映画『アンビュランス』感想  テクい!!早い!!硬い!!驀進する最強の車、その名は救急車!!

アフガニスタンでも戦った事のある、元海兵隊員のウィル。病気の妻の為に治療費が必要だが、保険が下りずに苦境に立っていた。生まれたばかりの赤子も抱え、途方に暮れるウィルは、母違いの兄に相談する。
兄のダニー、職業、銀行強盗。大金を手にする為、成り行きでウィルは「仕事」を手伝う事になるのだが、それが失敗。警察に追われる二人は、救急車を乗っ取って逃走する、、、

 

 

 

 

 

 

監督は、マイケル・ベイ
監督作に、
『バッドボーイズ』(1995)
『ザ・ロック』(1996)
『アイランド』(2005)
『トランスフォーマー』(2007)
『6アンダーグラウンド』(2019)等がある。

 

出演は、
ダニー・シャープ:ジェイク・ギレンホール
ウィル・シャープ:ヤーヤ・アヴドゥル=マーティン2世
キャム・トンプソン:エイザ・ゴンザレス 他

 

 

 

観る映画を決める時、
私が参考にするのは、
予告篇(トレーラー)と監督です。

予告篇で興味を惹かれなければ、
本篇が面白いハズも無く。

そして、
監督のカラーが、
映画作品にとっては、
最も重大な影響を及ぼします。

 

過去作が面白い監督なら、
最新作も期待して観に行きますし、

文章のみでは、どんな内容か分からない作品でも、
過去に、自分の好みと合わない作品を作っていた監督なら、
それをスルーしたりもします。

 

私にとっては、
ポール・W・S・アンダーソンとか、
山崎貴とかは

名前だけで回避確実な地雷として認識されています。

世間の評価は、どうあれ、ね。

 

 

と、いう訳で、
『アンビュランス』です。

本作は、アクション映画。

導入部以外、
ずっと救急車で暴走!!

 

ガツンと行こう!!
ド派手にかませ!!

アクションの真髄、ここにあり、
そんなノリの作品です。

 

何せ、
銀行強盗に失敗したダニーとウィルがハイジャックする救急車、

これが、タフ過ぎる!!

如何なる暴走にも耐え、
警察車両の追跡を何度も撒き、
長時間の運転にもへこたれない。

メインキャラは3人いますが、
救急車こそが、
4人目のメインキャラと言える活躍を果たします。

 

こんなノリ、
懐かしの90年代、
ハリウッドアクションの遺伝子が、
時を経て、現代に蘇った、

そんな趣すら感じられます。

 

面白い映画というものは、
「起承転結」がハッキリしているものです。

しかし、
本作は違います。

ストーリーとしての「起承転結」は、
ちゃんとありますが、

場面状況としては、
ずっと暴走救急車

徹底してます。

 

なにせ本作、
上映時間が2時間16分。

え!?
そんなに救急車ネタで持つの?

と不安になるでしょう。

持つンです!!

救急車で、
2時間超えを果たします。

そんなにネタが無いだろう、
と、思われるかもしれません。

しかし、

危機又危機の連続、
これぞ、アクションの見本、
クリフハンガー展開で、全く飽きさせません。

 

 

『バッドボーイズ』
『ザ・ロック』
「トランスフォーマー」シリーズ など、

数々の名作アクションをものにしてきた監督だけあって、
流石の職人芸です。

 

ただね、
正直に言うと、
ちょっと、気になる描写もあって。

私個人の感覚とは、
相容れない部分もあったりして、
手放しでは褒められない作品だったりします。

 

とは言え、
何も考えずに観れば、
相当楽しい映画、
それが本作『アンビュランス』なのです。

 

 

  • 『アンビュランス』のポイント

ずっと暴走救急車!!

それで飽きさせないアクション、アクシデントの構成の上手さ

ストックホルム症候群

 

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 

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  • 飽きさせないアクションの構成

本作『アンビュランス』は、
その名の通り、
ずっと救急車(ambulance)に乗りっぱなしです。

2時間16分の上映時間で、
その殆ど、
8割位は、乗っているんじゃないかな?

 

で、
「ずっと救急車」という状況で押し切るには、
そんなに、ネタが無いだろう、

私はそう思っていましたが、
どうしてどうして、

本作は、力技でそのまま終幕まで寄り切ります。

う~ん、凄い!

 

どうして、
そんな長時間、
飽きさせずに、ネタ切れさせなかったのか、

それには、色々な要因がありますが、

その一つに、

メインの登場人物3人にフォーカスを絞り、
その3人の、
三者三様の思惑、活躍に個別にスポットを当てる事で、

舞台(救急車内)は固定されていても、
心理的な状況が目まぐるしく変わるので、
展開に変化が生まれ、
飽きさせない構図になっているのです。

 

メインの3人は、

職業・銀行強盗のダニー

その弟、家族の為にお金が欲しいウィル

救急車に乗り合わせた
救急救命士のキャム です。

 

ダニーは正統派(?)銀行強盗目線。

救急車に乗っている警官を生かしているのは、
あくまでも罪の軽減であり、

畢竟、警官もキャムも、
人質として利用しています。

また、
どうやって警察の追跡を躱すか?
そういう悪役独特の見処を体現しています。

 

ウィルは、変形銀行強盗犯。

已むにやまれぬ事情から、
自分の信念と意に反して、
犯罪に手を染めてしまいます。

彼の持ち前の正義感と、家族愛、
それに反する
犯罪行為という揺るぎない事実。

人は過ちを犯すし、
間違った選択もする

それでも、
その行動によって、
自らの非の償いは、如何様にも出来る

本作のテーマともいうべき主張を体現するキャラクターなのではないでしょうか。

 

キャムはやり手の救急救命士。

乗り合わせてしまった救急車にて、
成り行きで人質になるも、

ダニーを挑発し、
ウィルを説得し、
外の警察と連絡を取り、
撃たれた警官のザックの応急処置を施すどころか、

彼が死にそうになるや、
オンライン授業を受けただけで、
まるでブラック・ジャックの様に緊急手術を行い成功させるという、

正に八面六臂の活躍を見せつけます。

 

この3人の、
立場が違う活躍を、
シームレスに入り乱れながら描く事で、

一本道な展開ではなく、
波瀾万丈なストーリーを作り上げているのです。

 

  • ストックホルム症候群

アクションとしては素晴らしい出来ですが、
それでも本作は、
個人的に気になる描写があります。

 

一つは、
何故、銀行強盗が失敗したのか?
という事。

ダニー側も、
綿密に計算して強盗している訳でも無いし、

そもそも、
何故、警察の「寄り」が早かったのでしょうか?
強盗計画自体が外に漏れていたとしか思えませんが、
その辺りの説明、描写が皆無で、
モヤモヤします。

 

もう一つは、
ウィルの描写です。

彼自身、作中言っていましたが、
(家族の為とは言え)「銀行強盗をすると選択したのは自分」なのです。

だから、
彼は、その罪を償うべきだと、私は思います。

 

確かに人は、時に間違いを犯し、
選択を誤ります

故に、
その過失を償う為に、
意思と行動でもって示す必要があります

 

成り行きで手を染めた犯罪行為、

しかし、
流されるままにせずに、
選択の過ちに気付き、
行動で以て、その回復を目指すという、

このキャラクター、テーマ性の方向は、
素晴らしいと思います。

 

しかし、
ウィルの行動の意を汲み取るのは、
あくまでも観客であり、

私個人の感想ですが、

映画を作った側は、
その舞台を整えるだけにして欲しくて、

わざわざ登場人物達に、
「助かったのはウィルのおかげ」的な台詞を言わせて、
ウィルは正義だと観客に押し付けるのは、違うんじゃないかな?と思うのです。

 

いじめっ子に殴られて、
そのいじめっ子に無理矢理握手を強要され、
「仲直りしたから、チャラな」
と言われているような気持ちになるのです。

 

ストックホルム症候群」という言葉があります。

Wikipediaを参照に、ザックリ言うと、

誘拐事件や犯罪被害者が、
犯人と心の繋がりを築く事で、生存戦略を図る事だそうです。

キャムも、
撃たれた警官のザックも、
ちょっと、ストックホルム症候群になっているのかもしれません。

 

意味合いは違いますが、
普段素行の悪いヤンキーが、ちょこっと良いことしたら、
「あれ、彼って、良い人じゃん」と、
ギャップで勝手に人柄を良く見てしまう

そんなノリとも通じます。

 

全ての悪、罪は死んだダニーの所為にして、

自分はお金をまんまとせしめて、

キャムには良い人と言われ、
ザックは「彼が助けてくれた」とか言って、

そのオチは、
違うだろうと。

 

作中では犯罪行為を貫いたのだから、
その点の罰は与えるべき、

犯罪行為の中でも、
一定の倫理を保とうとしたウィルの理念は尊重すべきですが、
行動そのものは悪なので、
その部分は称賛すべきでは無い
と思います。

 

これは点は、描き方のバランス次第なのですが、
本作の場合、
ちょっと、間違ったメッセージになってるな、と感じるのです。

良い話、
爽やかなオチにするのは違うんじゃないのかい?

 

『トランスフォーマー』(2007)も面白い作品でしたが、
個人的には、ちょっと違うな、
と感じる作品であり、

本作を観て、
う~ん、やっぱり、
マイケル・ベイと私は、趣向が合わないな、思いましたね。

 

 

それでも、
「救急車で暴走」というワンアイディアを
これだけ膨らませて息も吐かせぬアクションに映画にしたのは凄い事です。

本作『アンビュランス』は、
面白いけれど、
評価は難しい、
それが個人的な意見ですね。

 

 

 

 

 

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