映画『暁に祈れ』感想  薬物、ダメ!!絶対!!


 

タイにて裏の試合に出て日銭を稼ぐ英国人ボクサー、ビリー・ムーア。稼いだ金を薬物に費やしていた彼は、警察に捕まり、刑務所に入れられる。タイ語が分からず、後ろ盾も、金も無い。ビリーの悪夢が始まる、、、

 

 

 

 

監督はジャン=ステファーヌ・ソレーヌ
他の監督作に『ジョニー・マッド・ドッグ』等がある。

 

出演は、
ビリー・ムーア:ジョー・コール
プリーチャー所長:ヴィタヤ・パンスリンガム
フェイム:ポンチャノック・マーブグラン
ムエタイコーチ:ソムラック・カムシン
囚人班長:パンヤ・イムアンパイ 他

 

 

 

実質的には「移民法」と言われる、
外国人労働者の受け入れが、とうとう始まりますね。

大した反対意見も起こらず、
あれよあれよという間に決まってしまった。

今後、日本は劇的に変化する、
そんな予感すらします。

 

さて、
皆さんは海外で仕事をした事がありますか?

言葉や文化、習慣の違いなど、
たたでさえ困難が多いですが、

本作『暁に祈れ』の主人公、
英国人のビリー・ムーアは、

最悪の異文化体験をします。
刑務所で。

 

そして、
本作が興味深いのは、

実話ベースだという事です。

 

 

刑務所で起こる、
あんな事やこんな事。

マジ?ガチで言ってるの?

映画だから、ちょっと盛ってない?

そう思いつつも、

タイなら、
刑務所なら、
もしかして事実かも…

 

そう思ってしまうのが、
本作の面白い所。

 

さて、
本作は、実話ベース。

なので、

派手なドラマや、
カタルシスの様なモノはありません。

 

起こっている事が、
割と淡々と描写されて行きます。

しかし、
だからこその説得力、

だらしない人間の末路、
努力を怠った人間の行く末を観る事になるのです。

 

普通の人間でも、
一歩踏み間違えれば、こういう事が起こり得る。

人の振り見て、我が振り直せ、

そういう教訓に満ちた作品、
それが『暁に祈れ』なのです。

 

 

  • 『暁に祈れ』のポイント

新天地でのイキリ具合

薬物、ダメ、絶対!

変わる切っ掛けというものは、自分で作るモノである

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


スポンサーリンク

 

  • 薬物、絶対ダメ!!

本作『暁に祈れ』は実話ベースです。

基本的なストーリーは、
「タイの刑務所に入った英国人が、ムエタイで自分の居場所を見つける」
という話です。

何となく、
漫画『あしたのジョー』を彷彿とするものがあります。

しかし、
本作には、
如何にも映画的なカタルシスとか、
盛り上がる展開みたいなモノはありません。

割と淡々と話しが進んでいくのですね。

その中でも、特に目立つのは、
薬物中毒の描写。

警察に捕まったのも、薬物所持の為、
そして、刑務所に入所した後も薬物を入手し、摂取する事で、
更なる窮地に陥って行きます。

 

本作は、
ストーリー的には、
「ムエタイで人生を取り戻す」風ですが、
テーマとして描かれているのは、
「薬物使用の恐ろしさ」となっているのです。

ひたすら描かれる自堕落さ、
そして、薬物使用の成れの果てに、
まるで、この世の地獄の様な場所に辿り着くのです。

 

本作を観ると、
薬物使用など、絶対にしないでしょう。

陸上で鉄分注射などしないし、
ジャック・ハンマーの様にマックシングになる事もない。

彼達も、本作を観るべきなのだと思います。

(ドーピングと薬物使用を敢えて混同してみる)

 

  • イキリ中学生のメンタリティ

さて、
本作の主人公ビリー・ムーアは、やたらとイキっています。

試合では対戦相手にイキり、
刑務所では刑務官にイキり、
気に入らない事があれば暴れます。

しかし、
大部屋に入れられ、
全身入れ墨だらけの、見るからに危なそうなヤツらに囲まれたら、
存外、大人しい態度を採っています。

このメンタリティは、
自分に馴染みの無い、新しい環境で、
形だけイキっている

態度としては、
反撃が手痛く無い相手にだけは大きく出て

マジでヤバそうな奴の前では、殊勝な様子を見せる。

気弱なヤツが、
自分を大きく見せる為に、必要以上にワルぶっているだけなのですね。

 

印象的なのは、
ボクシングチームの部屋に入った時のシーン。

同部屋のメンバー達は、
「自分が何人殺したか」のエピソードを披露しあっています。

これは完全に、
高校に入ったばかりの新入生が、
同じクラスになった相手に、
自分が中学生の時に、いかにワルだったのかを語るのと、同じメンタリティなのです。

 

本作は、
ムエタイストーリーであり、
薬物の恐ろしさを啓蒙する作品でもあり、

そして、
新しい環境、見知らぬ場所に入れられた人間のメンタリティを描いた作品でもあるのです。

英国人から見ると、
言葉も通じず、
入れ墨だらけのアジア人がウジャウジャいたら、
それはもう、異境なのでしょう。

魔界というか、
何処か、この世の地獄に紛れ込んだ、
そういう心象であり、
それで、極端な凶暴性を発揮せざるを得なかった、
自分は強い、と演出せざるを得なかったのですね。

 

しかし、新しい環境において、
突っ張った態度を採り続ける事は限界があります。

「郷に入れば郷に従え」、
結局は、謙虚な態度で現状を受け入れ、
どんな場所でもベストを尽くす事が、
現状を打破する事に繋がる

そういう事を、本作は訴えているのですね。

 

  • 出演者補足

主役のビリー・ムーアを演じたのは、ジョー・コール

映画の中では、
ベビーフェイスのイケメンですが、
実際に、彼の様な人間が刑務所に入ったら、
真っ先にホラれそうですが、
どうなんでしょうか?

 

刑務所の所長を演じたのは、ヴィタヤ・パンスリンガム

『オンリー・ゴッド』(2013)や
SPL 狼たちの処刑台』(2017)など、

タイで、身分のある人間を演じている場合が多い印象です。

実は、
実写版の『ルパン三世』(2014)にも出演しているそうです。

私は観ていないので、何とも言えませんが、、、

 

そして、ラストシーン。

ビリー・ムーアの父親が面会に来たのかと思ったら、
直後のエンドクレジットにて、
原作者である、ビリー・ムーア本人だと分かります。

一応、父親役、という建前でしょうが、
本人が、本人に会いに来たという、唐突なメタ描写に困惑するシーンでもありました。

 

 

 

ムエタイにて、現状打破をするストーリーでありながら、
メインで描くのは薬物中毒の恐ろしさ。

そして、
見知らぬ環境での立ち回りの様子を描いた作品、
『暁に祈れ』。

無駄にカッコ良い題名ですが、

実話ベースという事も相俟って、
教訓に満ちた作品であると言えるのです。

 

 

現在公開中の新作映画作品をコチラのページで紹介しています。
クリックでページに飛びます

 

 


スポンサーリンク