映画『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』感想  極彩色のSFアドベンチャーへ飛び出そう!!

 

 

 

美しい自然と調和し、楽園の様な星で暮らしていたパール人。突如、空を裂き、墜落してきた宇宙船により悲劇が訪れる、、、というリアルな夢を見たヴァレリアン。彼は、相棒のローレリーヌを口説くが体よくあしらわれる、、、

 

 

 

 

監督はリュック・ベッソン。
フランス出身。
かつてサブカル全盛期に映画オタク達のハートを鷲づかみしたのも、今は昔の話、、、
代表作に
『グラン・ブルー』(1988)
『ニキータ』(1990)
『レオン』(1994)
『フィフス・エレメント』(1997)
『ジャンヌ・ダルク』(1999)
『アデル/ファラオと復活の秘薬』(2010)
『LUCY/ルーシー』(2014)等。

出演者は
ヴァレリアン役にデイン・デハーン
不細工よりのイケメンという奇跡のバランスのビジュアルは、性別問わず好かれる要素であろう。
代表作に
クロニクル』(2012)
プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』(2012)
『メタリカ・スルー・ザ・ネヴァー』(2013)
『アメイジング・スパイダーマン2』(2014)
『ディーン、君がいた瞬間』(2015)等。

ローレリーヌ役にカーラ・デルヴィーニュ
ファッション・モデルとして活躍。
むしろ、そっちが本業。
代表作に
『アンナ・カレーニナ』(2012)
『PAN ~ネバーランド、夢のはじまり~』(2015)
『スーサイド・スクワッド』(2016)等。

他、出演に、クライヴ・オーウェン、クリス・ウー、リアーナ等。

 

デイン・デハーン特集第3弾。

 

「バンド・デシネ」と言われる、フランス語圏の漫画が原作の本作『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』。

その内容は

圧倒的なヴィジュアルによる、
ストレートなSFアドベンチャーです。

 

遙かな未来、拡張に拡張を重ね、
数多の異星人をも収容し大質量となった国際宇宙ステーション「アルファ」は、
地球軌道を離れ、それ自体で宇宙を航行する巨大都市。

この都市で、謎の汚染区域が拡大、
その原因をヴァレリアンとローレリーヌが探るのですが、、、

兎に角、まずヴィジュアルが凄いです。

絢爛豪華なキランキランな極彩色の世界観。

 

見た目のインパクトの説得力に唸らされます。

そしてこの、宇宙船と言うより惑星の様な存在「アルファ」の中で大冒険が繰り広げられます。

ゴチャゴチャ言う必要はありません。

とにかく、冒険を楽しもう!

 

観ている方は安心して勧善懲悪ハッピーエンドを楽しめる、って寸法です。

煩雑でありながらエネルギッシュな街並み、
繊細できらびやかなヴィジュアル、
特殊装備で縦横無尽に跳ね回る、

頭カラッポの方が夢詰め込める!

 

そんな名文句を思い出させる、
童心に戻って、素直に楽しめる冒険映画、それが『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』なのです。

とは言え、

タイトル詐欺感はちょとあります。

 

 

 

  • 『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』のポイント

見た目の美しさの凄さ

ストレートな勧善懲悪ハッピーエンドストーリーとして楽しむべき

実は、複雑な作りの裏設定!?

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • 邦題について

『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』。

邦題はこうですが、英語題は『Valerian and the city of thousand planets』。

訳すと「ヴァレリアンと千の惑星の都市」。
千の惑星由来の生物が住まう都市、位の意味です。

ですが、邦題のイメージでは、「宇宙の危機をヴァレリアンが救う」的な意味合いになってしまいます

これは、タイトル詐欺と言われてもやむを得ないですな。

こういう細かい所で、映画の満足度が変化するという事を考えて欲しい所ではあります。

 

  • 規律と恣意

本作『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』は勧善懲悪ハッピーエンド的なストーリーとなっております。

 

指令を受け、
「ミュール変換器」を奪還して「アルファ」に届けたヴァレリアンとローレリーヌ。

その宇宙ステーション「アルファ」では謎の汚染区域が拡がっており、
アルファの司令官フィリットは兵隊を送り対処しようとしましたが、いずれも失敗に終わっていました。

ですがそれは実は、失われた惑星ミュールの生き残りの民、パール人の居住地だったのです。

そうとは知らず事態に対処するヴァレリアンとローレリーヌ。

ですが、捜査によりヴァレリアン達は
惑星ミュールを滅ぼしたフィリットの戦争犯罪と事実隠蔽を知り、
ミュールの真珠と変換器をパール人に返還するのです。

 

ここで対比されるのは、フィリットとローレリーヌ。

フィリットは戦争の敗北による人類の経済的損失を考慮し、
惑星ミュールに知的生命が存在する事を理解していながら、
敵艦を撃墜し、惑星ミュールを滅ぼしました。

軍を与る上官としては、目的の為に万難を排すのは鉄則ではあります。

しかし、フィリット自身の過失は、
知的生命が居ると知っていながら戦闘を継続したこと、
そして、自分のその決断を隠蔽しようとした事、
さらには、パール人の存在をも抹消しようとした事です。

フィリット自身は、「自分は兵士だ」と言っていましたが、
兵士なら軍の規律に従うべきだったんですね。

つまり、兵士である事を振りかざしながら、
自分は兵士にあるまじき事(規律違反)をしていたんですね。

 

ローレリーヌはと言えば、
ミュールの変換器をパール人に返還する事をヴァレリアンに迫ります。
「愛は全てに優先する」と。

これに添い、ヴァレリアンもパール人に変換器を渡しますが、
これもやはり規律違反と言えるでしょう。

フィリットの戦争犯罪を告発し、再発防止に努めるなら、
パール人の存在の公表、変換器の返還等は、上司に報告し、指示を仰ぐのが兵士の本来の役目です。

良い事をしてハッピーエンドになった風ですが、
如何にも恣意的な感情のみの行動に思います。

やり様によっては、例えば、
一旦変換器で真珠を増やして、
変換器自体は持ち帰り、報告と事態収拾を図って後、
変換器の返還(ヴァレリアンが持っていくか、パール人に取りに来てもらう)を成すべきだったのです。

 

ぱっと見では、
フィリットは規律を振りかざす悪人、
ローレリーヌは規律より大事な人道的なものがあると訴える善人、
みたいな印象ですが、

実際は、
フィリットもローレリーヌも規律を無視し自分の恣意的な感情による行動を見せたという点では、同じ穴の狢なのです。

同じ事をしているのに、
一方は悪人、一方は善人みたいな印象の終わり方をしている事が、
ダブルスタンダードというか、テーマがぶれている部分だと思います。

フィリットは自身の過失を隠蔽する為に奔走しましたが、
ヴァレリアンとローレリーヌはこの後どうなるのか?
それも考え所ではあります。

 

  • 実は、、、

ですが実は、この展開全ては、恐らく仕組まれた事だと思われます。

理由その1:
ミュールの変換器を奪還するミッションの直後、アルファに届けろと命令された事

国防長官(映像で命令していた人)の指令により、
ヴァレリアンとローレリーヌは変換器を奪還、そして直後にアルファに行く事を命令されました。

そして、そのアルファにパール人がいて、丁度彼達は行動を起こしていた。

あまりにもタイミングが良すぎます

理由その2:
途中、フィリット司令官の指揮権を引き継いだオクト=バー将軍が惑星ミュールの情報を閲覧しようとした時、
その状態でも未だに「アクセス不能」情報があった事

オクト=バー将軍は国防長官に情報閲覧の必要性を訴え、
全ての権限を引き継ぐべきだと訴えました。

それが受け入れられ、惑星ミュールの真実を知りますが、
その時、
惑星ミュール攻撃を指示した人物自体は未だに隠匿されていました。

これは、フィリット司令官が個人的に隠蔽(忖度)したという事も考えられますが、
私は、フィリットよりさらに上の立場の者が関わっている為、その事実によりオクト=バーは(前任者のフィリットも)閲覧する事が出来なかったのだと思われます。

つまり、上の者はこの事の推移を理解しているという証左なのです。

 

そして、理由の1と2の事を考えて推理すると、

国防長官はパール人の事をある程度知っており、
(惑星ミュールの存在、フィリットのパール人に対する拷問等)
その上でヴァレリアンとローレリーヌを派遣、
彼達が自分の倫理観により、単独行動をとってミュールの変換器をパール人に渡す事も織り込み済み、
むしろ、その事を期待して、最適の人材を配置したのではないかと考えられます。

ヴァレリアンとローレリーヌは個人的にミュールの変換器をパール人に返還します。

これなら、
人類がパール人に多大な損害賠償をする必要もありませんし、
人類の醜聞が上手く隠蔽されます。

規律違反をしたヴァレリアンとローレリーヌは喋りませんし、
人類と関わりたくないパール人も表立って訴えて来ないと予想出来るからです。

 

人類の上の人物はフィリットの蛮行とパール人の行動を知っていた。

だから、ビッグ・マーケットにおけるパール人とアイゴン・サイラスと取引の現場にヴァレリアンを派遣した。

ヴァレリアンが上手く「ミュールの変換器」を確保出来れば、事態をコントロール出来るのでそれで良し。

パール人の手に渡るのも、それはそれで構わないという思惑でしょう。

その上で「アルファ」にヴァレリアンとローレリーヌを派遣。

優秀だが独断専行のきらいがあるという性向を上手く利用され、
人類の醜聞を隠蔽する形で事態の収拾を図った。

こういう絵図があったのだと思われます。

 

  • 政府の計画、まとめ

その1
政府の命令で攻撃を行っていたフィリット。
彼は勢い余って惑星ミュールを壊滅させるという戦争犯罪を犯しますが、そもそも知的生命体がいる場所で戦争を命じた政府も悪いので、
命令に従ったフィリットの犯罪を咎める事はしませんでした。

その2
しかし、惑星ミュールの生き残りが宇宙ステーション「アルファ」にて活動している事を知ったフィリットは、過去の自分の犯罪が明るみになる事を恐れて、
事実を隠匿する為に個人的にパール人排除の為の攻撃を開始します。

その3
政府はその動向を察しており、
これは流石に人道的にヤバいという事になり、一計を案じます。
「ミュールの変換器」奪還をヴァレリアンとローレリーヌに命じ、その流れで彼達を「アルファ」に派遣、
「フィリットの護衛」という命令を下しますが、その裏には、「フィリットの陰謀を暴け」という意図が隠されていました

その4
ヴァレリアンとローレリーヌはフィリットの陰謀を暴露、パール人に便宜を図って事態を収拾します。
現場の状況のみでは、
「黒幕はフィリット」という感じになり、かつての戦争犯罪、今回の暴走の責任も彼が一人で背負う事になるでしょう。

その5
そもそもは、下調べせずに惑星ミュールの近傍にて戦争を命じた政府が悪いのですが、その事は明るみになりません。
ヴァレリアンとローレリーヌが規則通りに動いても、
今回の如くに独断専行を行っても、
全てをフィリットにおっかぶせてトカゲの尻尾切りを行い、政府の責任までは問われない形を採っています。
また、今回、ヴァレリアンとローレリーヌは服務違反を犯しますが、これも看過されるでしょう。
また、次の機会に、政府が脅しの材料として、二人に首輪を付けた形となっているのです。

 

ぱっと見では分からない、意外に複雑な設定が裏に隠れされている事が分かると思います。

え?考えすぎかって?

いやいや、

現実の日本を見て下さい。

森友学園絡みの佐川氏の証人喚問とかね、、、

 

  • 出演者補足

本作で変幻自在のゼリー状生物「バルブ」役を演じたのはリアーナ
映画『バトルシップ』(2012)、『オーシャンズ8』(2018予定)に出演していますが、
本業はシンガーソングライターです。

私が初めて彼女を知ったのはこの曲でした。

名曲ですが、いやぁ、エロいですね。

 

そしてなんと、劇中でのリアーナ(踊り子バブル)のダンスシーンが公式の映像で公開されています。

映画で観たい人はスルーした方がいいですが、
いやぁこれもエロいですね。

 

 

 

 

 

先ず、ヴィジュアルのインパクトが絶大な『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』。

ストーリーは勧善懲悪ハッピーエンドで、何も考えない方が素直に楽しめる作りとなっています。

しかし、大人が観ると、
規律違反しているヴァレリアンとローレリーヌの行動にモヤモヤし、そこにツッコミを入れがちで、
普通に観たならそこで止まって批判的な意見が出てしまうでしょう。

だが、実際は、
そのヴァレリアンとローレリーヌの行動こそ、
上の人間に仕組まれていたという証拠も散見されます。

同じストーリーに多層的な見方が出来る、複雑な脚本ですが、
「細かくて、分かり難いよ」と思ってしまいます。

パッと見の印象では一筋縄では行かない、
しかし、やっぱり何も考えずに楽しむのが一番、
『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』はそういう映画なのだと思います。

 

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監督リュック・ベッソンが20年前に作ったSF映画です。

 


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さて次回は、ヴァレリアンもゲーム的でしたが、これはモロにゲーム小説、『ゲームSF傑作選 スタートボタンを押してください』について語ります。