2029年。かつて不死身を誇ったその強さは今は無く、チンピラ相手に手こずる始末。自身のヒーリングファクターは衰え、ボケたプロフェッサーを介護してひっそり暮らしていた。そんなある日、見知らぬ女性が彼に呼びかけてきた「ウルヴァリン、助けて、、、

 

 

 

現在のアメコミ映画ブームに先鞭をつけた『X-メン』(2000)から、はや17年。当初は「デカ過ぎる」等と言われてきたが、今振り返ると、ヒュー・ジャックマンがウルヴァリンを演じたからこそ、『X-MEN』シリーズはここまでヒットしてきた。

『X-MEN』シリーズを牽引してきた、ひいてはアメコミ映画ブームを牽引してきたヒュー・ジャックマンが演じるウルヴァリンは、とうとう今作で見納めである。感慨深いものがある。

『X-MEN』シリーズファン、ウルヴァリンファンが本作『ローガン』を観るのはつらく、苦しいだろう。
かつての最強戦士ウルヴァリンはもういない。カリスマ指導者プロフェッサーもボケてしまった。

老い、衰えはだれにでも平等にやってくる

 

(そう、気付けば私の頭頂部も薄くなっている)

その過酷な現実を受け入れなければならない。そして、人生にケジメを付ける日は、必ずやってくるのだ。覚悟をもって観ていただきたい。

また、本作は今までのシリーズほど、派手なミュータント・バトルアクションがあるわけではない。むしろロードムービー的側面が強い。

人生の際に立った男の雄姿、
最期まで見届けるべし……!

 

 

以下ネタバレあり


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  • 老いさらばえた英雄

本作のローガンは、ヒーリングファクターが衰えてしまっている。自身に移植された超合金アダマンチウムが毒となり、体を蝕んでいるのだ。
アメコミ原作の設定で補足するなら、「体内にアダマンチウムがある事で常にヒーリングファクターが作動し、長年に渡る稼働状態で能力が衰えてしまった」という。

かつては「引く事を知らぬ獰猛な野獣=ウルヴァリン」と呼ばれた身体能力も減衰している。足は引きずり、目はかすみ、戦闘能力も低下している。

さらにショックなのがプロフェッサーことチャールズ・エグゼビアがボケてしまっている事だ。
かつては華麗に、相手に掛けている事すら感じさせなかった「ストップ」の能力も、今ではテロ真っ青な無差別拷問能力へと姿を変えてしまった。

あれだけ輝いていた仲間達はすでにおらず、数多の困難を乗り越えてきた二人が、今はひっそりと老老介護をしている。残酷この上ない。

  • 安らぎのかたち

そんな二人の元に逃亡者・ローラが舞い込んで来る。彼女はかつてのローガンの様に、アダマンチウムを移植された生物兵器だったのだ。

そして、新たな庇護者を得たチャールズに往年の明晰さが戻ってくる。
昔の様にローガンを教え、導く姿が見られる。

3人は逃避行の途中、親切な農場主に夕食と寝床を供される。このシーンはとりわけ印象深い。
チャールズはローガンに、これこそ幸せなのだと諭す。

人並み外れたギフト(生まれながらの能力)を持ち、それゆえ過酷な闘いの日々を送ってきた二人。そんな二人が求めるべきものは、帰る場所、温かな家族、そういう平凡な幸せだった。

  • そして、谷からすべての銃は去った

農場主との食事のシーンにおいて、ローラはニコニコと楽しそうな笑顔を見せる。彼女の笑顔はこのシーンと、ローガンの髭にイタズラするシーンのみである。

ローラが嬉しいのは、家庭的環境と、かりそめでも家族関係を得た事(祖父チャールズ、父ローガン、娘ローラ)であろう。
ローラが実際にローガンを遺伝的父親だと認識していたのかは分からない。むしろ、家族といえば研究所の子供達だけだったローラに、平凡な家庭的家族的体験を与えてくれたからこそ、ローガンは彼女の父になったのだろう。

だからローラは、自分達についてきてくれないローガンに腹を立てる。

そしてラスト、去ってゆくローガンに父さんと呼びかける。父と呼ばれたローガンは、さすらいの身であった自分が終ぞ知る事が出来なかった幸せを、とうとう最期に知る事となる。

ローガンは最期、幸せだったと信じたい。

かくして、かつての戦士達は去ってゆき、残された者は託された思いを胸に生きてゆくのだ。

  • 不明点をちょっと補足

まず、あのイキナリ出てきた白塗りスキンヘッドのキャリバンって誰?
彼は『X-MEN:アポカリプス』に出てきた、サイロックの最初の雇い主のおっさんである。
しかし、『~アポカリプス』の時とキャラクターが違うので別人かもしれない。

また、チャールズとローラが観ていて、ラストでもセリフを引用していた映画のタイトルは?
あれは『シェーン』という映画である。
あの後有名な「シェェェェェーン」というセリフが入る。

そして、時間軸はどうなっているのか?
私は、本作品は他の『X-MEN』シリーズからは独立した、「ローガンの墓碑銘」としての単独作品だと認識している。というか、認識したい。
だって、『X-MEN:フューチャー&パスト』のラストが2023年。あの時点でフェニックスとして覚醒したジーンが生き残っていた。X-MEN最強の彼女がいれば、ボケたチャールズを何とかしてくれたのではないだろうか?
つまり『~フューチャー&パスト』の結末を辿らなかった未来だと推測される。そうだろ!?そうだと言ってくれ!『~フューチャー&パスト』の未来ではチャールズもローガンも安らかに過した、はいお仕舞い。でいいだろ!?君もそう思うよな!?

  • スタッフとキャスト

監督はジェームズ・マンゴールド。『’アイデンティティー’』(03)『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』(05)そして『ウルヴァリン:SAMURAI』(13)等を監督した。
そういえば、ローガンの家で日本刀がちらっと映っていた。

ローガン役はヒュー・ジャックマン。

チャールズ・エグゼビア役はパトリック・スチュワート

二人ともお馴染みだ。17年間ご苦労様でした。

ローラ役のダフネ・キーンは本作が映画デビュー。
額に向こう傷がある。やんちゃカワイイ。

スカした追跡者ドナルド・ピアース役を演じたのはボイド・ホルブルック。本作で顔を覚えたので、今後の活躍に期待したい。

そして、農場主のウィル・マンソン役の俳優が気になる人もいるのでは?
彼はエリク・ラ・サル。『ER緊急救命室』で外科医ピーター・ベントン役を演じていた人である。

 

 

映画という過酷な世界で17年間も同じ役を演じ続けてきたヒュー・ジャックマン。
ウルヴァリンという『X-MEN』ナンバーワンの人気キャラを演じるのは並大抵のプレッシャーではなかったハズだ。

ヒューのウルヴァリンがいたからこそ『X-MEN』シリーズもここまで続いたし、現在のアメコミ映画ブームの先駆けとなった。

そのヒューが演じる最期のウルヴァリン。『ローガン』は我々に老いという現実を突きつけてくる。楽しく、スカッとするヒーロー映画では無い。人生の晩年の苦悩と苦しみ、間近に迫る死の恐怖を描いている。

しかし老い衰えたとて、ローガンの本質は変わらない。最期までアウトサイダー、そしてファイターであった。

だから、私達は知っている。彼は今でもヒーローであると。

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さて、次回はミュータントというかエイリアン?映画『美しい星』について語りたい。