映画『AVA/エヴァ』感想  メンヘラ暗殺者の支離滅裂な冒険!!

スゴ腕暗殺者のエヴァは、今日もターゲットを始末した。しかし、彼女は疑問に感じ、ターゲットに尋ねていた。
「あなたは、どんな殺される様な事をしたの?」と。
そんなエヴァの様子を問題視する組織の人間がおり、、、

 

 

 

 

監督は、テイト・テイラー
監督作に、
『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』(2011)
『ジェームス・ブラウン ~最高の魂(ソウル)を持つ男~』(2014)
『ガール・オン・ザ・トレイン』(2016) 等がある。

 

出演は、
エヴァ:ジェシカ・チャスティン
デューク:ジョン・マルコヴィッチ
サイモン:コリン・ファレル

ボビー:ジーナ・デイヴィス
マイケル:コモン 他

 

 

 

シン・エヴァンゲリオン劇場版』、ご覧になりましたか?
現在も絶賛公開中です。

ところで皆様、
パンフレットを買うとき、タイトルをどう言いますか?

ノマドランド』みたいに短いタイトルならそのまま言いますが、
例えば、
『名探偵コナン 緋色の弾丸』とかならば、
略して、「名探偵コナン」のパンフレット下さい、と言いますよね。

 

翻って、本作『AVA/エヴァ』です。

パンフレットを買う時、
「エヴァ下さい」と言ってしまうと、
本作なのか、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の事なのか、

売店の店員さんを混乱させる事必至です。

 

それで、
ドキドキしながら、劇場の売店へ行ったのですが、

なんと本作、
パンフレットを作っていないタイプの作品で、
心配が杞憂に終わりましたねぇ。

…しかし、
これもコロナの影響なのか、
最近ちょくちょく、パンフレットを作らない劇場作品がみられます。

基本的に、劇場鑑賞した映画はパンフレットを購入したいので、
この傾向は、ちょっと残念ですね。

 

 

と、言う事で、
『AVA/エヴァ』です。

本作を簡単に説明すると、

殺しに疑問を持つ様になった暗殺者が、
組織からお荷物と目され、
命を狙われる、

 

まぁ、よくあると言えばよくあるタイプの作品ですが、
ある意味、鉄板の設定です。

本作は、
それが女性暗殺者というか、スパイなのですが、

これもまた、
ある意味鉄板。

『ニキータ』(1990)とか、
最近でも、
アトミック・ブロンド』(2017)とか、
レッド・スパロー』(2018)とかありますよね。

 

そういう過去の名作がありますので、
本作は、どう差別化するのか?
(或いは、しないのか)

そこに興味がありました。

で、どうだったのかと言いますと、
ちゃんと、差別化がなされていましたねぇ。

メンヘラ暗殺者の支離滅裂な冒険!!

 

それが、本作です。

 

本作、どうやら途中で監督が交代したようで、

その影響なのか、
どうも、脚本が支離滅裂というか、
何を伝えたいのか?
何を観せたいのか?
そういう部分に、一貫性が無い印象があります。

本作、
予告篇ではアクション映画に見せかけて、
実は、
エヴァの心の動きをメインに据えたドラマ映画だったりします。

しかし、です。

個人的に、
映画作品の根幹を成すものは「テーマ」だと思っているのですが、
本作には、それがありません。

いや、あるにはあるのですが、
観客に見えづらいのです。

なので、薄味のチャーハンを食べている様な印象を受けるというのが、本音です。

 

加えて、
本作は主人公のエヴァが、
元・アル中のヤク中で、
更に劇中の行動も支離滅裂なので感情移入しにくく、

「キャラクター」という面から観ても、
とっちらかった印象を受けます。

 

で、
スパイ映画として楽しもうとしても、

なんか、案外、
アクションシーンも少なく、
「暗殺者VS.組織の血みどろのバトル」的なモノを期待していると、
質的にも、量的にも、肩透かしを喰らってしまいます。

観終わった後には、
一体、何だったんだろう?
どうして私は、この映画観ようなんて、思ったんだろう?

そんな事を考えちゃったりもします。

 

言ってしまうと本作は、
ストーリーも、アクションも、
中途半端なんですよね。

カレーのトッピングに納豆を付けている様なモンです。

別々に食べると美味しいけれども、
一緒に食べるには融合しないな、ってヤツです。

 

そして、気付くのです。

ああ、パンフレット作らなかったのは、
コロナの影響なんかじゃなくて、
パンフレットで語るような内容が無いからなんだな、と。

 

出演者は豪華でも、
映画が面白くなる訳では無い。

それを体現する様な作品、
それが本作『AVA/エヴァ』と言えるのではないでしょうか。

 

 

  • 『AVA/エヴァ』のポイント

メンヘラ暗殺者の支離滅裂な冒険

出演陣が豪華でも、映画が面白くなる訳では無い

語るべきテーマの無い作品は背骨が無い

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 

 


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  • 巨乳暗殺者

映画の女暗殺者と言えば、
私が思い出すのが、『ニキータ』。

その、「ニキータ」を演じたアンヌ・パリローのイメージがありますので、
何となく、スパイと言えば、
アスリート然とした、スレンダーな印象があります。

アトミック・ブロンド』のシャーリーズ・セロンもそのタイプですね。

 

一方、
レッド・スパロー』のジェニファー・ローレンスは豊満な見た目なのですが、
それは、
劇中のスパイが「ハニートラップ」を武器にする為、
敢えて、そういう体型なのだな、という必要性がありました。

 

戦闘や、バトルがメインの作品なら、スレンダー、
ハニートラップを駆使するなら、ムチムチ、

同じスパイでも、
その目的で体型自体も変わってきます。

 

で、本作『AVA/エヴァ』は、どうなのかと言いますと、

主役のエヴァを演じたジェシカ・チャスティンが、
まぁ、巨乳ですね。

でも、背丈は低く、
腕も細くて、
胸のデカさとはアンバランス。

まるで、
元AKB48の坂野友美みたいな、
豊胸巨乳ぶりです。

 

それは、
暗殺者としてターゲット(男)に近付き、始末するまでの過程において、
巨乳である方がやりやすいという事なのでしょうけれども、

一方、
軍隊出身という経歴で、
また、アクション映画でもあるという側面から観ると、
ちょっと、巨乳というキャラクター設定と齟齬が生まれているなという印象を受けます。

 

で、
これを好意的に解釈しますと、

エヴァは、
ランニングして、体を鍛えています。

まぁ、普通、
ランニング系のアスリートはスレンダーな感じが多いですが、

エヴァは巨乳です。
そして、走り辛そうです。
日常的にランニングをしている風の描写なのに、
胸が邪魔で、走り慣れていません

つまり、本作のエヴァは、
ハニートラップの為に、敢えて豊胸手術を受けているのではないのか?
そう推測する事が出来るのです。

多分。

 

  • 伝わり辛いテーマ

先程、
本作のテーマは分かりづらいという事を言いましたが、
まぁ、それでも一応、
テーマであろうと推測出来る事があります。

それは、
「人は、その死の際に、人生の真価が測られる」という事です。

これは、
作中でのデュークの台詞ですね。

 

さて、作品の冒頭、
エヴァはターゲットに「あなたは、どんな人に殺されるような事をしたの」と尋ねます。

組織上、エヴァの間接的な上司筋(?)にあたるサイモンは、
これを問題視します。

「ターゲットに話しかけるのは御法度だ」とか
「殺しに疑問を抱き始めている」だとか難癖を付けます。

それで、エヴァを消そうと罠に嵌めるのですが、

冒頭のエヴァの疑問、
何故、エヴァがこんな質問をする様になったのか?
その事に対する答えは、
注意深く鑑賞していないと、気付き辛いので、
スルーされてしまった印象になってしまいます

本作、残念な部分が多い作品ですが、
これも、その一つと言えます。

 

実は、スルーしては居らず、
その答えは、中盤にて明かされます。

途中、唐突に、
エヴァがグループセラピーに参加しているシーンが始まります。

そこでエヴァは、
父親との関係によるトラウマ、
それによって飲酒、薬、に溺れる様になったと告白します。

また、
父を殺してやりたい程憎んだ、
だから、殺さない為に、家族から離れ、
父が死んだから、家族の元に戻ったと言うのです。

 

一見このシーン、
「は?この場面、必要なのか?」と思わせますが、
実は、この作品においては、重要な場面なんですよね~。

 

説明すると、
エヴァは、父を殺したい程憎んでいた。

で、
その実父が死んだという報を受けた為に

アサシンをしていたエヴァは、ターゲットに対し、
「この人達は他人に、どんな恨みを買って殺される様になったのか?」と、
自分も父を殺したがっていたが故に、その経緯が気になるようになったのですね。

 

いやぁ、分かりづらい。

作品のテーマをストーリー描写で表現するのが、良い映画。

しかし本作は、
登場人物の説明台詞で表現しているから浅いというか、
観客が物語に感情移入する事を拒否してしまっている
のですね。

せめて、過去の回想シーンで、
父との関係を描いていれば、大分変わっていたと思われます。

 

家族関係と言えば、
実父を殺したい程憎んでいるエヴァは、
デュークに父親像を見出し、
そこには、疑似的な親子関係が成り立っていると思われます。

そして、
サイモンがエヴァを目障りに思っているのは、
アサシンとしての適正よりも、

デュークの一番弟子だった(と自任する)サイモンにとって、
実際の一番の愛弟子であるエヴァに対し、
嫉妬していたという側面が最も大きいように思われます。

つまり、
俺はデュークの長男なのに、
末っ娘のエヴァを可愛がりやがって!と、
疑似家族内での嫉妬と力関係の愛憎が渦巻いているのです。

 

要するに本作は、
二重の家族を持つエヴァが、
しかし、どちらにも居場所を持つ事が出来なくなり、

追い詰められて、死に場所を探すという物語であるのです。

 

終盤、
デュークがサイモンに殺され、
その連絡を受けて宣戦布告されたエヴァ。

怒りに燃えて復讐すると、思うじゃないですか。

しかし、
そこでエヴァがとった行動は、

家族と疎遠になっている間に、妹と懇ろになってしまった元カレのマイケルとセックスしようとするのです。

 

これまた、意味不明の支離滅裂の行為であり、
ここから、アクション映画的な、
組織に対する復讐無双が始まると期待していた観客をシラけさせます

 

しかし、
エヴァの心理を理解していれば、
分からないでもないのです。

つまり、
実の家族を捨てて、疑似家族を形成したが、

恨んでいた実父が死に、又、疑似的な父親であるデュークが死んだので、
疑似家族を続ける必要は無くなり、

元々の家族関係に戻ろうとした、
故に、元カレは自分のモノだと考えても良いじゃないと思い、行動した
という訳なのです。

 

いやぁ、分かりづらい。

 

本作は、
実父との関係、
デュークとの関係、
エヴァ自身のアル中、ヤク中時代、

その全ての過去の描写を、
言葉少なな説明台詞で済ましている所に問題があると感じます。

勿論、
過去回想を挟まない、
過去を多く語らず、
観客の理解力と推測に委ねるというのが、本作のスタイルだとは理解出来ます。

ですが、そのスタイルは結果的には、
観客に作品の内容自体を伝える事に失敗しているのだとしたら、

映画としては、失敗を意味するのではないのか?
私はそう思ってしまいます。

 

 

これは面白くなる、と思って作り始め、

キャストも、豪華なものを揃えた。

でも、出来上がった作品は陳腐だった。

どうしてそうなったのか?

本作には、
そんな失敗例が数多く詰め込まれており、
そういう部分を検証するという事で、

鑑賞する意味があると言えるのかもしれない、
それが『AVA/エヴァ』という作品なのです。

 

 

 


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