映画『炎の少女チャーリー』感想  昔懐かしのイヤボーン作品!! 

10代の少女チャーリーは、学校でイジられていた。
しかし、彼女には秘密があった。それは、生まれながらの超能力、キレると「発火現象」を起こすのだ。
学校で爆破事件を起こした事が切っ掛けとなり、チャーリー達家族を追う秘密機関「ザ・ショップ」に存在を気付かれてしまう、、、

 

 

 

 

 

 

監督は、キース・トーマス
他の長編映画賞監督作に、
『ザ・ヴィジル~夜伽~』(2019)がある。

 

原作は、
スティーヴン・キングの小説『ファイアスターター』。

 

出演は、
アンディ:ザック・エフロン
チャーリー:ライラン・キーラ・アームストロング
ヴィッキー:シドニー・レモン

レインバード:マイケル・グレイアス
アーブ・マンダース:ジョン・ビーズリー
ジョセフ・ウォンレス博士:カートウッド・スミス
キャプテン・ホリスター:グロリア・ルーベン 他

 

 

 

皆さん、
「イヤボーン」という言葉をご存知ですか?

耳に付ける、
音が出る、アレでしょ?

それは「イヤホン」でしょ!

 

イヤボーン」とは、
相原コージ・絵、竹熊健太郎・作の
漫画『サルでも描けるまんが教室』で提唱された「エスパー漫画の法則」であり、

主人公の少女(少年)がピンチに陥った時、
「イヤーッ」と叫んだら、能力が覚醒し、
敵対する相手の頭が「ボンッ!!」と吹っ飛ぶ

いわゆる、ご都合主義的な現象(超能力)の事だと説明しています。

 

1970年代後半~80年代にかけて流行った
「能力バトル」系の漫画にて多用されたものであり、

後年、他にも、
大友克洋の『AKIRA』での超能力描写や、
『ドラゴンボール』で、孫悟空がスーパーサイヤ人に覚醒するシーンなど、

その法則が適用される場面というのは、
意外と多いです。

 

その元ネタは、
スティーヴン・キング原作の小説の
映画化作品『キャリー』(1976)とも言われていますが、

 

同じく、スティーヴン・キングが原作の
ホラーSF小説『ファイアスターター』を映画化した作品、

それが本作『炎の少女チャーリー』であり、

いわゆる、
イヤボーン作品の系譜に連なるモノに仕上がっています。

 

 

チャーリーが「イヤーッ!!」と叫ぶと、

パイロキネシス(発火念動力)が発動!!

周囲は猛火に包まれる!!

本作は、
ぶっちゃけ、それ以上でも以下でもありません!!

以上!!

 

 

…とは言え、
まぁ、もう少し解説してみますか。

 

昨今、
「マーベル・シネマティック・ユニバース」とかで、
スーパーヒーローを題材にした映画作品が多数作られています。

映画のスーパーヒーローは、
基本、お気楽な感じがしますが、

しかし、
人知を超越した能力というものは、
それだけで、人に畏れられ、
同時に、忌避されるもの。

一言で言えば、出る杭は打たれるのです。

 

取るに足らぬ一般人であるが故に、
超越した人類を許せず、

支配し、従わせる事でマウントを取り、
相手を無理矢理「下げさせる」事で、
安心する。

 

努力の方向を間違った人間の、
醜い思考、行動を、
本作では観る事が出来ます。

まぁ、何しろ、
原作はスティーヴン・キング。

ホラーや超能力を題材に、
人の心理的な葛藤や恐怖や醜さを描いて来た作家の作品が原作ですから。

 

 

まぁ、特に、
何も考えずに、
80年代に一世を風靡した感じのSFホラー映画の空気を味わえる作品として、
『炎の少女チャーリー』は、楽しめるのではないでしょうか。

 

 

 

  • 『炎の少女チャーリー』のポイント

イヤボーン作品

最近流行りの、スティーヴン・キング原作作品のリバイバル

人間の醜さを観に行く作品

 

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 

 

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  • 最近流行りなのか!?スティーヴン・キング原作映画作品のリバイバル

アメリカのホラー小説作家、スティーヴン・キング。

現代アメリカのベストセラー作家の一人ですが、
彼の作品が流行ったのは、
原作小説が、次々と映画化された事が、

スノーボール的に、
相乗効果として、評価され、
大衆に支持されたと言えるのではないでしょうか。

 

で、最近、
昔に映画化された作品が、

「そろそろ昔の作品を、忘れただろ?」

と、言わんばかりの勢いで、
多数、再映画化されております。

 

例えば、

『キャリー』(1976)→『キャリー』(2013)
『ペット・セメタリー』(1989)→『ペット・セマタリー』(2019)
『IT/イット』(1990)→
IT/イット ”それ”が見えたら、終わり。』(2017)
IT/イット THE END ”それ”が見えたら、終わり。』(2019) 等があります。

また、
『シャイニング』(1980)の、時を越えた続篇として発表された
『ドクター・スリープ』(2019)も、無事、映画化されたという例もあります。

 

で、本作は、
『炎の少女チャーリー』として1984年に、
監督、マーク・F・レスター、
主演、ドリュー・バリモアで、映画化されました。

つまり本作は、
リバイバル映画化作品というか、

原作の『ファイアスターター』の再映画化作品という訳です。

 

因みに、
何故、『ファイアスターター』という題名が、
『炎の少女チャーリー』になったのかと言うと、

当時(1984)、
日本で同時期に公開された『ストリート・オブ・ファイヤー』(1984)との混同を避ける為だと、
Wikipediaに書いてありました。

 

  • イヤボーン作品でありながら、致命的な欠点アリ

『炎の少女チャーリー』はイヤボーン作品です。

しかし、
個人的には、致命的な欠点があると感じています。

それは、
悪漢を火あぶりにするシーンが圧倒的に少ない、
というか、
直接描写を避けている点です。

 

本作は、「イヤボーン作品」なので、
チャーリーが「イヤー」を叫ぶと、
炎が「ボーッ」と吹き出します。

それが、
猫や人を火あぶりにするのですが、

実は本作、
実際に対象を火あぶりにするシーンは、
巧妙に、避けられているのです。
全て。

炎が吹き出す時は、
殆ど、
吹き掛ける対象では無く、
吹き出す主体であるチャーリーのアップの描写となります。

 

唯一の例外が、

漫画の『バキ』の死刑囚のドイルが、
神心館の本部で粉塵爆発を起こした時に着ていた防火服みたいな装備を揃えた相手に、
パイロキネシスを発動するときだけです。

 

恐らく、
対象年齢層の問題で、
意図的に、残酷描写を避けたのだと思われます。

しかし、
作中の台詞でもありますが、
「反射では無く、決断の結果で力を行使せねばならない」のです。

つまり、
「イヤボーン作品」であるならば、
力の行使の結果、不幸で残酷な出来事が起こる時、
その能力描写に責任を持たねばならないと思うからです。

その時、
残酷なゴア表現になるかもしれませんが、
故に、その衝撃が、
反面教師として、観客に刺さるのではないかと考えるのです。

それが、ホラーであり、同時に、
SFで描かれる、
超能力を持った者の哀しさを表現し得ると
言えるのではないでしょうか。

 

本作は、
その作風や、
題材の選び方、
エンディングに重ねてスタッフロールを流す手法等、

昔のB映画的な作風を目指したのかもしれません。

おそらくは、
ゴア表現も、元々はあったのでは?と、推測します。

しかし、
対象年齢とか、劇場公開での観客動員を考えて、
何か、こんな「具の無い味噌汁」みたいな「イヤボーン作品」になっちゃったのかなぁ。

ちょっと、残念。

 

  • 個人的に好きなシーン

一応、フォローですが、
個人的に好きなシーンを紹介します。

それは、
「ザ・ショップ」のキャプテン・ホリスターが、

超能力を誘発する薬「ロトシックス」の開発者、
今は引退しているジョセフ・ウォンレス博士を訪ねる場面です。

 

ホリスターはチャーリーの能力に着目し、
拉致、捕獲し、実験・利用する事を画策、
ウォレンス博士に協力を求めます。

しかし、
ウォレンス博士は過去の非道な実験を悔いており、
且つ、
超能力者の復讐を恐れています。

そんなウォレンスの警告、
「(捕獲などせずに)直ちに抹殺せよ」というアドバイスに、

ホリスターは、
「あんたがやった実験だろうが(ビビるんじゃねぇよ、ボケ)」と、
意外そうに、ガッカリした表情をして、失望し、

彼の警告を理解しません。

 

この二人のやり取りは、
実生活でも、ままある場面です。

上司が、コストカットの為に、
資材の質を落とすと言い出すと、

現場監督が、
そんな事をしたら、事故が起こると警告します。

しかし、
上司はそれに取り合わず、
コストカットを断行し、
現場監督の警告通りに、事故が起こってしまいます。

双方の価値観、着地点の違いにより、
同じ言語を喋りながら、
全く、会話が噛み合わない様子が描かれ、

個人的には、
一番の興味深いシーンだと思います。

 

又、このシーン、
これまた、漫画の『グラップラー刃牙』の、
地下闘技場最大トーナメント戦、
私が一番好きな対戦である、
「ジャック・ハンマー対アレクサンダー・ガーレン戦」を思い浮かべます。

この対戦では、
ジャック・ハンマーの過去が明かされ、

彼が、
マッドサイエンティストのジョン博士の勧めで、
ドーピングに手を出し、
強大な力を手に入れたエピソードが語られます。

 

最初は常識を超えて行くジャックの身体能力に狂喜していたジョン博士ですが、

次第に、エスカレートして行くジャックに恐怖を覚える様になり、
最後には、
「私はモンスターを生んでしまった」と悔いながら、
自殺してしまいます。

 

この場合、
ジョン博士がウォレス博士であり、

ジャック・ハンマーがチャーリーであり、

被害者となる
アレクサンダー・ガーレンが、ホリスターであり、

同時に、
どうしても「イヤボーン」が観たい、
悪趣味な、私みたいな観客でもあるんですよね~~

 

 

「イヤボーン作品」の系譜でありながら、
ゴア表現を極力避けた事で、
ちょっと、残念な感じになってしまった作品、
『炎の少女チャーリー』。

それでも、
面白いシーンもちゃんとあるので、
まぁ、
興味のある人は、観てみても、いいのではないでしょうか、ね。

 

 

 

 

 

 

 

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