映画『義足のボクサー GENSAN PUNCH』感想  現実として突き付けられた壁に立ち向かえ!!

プロボクサーを目座す津山尚生。しかし彼は、右膝下が義足の為に、身体条件を満たせず、日本ボクシングコミッショナーから申請を却下されていた。
ボクシングコミッショナーの事務所にて、何気なく、海外なら可能かも、と言われた尚生。意を決した彼は、チャンスを求め単身フィリピンに渡る、、、

監督は、ブリランテ・メンドーサ
フィリピン出身。
監督作に、
『マニラ・ドリーム』(2005)
『キナタイ ーマニラ・アンドーグラウンドー』(2009)
『グランドマザー』(2009)
『囚われの人 パラワン島観光客21人誘拐事件』(2012)等がある。

出演は、
津山尚生:尚玄
ルディ:ロニー・ラザロ
メリッサ:ビューティー・ゴンザレス
尚生の母:南果歩
ボン・ジョヴィ:ヴィンス・リロン 他

日本には、
古く、高度経済成長期から、
80年代に亘り、
「スポ根」というジャンルが流行りました。

「スポ根」とは、
「スポーツ根性もの」の略で、

いわゆる、
主人公が、スポーツや、それを取り巻く環境の、
逆境や困難、ライバルを、
自身の努力と根性と修行で乗り越えて行く、

タイプの物語です。

TVドラマでは、
『サインはV』や、
『スクール☆ウォーズ』

漫画では、
『アタックNo.1』や、
梶原一騎原作の
『柔道一直線』
『巨人の星』などが流行りました。

私は中でも、
梶原一騎の、高森朝男名義の原作、
ちばてつや・絵、
『あしたのジョー』が好きですね。

いわゆるスポ根に加え、
反体制、アウトロー、
孤独、修行、友情、

色々と、
青春の全てが詰め込まれている傑作と言える作品です。

さて、
本作『義足のボクサー GENSAN PUNCH』は、

スポ根を描いた作品

と言えます。

義足という事で、
日本でプロライセンスを却下され、
単身、フィリピンに渡る。

コーチと分かり合い、
確執がありながらも、

身体検査と、
アマの試合で3連勝という条件をクリアし、

プロライセンスの獲得を目指す。

まぁ、ぶっちゃけ、
観終わった後思い出したら、

「ボクシング作品あるある」設定、展開に満たされた作品です。

しかし、
ストーリーが王道展開であるが故に、

鉄板の面白さなんだよなぁ~

そんな『義足のボクサー GENSAN PUNCH』、

主演の尚玄がプロデューサーも兼任し、
映画化実現に動いたという本作には、

主人公、津山尚生に、モデルとなった
土山直純という人物がいます。

つまり本作は、
いわゆる、
「実話に基づいた」作品というジャンルの映画でもあります。

全部が全部、
実話では無いでしょうが、
「義足のボクサーがフィリピンでプロライセンスと獲得した」
というチャレンジは、本当の事なのです。

そういう背景があるからか、

本作、
どことなく、ドキュメンタリータッチの作風となっております。

主役を演じた尚玄が、
自身をボクサー風の体に鍛え上げて作り上げた本作、

彼に限らず、

豊かになった現代において、

何故、格闘技という、
トレーニングや減量において、
自身の肉体を酷使するスポーツをする必要があるのか?

その事に、簡単に答えは出ませんが、

本気の役作り、
リアルな作風、
王道で感情移入出来るストーリーに浸る事で、

その一端を垣間見る事になる。

『義足のボクサー GENSAN PUNCH』
は、そんな作品なのだと感じました。

  • 『義足のボクサー GENSAN PUNCH』のポイント

主役を演じた尚玄のリアルな役作り

ドキュメンタリータッチながら、王道展開のボクシングもの

困難に挑戦するという事の価値

以下、内容に触れた感想となっております

スポンサーリンク

  • 困難に挑戦する事の価値

『義足のボクサー GENSAN PUNCH』は、
冒頭、
日本ボクシングコミッショナーの福岡支部にて、
ライセンス申請の却下を説明されるシーンがあります。

「何分前例の無い事ですし」
「選手の安全も考慮して」と言われますが、

結局は、
スタッフの
「面倒臭い事で、ゴネるなよ」という本音が垣間見えるシーンです。

まぁ、恐らく、
本部からしたら、
決まった条件を満たしてないので、
という理由でむべ無く却下し、

その汚れ役を、
現場のスタッフに押し付けているだけなんでしょうけれものね。

そういう、
「お役所仕事」の仕組みが分かっているからこそ、

ワンチャンを望んで、沖縄から福岡へ出向いたにも関わらず、
何を言っても無駄と悟った津山尚生は、
大人しく、引き下がったのでしょう。

この辺り、日本的な風土を理解した描写ですよね。

しかしその時、
コミッションのスタッフが、
何気なく口にした台詞、
「海外なら、可能かもしれませんが」
という言葉を真に受けて、

津山は、
単身フィリピンに向かい、
プロライセンスの獲得を目指すというのが、

本作の冒頭のストーリーです。

現代において、
何故、ボクシングという、
自らの心身を酷使する競技をせねばならないのか?

それは、
自らのプライドの為か、
或いは、功名心の為か。

しかし、
フィリピンにおいては、
貧困を脱却する為、家族を食べさせる為に、
プロのボクシングに挑戦するという人も、
少なからずいるそうです。

それはまるで、
貧しい環境から這い上がって、
ボクシングにて数々の名声と富を築いた、
フィリピン出身の英雄、
マニー・パッキャオを習うかのように。

本作の津山は、
義足というハンデが確かにあります。

更には、御上から、
自らが望む未来(プロライセンス獲得)を閉ざされたという、
理不尽も経験しています。

人は、生きて居ると、
どうしようも無い、理不尽な「反対意見」に直面する事が、
多々あります。

その理由とされるのは、
生まれであったり、
国籍であったり、
人種であったり、
性別であったり、
身体的特徴だったり、色々です。

それらが、
制度や法律、社会通念、宗教などによって、
理不尽に規制される時に、

人は、
憤りつつも溜息を吐きながら、
静かに、諦めてしまいがちです。

どうせ、無理だ、
何も変わらない、と。

しかし、
時には、諦めずに、
現状に抗ってみせる人物も、

少数ですが、確かに居ます。

何故、ボクシングなのか?
何故、困難に挑戦するのか?

人生のやる気を失わせる出来事や人間に、
どうして、抗う事が出来るのか?

その答え、動機は、
人それぞれでしょう。

しかし、
そういう逆境において、
自らに試練を課し、
修行によって困難に挑戦、打破を目指す姿に、

人は、勇気を貰い、憧れ、
自らも、そうなりたいと、願います

本作では、
沖縄の津山のジムには、
マニー・パッキャオのポスターが張ってありました。

故に、
津山はフィリピンを目指したのでしょう。

マニー・パッキャオの様に、
逆境から這い上がる為に。

故に、
ジム仲間の死や、
コーチの八百長関与に直面しても、
津山は歩みを止めません。

本作は、
そのラストも、印象的です。

フィリピンでプロライセンスを獲得して、
日本に凱旋帰国しますが、

やはり、
「津山さんの健康が一番ですので」という理由で、
プロとしての試合が、日本では組まれる事が、ありませんでした。

チームメイトが日本の試合で
東洋太平洋王座獲得したニュースを、
寂しそうに眺める津山の姿が、そこにはあります。

自らの希望を叶えても、
現状が変わらないという事も、
確かにあります。

それでも、

困難に押し潰されるより、
屈する事なく、
道を進む人生の方が、
美しいのではないのか。

本作『義足のボクサー GENSAN PUNCH』

挑戦する事の困難さ、価値を同時に描き、

それでも、
人生にて試練の達成を目指す事が、
如何に、尊いか

その美しさ勇気を描いた作品と、言えるのではないでしょうか。

スポンサーリンク