2016年、アメリカ大統領選挙。人民もメディアもヒラリーの勝利を予想しながら、しかし、勝利したのはトランプだった。彼は11月9日に勝利宣言を行った。「どうしてこうなった…」誰もが思ったこの事に、マイケル・ムーアが切り込む、、、
監督はマイケル・ムーア。
アポ無し突撃ドキュメンタリーという形式の作品で、
一躍有名となった。
主な監督作品に
『ロジャー&ミー』(1989)
『ボーリング・フォー・コロンバイン』(2002)
『華氏911』(2004)
『シッコ』(2007)
『キャピタリズム マネーは踊る』(2009)
『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』(2015)等がある。
独自の視点で切り込み、
アポ無し突撃取材を敢行、
そうして集めた素材を、独特の感性で編集し、
怒濤の勢いで問題提起の映像展開をする作家、
マイケル・ムーア。
彼の新作映画作品は、
勿論、誰もが予想した事ですが、
現アメリカ大統領、トランプ批判!!
本作のテーマというか、
目的は一目瞭然。
来る中間選挙(2018/11/06)にて、
トランプ率いる共和党を勝たせないようにする為のものです。
その為に128分の映画を作り上げた男、
マイケル・ムーア、64歳。
老いて尚、盛んです。
しかし、
本作は丸々全部がトランプ批判という訳ではありません。
話題があっちこっちに飛び、
様々な現代アメリカが抱える問題点を指摘します。
一見、まとまりの無い内容です。
しかし、
終わってみれば、ちゃんとトランプ批判になっている、
この見事な構成力。
アメリカのゴタゴタは対岸の火事なのか?
否!
本作を観ると、
今、直面している危機をいうのが実感できる、
そんな作品『華氏119』です。
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『華氏119』のポイント
トランプ批判!!
現代アメリカが抱える問題点を浮き彫りにする
立ち上がるのは、今!!
以下、内容に触れた感想となっております
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マイケル・ムーアの総集篇
監督、マイケル・ムーア。
現代アメリカの内包する処々の問題点を、
ドキュメンタリー映画として浮き彫りにする映像作家。
それを、エンタテインメントとして、
ちゃんと面白い映画に仕上げているのが凄いのです。
さて、本作の目的は一目瞭然。
現在のアメリカ大統領、ドナルド・トランプ批判です。
来る中間選挙に向け、
トランプの共和党を追い込をかけよう、
そのタイミングで公開したのが本作なのです。
因みに、
本作の題名は『華氏119』。
全体主義を描いた小説の名作、レイ・ブラッドベリ(著)『華氏451度』、
ジョージ・W・ブッシュ批判を行った自身の映画『華氏911』、
ドナルド・トランプが大統領選での勝利宣言を行った日、2016年11月9日、
これらを掛け合わせたものとなっております。
しかし、
本作は上映時間丸々トランプ批判という訳ではありません。
トランプの所業については、ツッコミ処が沢山あって、
2時間じゃ収まらないだろうと思ったら、肩透かし感があります。
しかし、
良く考えたら、
トランプ自体に問題があるのは、言われるまでも無い事です。
敢えて、今更指摘する事でもないという判断でしょう。
本作は、
トランプ批判から始まり、
話題はあちらコチラに飛び回ります。
1:
バーニー・サンダースが敗北した原因となった、
選挙制度批判。
2:
民主党の現体制を変えようとする、庶民派の候補者達の活躍。
3:
ミシガン州フリントにおける、水道水汚染問題。
4:
ウェスト・バージニア州における、教員のストライキ。
5:
フロリダ州バークランドで起きた高校銃乱射事件から端を発した、銃規制強化を訴える運動。
本作はトランプ問題と言いつつ、
実際は、アメリカ社会の内包する病巣をえぐり出した作品となっています。
そうなのです、
これは、
マイケル・ムーアが過去作で取り上げた、
『ボウリング・フォー・コロンバイン』の銃社会問題、
『華氏911』での政権問題、
『シッコ』での医療問題、etc…
これらを再び振り返った、
謂わば、本作はマイケル・ムーアの総集篇とも言える作品となっているのです。
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見応えのある構成
あっちこっちに話題が飛んで、
情報量の多さに混乱気味になってしまう、『華氏119』。
しかし、
本作を観ていると、
徐々に話題が収束して行きます。
それは、
6:
トランプとファシズムの共通点を指摘、という点です。
以下、混乱した内容の『華氏119』の内容をまとめてみます。
民主党は、
物量とメディアによる選挙戦を展開する共和党に対抗する為に、
スーパー代議員制度を駆使し、
同じ土俵で勝負出来る候補者として、
ヒラリーを民主党代表に立て、サンダースを退けます。
党員の選挙結果では、サンダースが有利だったのにも関わらず、です。
その結果、
政治に絶望した人間が投票を棄権し、
結果、民主党が敗北した原因になったのではないか?
それが、共和党を勝たせ、トランプ大統領を産んだ一因なのではないかと訴えます。
しかし、
民主党の若い候補者は黙っておらず、
大口の企業よりもむしろ、
アレクサンドリア・オカシオ=コルテスなどの、民衆目線の候補者達が徐々に台頭して来ている、
その様子も同時に紹介しています。
また、ミシガン州フリントにおける、
水道水汚染問題も取り上げます。
ミシガン州は、
共和党のリック・スナイダーが州知事となりました。
リック・スナイダーは、
トランプと同じように、政治に市場主義を持ち込んだ人間。
彼の政策で市民は健康を害しますが、
無策にて被害を拡大、
視察に来た当時の大統領オバマもパフォーマンスに終始し、
問題は現在も解決されないまま続いています。
黒人の多い町、フリントで、
「我らのヒーローオバマ」に寄せた期待が、
一転失望に変わる。
これもまた、
民主党員が政治に厭世観を観じ、
投票を放棄した一因ではないか、とも訴えると同時に、
市場主義を政治に持ち込むことの危険性も訴えます。
健康被害というところから発想は飛躍し、
公務員に高い保険料を払わせ、健康状態を監視するデバイスの着用を義務付けたウェスト・バージニア州の問題も指摘します。
教育委員会のお偉方は、
政治を忖度し、ナァナァで済ませようとしますが、
現場の職員は黙っておらず、ストライキを敢行。
この活動は、身を結び、
更には周辺の州へも波及して行きます。
また、ストライキから発想は飛躍、
フロリダ州パークランドの高校での銃乱射事件を政治問題と結び付けようと、
同高のティーンエイジャーが中心となって立ち上がった、
銃規制強化への運動の盛り上がりの様子も紹介します。
そして、
トランプ大統領の言説と、
ファシズムの台頭の共通点を指摘。
公然と倫理を乗り越えようとするトランプの行動は、
どこまで行けるのかという事を、図っているかの様に見えます。
かつて、ドイツは新進国家でした。
しかし、ナチスの台頭を許し、
強烈な全体主義とファシズムへと突き進んで行きます。
メディアは、
儲かるからと、トランプの主張を面白おかしく煽り、
トランプは免罪符が得られたとばかりに、
その流れに便乗する、
これは、21世紀型の新しいファシズムである、
そうマイケル・ムーアは訴えます。
かつてのドイツの様に、
政治が、憲法が守ってくれる、
そう思って手をこまねいていたら、
ファシズムに喰われてしまう。
恐怖を煽って、
自由を手放させ、管理社会を促進する、
それは独裁者の常套手段なのだ。
そう、
2016年11月9日、
トランプの大統領就任を防げなかった様に、
何もしなければ悲劇は起こってしまう。
しかし、
一人一人の力は小さく感じても、
皆で声を上げれば、
ウェスト・バージニア州のストライキや、
銃規制強化への運動で見られた通り、
何らかのムーブメントは起こせる。
行動は、今、起こすべきなのだ。
でないと、
ミシガン州フリントの様な悲劇が繰り返される事になる、
それ、以上の事も、、、
なんと、あれ程とっちらかっていたかの様な話題は、
全て、結局最終的にはトランプ批判に落ち着いている、
この構成力の見事さと力技に唸らされます。
本作『華氏119』は、
アポ無し突撃ドキュメンタリーではありません。
様々な事例をモザイク模様の様に組み合わせ、
それをトランプ政権に突き付ける、
テンポ良く、スピーディーに問題提起しながらも、
一方、
構成は力技で観せる、
どっしりとした印象の作品となっています。
アメリカ社会の問題点を次々に浮かび上がらせ、
その一方、
その問題点も、行動によって、解決出来るという希望も同時に描く、
その事で、
観た人の行動を促す、
そう、『華氏119』は、
この映画のみで完結するのでは無く、
観客の行動で以て、その先へと続いて行く作品と言えるのです。
本作の意義はあるのかどうか、
それが、
来る中間選挙にて見られるのか?
そういう事も含めて、
非情にタイムリーな作品と言えます。
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