映画『アントニオ猪木をさがして』感想  君の中のアントニオ猪木とは、何ぞや!?

2022年、10月1日、アントニオ猪木は亡くなった。
新日本プロレス50周年、そして、アントニオ猪木没後1年を経て、その記念として製作されたのが本作『アントニオ猪木をさがして』だ。
関係者、そして、ファンにとって、アントニオ猪木とはどんな存在だったのだろうか、、、

監督は、和田圭介。
ドラマパート監督は、三原光尋。

出演は、
アントニオ猪木

オカダ・カズチカ
棚橋弘至
藤波辰爾
藤原義明

原悦生

有田哲平
神田伯山
安田顕

ナレーション:福山雅治

闘病中というアントニオ猪木が、久しぶりにYouTubeに動画を投稿し、
当時、衝撃を受けました。

今、人生最後の戦いに挑んでいるというアントニオ猪木、

その痩せさらばえた姿、
死相が浮かんだ相貌、

サムネイルの画像だけで、
ショックで動画を観られませんでした。

その後、
闘病の経過を報告しつつ、
数本の動画が上げられましたが、

特に、
死去の前後にアップされた動画にもまた、
衝撃を受けました。

思えば、
アントニオ猪木という存在は
生き様を、世間に晒し、

そのレスポンスを受け、

更に、倍のパワーを相手に返してくれる。

徒手空拳でありながら、
人生そのものを武器に、
多くの人間を魅了する

それが、アントニオ猪木なのではないでしょうか。

以下、内容に触れた感想となっております

スポンサーリンク

さて、
本作『アントニオ猪木をさがして』は、
ドキュメンタリー映画。

鑑賞前は、
アントニオ猪木、激闘の名場面集、
加えて、
参議院議員としての活動とか、

アントニオ猪木のアーカイブ映像がメインだろうと、
てっきり思っていました。

ホラ、
TVアニメが映画化されたら、
ダイジェスト版だった、みたいなノリで。

しかし、
本作は寧ろ、その予想とは正反対のものでした。

アントニオ猪木の
関係者、或いは、ファン、

彼達にとっての
「アントニオ猪木」とは一体何ぞや

そういう問いかけの作品だったのです。

アンタビューの途中で、
唐突に対猪木戦を想定し、
シミュレーションを勝手に始めたオカダ・カズチカ。

新日本プロレスで、猪木を知る最後の世代でありながら、
猪木のカリスマに抗い、
脱、猪木を掲げた棚橋弘至。

猪木との思い出を語る
藤波辰爾、藤原義明。

猪木の写真を撮り続け、
そのエピソードを語る原悦生。

猪木ファンである自分について語る、
神田伯山、安田顕 etc…

本作の出演者は、一様に、
「猪木と自分」との関係を語ります。

また、
本作には、謎の再現ドラマが、
時折挿入されます。

え?このドラマパート、必要!?
一見、そう思いましたが、
実は、本作において重要な役割を果たしています。

猪木の激闘に純粋に熱狂する小学生。

意中の女子を元気付ける為に、猪木の言葉を引用する、
ちょっとイタい高校生。

自らの苦境と重ね合わせ、
リング上で危機一髪の猪木に「ガンバレ」とエールを送る中年男性。

一見、同一人物に見えるドラマパートの男性主人公ですが、
それぞれの再現年代を考えると、
別人と考えるのが妥当です。

それが、
何故同一人物の様に思えるのか?

それは、
再現ドラマの主人公が、
ある意味、猪木ファンそのものであるからでしょう。

純粋にマット上の姿に熱狂する、
猪木語録を人生訓と座右の銘にする、
猪木の姿に、自分を投影する etc…

猪木ファンの姿を再現する事で、
観客自身の姿、有り様を再考させる

そういう狙いがあったのではないでしょうか。

本作、
数ある猪木のアーカイブ映像の中で、
一番、時間を掛けているのは、

なんと、
2002年、2月1日の札幌、
「猪木問答」と言われる場面です。

「猪木問答」では、
「お前は何に怒っている!?」と、突然の無茶ぶり質問。
からの、いつものビンタ(闘魂注入)。

しかし、
猪木の事を考えるに、

この無茶ぶりからの問答、自省こそ、
猪木の醍醐味と言えるものであり、

本作そのものが、
「猪木問答」を再現した作品と言えるのではないでしょうか。

正直、
アントニオ猪木のストレートなダイジェスト映画を観たかったというのが本音です。

しかし、
本作『アントニオ猪木をさがして』を鑑賞し、

自分の中での
「アントニオ猪木」とは何ぞや!?と、
自問自答する事で、

改めて、
アントニオ猪木の事に思いを馳せる、
それが、
自分だけのアーカイブ映像となり、

常に、
自らの存在を世間に問い続けた猪木に対する、
アンサーにもなるのかもしれません。

  • 『アントニオ猪木をさがして』のポイント

アントニオ猪木と関係者

アントニオ猪木とファン

アントニオ猪木と自分

スポンサーリンク