映画『いぬやしき』感想  現代に蘇ったノリダー!?空飛ぶじじいの大活躍!!

 

 

 

家族からは軽んじられ、会社では侮れている犬屋敷壱郎。癌を宣告され余命三ヶ月、家族に打ち明けられず公園で泣いていた所に、謎の光が突っ込んで来る。その翌日、みそ汁を飲んでも味が感じられず体調がおかしいのだが、、、

 

 

 

監督は佐藤信介
主な監督作に
『ホッタラケの島~遥と魔法の鏡~』(2009)
『GANTZ』(2011)
『図書館戦争』(2013)
『万能鑑定士Q -モナ・リザの瞳-』(2014)
『アイアムアヒーロー』(2016)
『デスノート Light up the NEW world』(2016)
『BLEACH』(2018)等がある。

 

原作は奥浩哉
『GANTZ』に続いて、本作『いぬやしき』もヒット。
共に映画化された。

 

主演の犬屋敷壱郎役に木梨憲武
共演に
獅子神皓:佐藤健
安堂直行:本郷奏多
犬屋敷麻里:三吉彩花 他。

 

気分がおかしく、自室に籠もった壱郎。
腕の調子も変で、さすっていると妙なしこりが。
それを押すと、なんと手が分解し銃の様な機械が飛び出した!!

犬屋敷壱郎は機械の体になっていたのだ、、、

 

そう、本作『いぬやしき』は

SFアクションなのです。

 

公開時期が、
パシフィック・リム アップライジング
レディ・プレイヤー1
アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー
と被っていますが、
なんと日本産の本作もその系列。

CGバリバリのアクションを繰り広げます。

 

「でも、どうせ日本の映画のCGってショボいでしょ」
と思われるかもしれません。

しかし、本作のCGは凄い。

日本映画ではかつて無いレベル。
CGと実写の区別が付かない程のクオリティです。

 

遂に、日本の映画のレベルもここまで来たかとの感動があります。

さて、ビジュアル面の話ばかりしましたが、
ストーリーも面白いです。

 

余命僅かと言われ、家族にも世間からも顧みられない存在の犬屋敷壱郎。

彼が機械の体を手に入れ、何をするのか?

その辺りの展開からも目が離せません。

じじいが空飛ぶ意外性!

 

しかし、それだけでは無い、

社会から疎外感を感じる人間が大活躍する。

 

この爽快感との両輪が、
映画『いぬやしき』を面白くしているのです。

 

 

  • 『いぬやしき』のポイント

上出来のCGによるSFアクション

ある日、超能力を手に入れたら、どうする?

信頼と評判は行動で勝ち取るもの

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • ヒーロー再誕!

本作『いぬやしき』。

主演は、
イケメンの佐藤健を相手に張って、オジサンの木梨憲武

このキャスティングに意外なものを感じる人も多いかもしれませんが、
実は一定の年齢層の人間にとっては、ちょっと感無量であります。

 

木梨憲武と言いますと、先頃長寿番組の『とんねるずのみなさんのおかげでした』に象徴されるように、
バラエティ・タレント「とんねるず」としての知名度が高いです。

一方、俳優経験もあり、
『竜馬の妻とその夫と愛人』(2002)等、映画やTVでの活躍経験もあります。

しかし、やはり木梨憲武が演じた作品で一番印象が深いのは
バラエティ番組『とんねるずのみなさんのおかげです』の小コーナーの一つのパロディドラマ、
仮面ノリダー』(1988~1990)であると言えましょう。

 

『仮面ノリダー』はバラエティ番組内で、
「仮面ライダー」シリーズのパロディとして作られた作品。

しかし、
「変身ヒーロー物」+「お笑い」
というバランスが当時のちびっ子にバカウケ
クラスの男子は全員見ていた程の大人気でした。

「とんねるず」の大ブレークは、この『仮面ノリダー』によってなされたと言っても過言ではありません。

毎週、『とんねるずのみなさんのおかげです』というより、
『仮面ノリダー』を見ていた、という程の人気の過熱ぶりでした。

 

その主演、「ぶっとばすぞ~」が口癖の木梨猛(=改造人間ノリダー)を演じるのが木梨憲武だったんですよね。

毎週石橋貴明が演じる着ぐるみの怪人とバトルを繰り広げていた、
あのノリダーがCGとなって帰って来た!!

 

恐らく、当時小・中学生だった三十代後半~四十代の人間が見ると、その面白さに別の感動が加わっているものと思われます。

 

  • 日本作品最高レベルのCG

本作『いぬやしき』を観て驚くのは、
やはり先ずCGのクオリティの高さでしょう。

 

原作漫画の『いぬやしき』自体、絵の制作にコンピュータを使用しており、
その緻密で無機質な感じが殺伐とした展開とマッチし、人気を博しました。

あの細かい機械描写が、実写で再現出来るのか?

その心配は杞憂でした。

むしろ、実写系ならではの
色、動き、これらの面白さが加わっていました。

技術の進歩とそれを活かそうとするスタッフ、
そして、そこにお金を注げる環境。

これらが漸く日本映画でも揃ったのだという感動があります。

 

出演者の全身をCGモデルとしてコンピュータに取り込み、
アクション部分はそれ専門の人間のモーションキャプチャーを使う。

CGを作る上で最も大事な「顔」の部分は、
その表情、質感を専門に取り込む「ライトステージ」とう機材を使う。
それが台湾にあるので、そこまで撮影に行く。

CGにて映画を作る上で、どうしたら高いクオリティの物を作れるのか?

それを考え、作品作りに妥協しなかった事が、面白さに繋がっているのです。

 

  • マーベル vs. 木梨憲武

まるで『アイアンマン』の様に空を飛び、ミサイルをぶっ放す『いぬやしき』。

日本産ヒーローとして、
公開時期が被ったアベンジャーズのメンバー入りしても見劣りしません。

…とは言え、犬屋敷壱郎のアベンジャーズ入りは夢のまた夢。

何故なら、木梨憲武は過去、マーベルを怒らせたという経験があるのです。

 

カプコンの対戦格闘ゲームに『マーヴル・スーパーヒーローズ VS. ストリートファイター』(1997)というゲームがあります。

このゲームに、
TV番組の『とんねるずの生でダラダラいかせて!!』の企画により、木梨憲武がデザインしたキャラクター、
「憲磨呂」が登場しました。

この「憲磨呂」のビジュアルは、
大学入学に失敗して三浪くらいしている10円ハゲあるひょろガキ
という印象。

木梨さん曰わく、
「使っている人間が自分に似たキャラクターの方が、感情移入出来る」との意図でデザインしたと言っていました。

しかし、このキャラクターのビジュアルに、マーベル側が激怒。
「こんな奴と我々のキャラクターを戦わせる訳にはいかない」とクレームを付けたと言われています。

結局、
日本国内版のみに登場するキャラクターとなりました。

 

かく言う因縁があった、
木梨憲武とマーベル。

時を経て、CGアクション映画の公開時期が被り
観客動員数にて決戦する為に、再び相まみえようとは

お釈迦様でも思わない事態と言えるでしょう。

 

  • 獅子神と犬屋敷

しかし、『いぬやしき』は見た目のみならず、
そのテーマ、ストーリー部分も面白いです。

 

超常の力を得た二人の人物、獅子神と犬屋敷。

この二人のスタンス、辿る道筋の違いが本作のストーリーを面白くしている所です。

 

普通の高校生がある日いきなり超能力を得る。

映画で言うと『クロニクル』なんかも思い出しますが、
本作での獅子神も力に溺れてしまうタイプです。

その獅子神に観られるキャラクターというのは、
自分が興味を持つもの以外に対する、共感性の欠如

自分の半径2メートル程度の人間関係にだけ拘り、
それ以外を排除、敵を見做して無条件攻撃を繰り返す姿は、
現代のSNS的人間関係を彷彿とさせるものです。

しかし、獅子神を演じた佐藤健は、
その役作りにおいて、「サイコパス的行動に理由付けを求めなかった」と言っています。

この行動に理由付けしないスタンスが、
獅子神の意味が分からない行動に奇妙な説得力と言うか、不気味さを存分に付け加えていたと思います。

 

一方、犬屋敷の方は、得た力を人助けに使います。

しかしそれは、確かに正義感もありますが、
人の役に立ちたいという「承認欲求」であるとも言えます。

家でも、会社でも蔑ろにされている犬屋敷壱郎。

彼は、自らの癌は機械化で無意味となりました。

病気を恐怖を知っている犬屋敷。
彼は自分の能力が人に使えると気付き、それを病人の快復に使います。

印象的なのは、
犬屋敷は病気を治癒し、さっさと立ち去るのでは無く、
本人や家族や喜んでいるのを幸せそうに眺めている所です。

自分の行為が人を喜ばせる、幸せに出来る

この事を確認しているんですね。

直接お礼を言われなくても、
自分でも人の役に立つ、
その事を自分で知っている。

この「自信」こそが、犬屋敷壱郎が持つべき物だったのです。

 

嫁さんはスルー気味、
息子には信頼されていない感じ、
そして、娘は辛辣な罵倒を次々と浴びせて来る。

洗濯物を一緒に洗わないで、
お爺ちゃんと間違えられるから、授業参観に来ないで、
家族の為に、何かして来たっていうの?

娘の父に対する評価はすこぶる低いです。

やはり、
家庭でも会社でも、言葉や意識より、
自分の行動を目の前で明確に見せないと、何も説得力が無いのです。

 

人間の時は、イマイチ自信のなかった犬屋敷壱郎。

しかし、自分でも何か出来ると知った男は、
言葉でも、
そしてそれを有言実行する事で娘の信頼を獲得出来たのだと思います。

 

犬屋敷壱郎が力に溺れなかったのは、
つまり彼は元々虐げられる側であり、弱さの苦しみを知っていたから

しかし、社会からは見放されても、
自分は社会に役に立てると、その行動でもって身の証を立てた犬屋敷壱郎のその選択は、
弱者だからこその強さを見せてくれる爽やかさがありました。

 

  • 出演者補足

本作は原作漫画『いぬやしき』の映画化です。

なので、登場するキャラクターも、原作のビジュアルに寄せている人もいます。

主演の木梨憲武も、オジサンですがさらに老けメイクをしています。

 

さて、ビジュアル的に印象に残るのは、まず二階堂ふみ演じた渡辺しおん。

こちらは髪型が原作まんまです。

そして、原作での情報バラエティ「ミヤネヤ」の宮根誠司の役を映画で演じたのは生瀬勝久

顔や髪型、喋り方を宮根誠司に似せていたのが、
おかしくも嬉しい拘りです。

まぁ、宮根誠司本人が演じたら一番盛り上がったとは思いますが。

 

ビジュアルイメージとは関係ありませんが、
犬屋敷壱郎の妻を演じたのは濱田マリ

今では女優として映画やドラマでよく見る人のイメージですが、

かつては、関西のライブハウスで「パンチラの女王」として名を馳せ

『モダンチョキチョキズ』という何人いるか分からないバンドでメインボーカルをしていたと知る人は、今では少なくなっているのかもしれません。

木梨憲武と濱田マリという、
90年代前半にバラエティ番組にて大ブレイクした人間同士が夫婦役を演じているのも、また面白い所です。

 

 

 

日本産CGアクション映画『いぬやしき』。

現代最高のCG映画だった『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』と比べると確かに見劣りする部分はまだあります。

しかし、
CG映画として、違和感なく充分にアクションを楽しめる、
日本映画でも「アベンジャーズ」やスピルバーグとも戦えるんだ、
その事を教えてくれる映画、それが『いぬやしき』なのです。

 

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