映画『映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!』感想  意外とガチ!?「動画」の楽しさに満ちた作品!!

今日も今日とて自由気まま、牧場主に飼われているひつじ達は、犬のビッツァーに厳格に管理されながらも、ショーンを中心にいたずら三昧で楽しく過ごしています。
そんなある日、迷子の宇宙人ルーラが現われます。仲良くなったショーンは、彼女を家に帰すべく奮闘を開始しますが、、、

 

 

 

 

監督は、リチャード・スターザック&ウィル・ベッカー
制作は、「ひつじのショーン」のTVシリーズを手掛けた「アードマン」である。

 

登場人物(?):
ひつじのショーン
宇宙人ルーラ
犬のビッツァー
牧場主
ひつじの群れ
3匹の豚
オンドリ
メンドリ
ヒヨコ

エージェントレッド(宇宙人ハンター)
マギンズ(ロボット)
ハズマッツ(黄色い服のモブキャラ) 他

 

 

さて、
ゲーム「ポケットモンスター」の最新作、
「ソード」「シールド」が発売されました。

舞台は、ガラル地方。
イギリスをモチーフにした世界観の物語です。

いやぁ、私なんて、
ポケモン新作の発売と病気が重なった所為で、
一ヶ月もブログを更新せずに放置してしまう始末。

そろそろ、現世に帰還すべきだと思い、
ブログ執筆を再開した次第です。

 

と、いう事で、
ポケモン新作と同じ(?)、イギリス出身の作品である、
本作『映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!』を紹介してみたいです。

 

ひつじのショーン。

その外見を見て、どう思いますか?

顔の横から、口が生えているんですよ!?

ぶっちゃけ、キモいです。
キモ可愛い、じゃなくて、キモいです。
ひつじのクセに、ガッツり二足歩行している部分もキモいです。

でも、
この外見に、

一周回って、愛嬌を感じてくるのが不思議なんです。

 

 

そんな見た目のひつじのショーンですが、

でも、結局、アニメなんでしょう?
つまりは、子供向けだよね?

そう思われるかもしれません。

 

確かに、その通り。

「ひつじのショーン」は子供向けのアニメーションですが、
しかし、
老若男女、洋の東西を問わず、万人が楽しめる作品に仕上がっているのです。

 

まず本作は、クレイ(粘土)人形を使った、
ストップモーション・アニメーション

普通のアニメは、
絵をちょっとずつ動かして、それを繋げて動きを表現していますが、

ストップモーション・アニメーションの場合は、
実際の人形を、ちょっとずつ動かして、
それでアニメーションを作っているのです。

この、手造り感が、良いんですよ。
画面を観ているだけで、飽きないというかね。

 

よく観ると、
登場人物の顔なんかに、
スタッフの指紋なんかがくっついていますし、

勿論、
背景も全部手造りな訳なので、
藁(わら)、木の枝、葉っぱの一枚に至るまで、
その配置に、どんな計算と拘りが込められているのか、

そこに想いを馳せると、
何やら、壮大な感覚に至れます。

 

また、本作は無声映画

「アウ」とか「オオゥ」とか、
ところどころで声が多少入るので、
厳密な意味でのサイレント・ムービーではありませんが、

それでも、
会話でのコミュニケーション、説明無しで、物語が進んで行きます。

しかし、
それでも、ギャグとして面白いし、
状況の把握に、何ら困難はありません。

つまり、

「画」と「動き」のみで、惹きつけている、
そこに、
「動画」としての、根源的な面白さが詰まっているのです。

 

言葉を介さない
そういう表現方法だからこそ、
「ひつじのショーン」は、広い年代、地域、
誰が観ても楽しめる作品になっているのです。

 

まぁ、確かにストーリーは、ありがちな感じの
「迷子の宇宙人を家に送り届ける」という、
いわゆる『E.T.』(1982)そのままの展開です。

そういうベタな題材を扱いつつも、

本作は、
ただ、画面を観ているだけでも楽しい、

ひつじや、犬や、宇宙人や、
怪しいげなエージェントやロボットが動いているだけで、
不思議と、満足出来るのです。

 

『映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!』には、
映画というか、
動画を観る喜びが詰まった作品だと言えるのです。

 

 

  • 『映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!』のポイント

拘りの職人芸が詰まった、クレイ人形でのストップモーション・アニメーションの凄さ

無声映画だからこその、老若男女に伝わる面白さ

会社の縮図(?)のひつじの牧場

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 

 


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  • 研ぎ澄まされた面白さ

『映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!』は、
面白いです。

しかし、何処に面白さを感じるかは、人それぞれでしょう。

そういう懐の深さが、本作にはあります。

 

では、何故アニメ作品である本作に、
それ程の懐の深さがあるのでしょうか?

それは、
本作がクレイ人形でのストップモーション・アニメーションであるという事、
そして、
サイレント・ムービーであるから、
だと思います。

 

本作は、サイレント・ムービー。

なので、その「動き」と「画」のみにて、
ストーリーの展開、意図、
キャラクターの思考を伝えなければなりません。

その為には、
誰が観ても間違えない、
明確且つ、解り易い表現を心掛けなければならないのです。

 

更に言うと、
本作はクレイ人形でのストップモーション・アニメーション。

普通のアニメは「画」の連続で動きを表しますが、
ストップモーション・アニメーションは、
人形をほんのちょっとずつ動かして、
それを撮影して、
動いているかの様に見せているのです。

本作で言うと、
「1秒」を表現する為に、
「25枚」の撮影をするそうです。

スタッフ一人が一日に撮影出来るのは、
実に、「2秒」であると言います。

 

「1秒」を撮影するのに、
これだけの神経を使っている作品。

それ故、
どんな場面の、どんな動きの一瞬を切り取っても、
その全てに、なにがしかの意図、意思が込められているのです。

いわば、全てのシーンに、作り手の意思が込められている、
だからこその、これ程の「分かり易さ」が実現していると言えるのです。

 

「分かり易さ」により、
「動」と「画」に無限の意味合いを含める。

これぞ「動画」の醍醐味に溢れた作品なのです。

 

  • 会社の縮図!?

そんな、人によって、色々な楽しみが発見出来る、
『映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!』。

とは言え、
ぶっちゃけ、ストーリーの部分はありきたり。

ハッキリ言ってしまうと、
ほぼ、『E.T.』そのまんまのストーリー展開をみせます。

まぁ、それでも、
画面のみで面白い作品なのですがね。

 

そんな中でも、
私が注目したいのは、
「ひつじのショーン」という作品を支える「設定」の部分。

牧場主と、犬と、ひつじの関係性です。

この3者、正に、
会社の縮図と言える構図になっているのです。

 

まず、牧場主。

彼は農場の所有者であり、
典型的な「社長」タイプです。

彼自身も仕事をちゃんとしますが、

その一方、
アイディアマン的な部分もあり、
思い付きで新しい事にチャレンジしたりします。

本篇で言うと、
農場にUFOテーマパーク「ファーマゲドン」(FARMAGEDDON:原題にもなっています)を作って一儲け企みます。

しかし、
世に居るの社長の常に漏れず、

牧場主も、
自分のアイディアを開陳して満足し、

その実現の主な所は、
部下に丸投げするのですね。

この無茶振りに泣かされた経験のある人も、
多いのではないでしょうか?

 

そんな丸投げされた無茶振りを受け止めるのは、
中間管理職の、
犬のビッツァー。

上司である牧場主には絶対服従ですが、
部下というか、監視対象であるひつじ達には当りが強いです。

本篇では、
日々の業務(ひつじの管理)は、
きっちかっちり、難なくこなしますが、

牧場主の無茶振りであるテーマパーク作りは上手く行かず、
社長から流された仕事を、
これまた部下に丸投げしてしまうのですね。

上からの仕事を、
さらに下に流すというのが、
まぁ、中間管理職らしい行動というか。

与えられた仕事をするのは得意でも、
突発的なアドリブに弱いのが、中間管理職。

ビッツァーもその例に漏れませんが、

UFOの中に乗り込んだ時、
UFO操縦のマニュアル(?)を発見し、
それを精読しつつ、ショーンを監視するという、
日々の業務に似た「仕事」に自身を没頭させる事で、

UFO搭乗という非日常の中において、
「仕事」という日常を組み込む事で、自分の立ち位置を確立させていた所に、
中間管理職という立場に、骨まで浸っているのだと感じさせます。

 

そんなビッツァーの仕事、監視対象なのが、

部下というかバイト的な立ち位置の、
ひつじの群れです。

ひつじ達は、
まぁ、何する事も無く、
ただ、時期が来たら毛を刈られる事が仕事ですので、
日々、のんべんだらりと、無責任に過ごしています。

行動に責任感と主体性が無いという平社員やバイトの特徴が存分に表われていますが、

その一方、

社長から流れて来た無茶振りをこなす現場作業員であるが故に、
常にアドリブにさらされ、
実際の業務をこなすスキルは、最も高いとも言えます。

本篇では、
実際にテーマパークを作ったのは、ひつじ達ですね。

でもまぁ、
無責任な連中なので、
手抜き工事を行う部分がしばしば見られるのはご愛敬。

 

さて、
そんな「ひつじ達」=「従順な社会の歯車」の中において、

異端児であるのが、
主人公である「ショーン」という存在です。

 

  • 人生を楽しく生きるには

ショーンは「ひつじ」という立場です。

なので、犬のビッツァーの管理対象なのですが、
常に、その管理、監視をかいくぐろうと、
彼なりの奮闘を企みます。

 

フリスビーなどの遊びが禁止されれば、
他の遊びを見つけ、

マズイ飯を強要されれば、
ピザの配達を頼んだり。

その結果、
ショーンはルーラ(宇宙人)と出会うのですね。

 

ショーンを見て思うに、

人生、ただ状況に従順なだけの「ひつじ」に甘んじていると、
それはもう、つまらないものです。

やはり、
「ショーン」の様に、
自分から、面白い事を発見する事が、
人生の充実には必要な事だと言えるのです。

 

確かに、
新しい事にチャレンジしたり、積極的に動いたりすると、
失敗したり、
トラブルを巻き起こしたりします。

しかし、
そこでめげずに、挽回するという行為を行うのも、
重要な事です。

本篇では、
UFO墜落の原因を、ショーンが作ってしまいますが、

そこでしょげずに、

無線を見つけて、
母星に連絡を入れるという挽回策を行うのもまた、
ショーンなのです。

 

人生を楽しみ、
トラブルやすったもんだを起こしつつも、
それでめげずに挽回する。

世の中の人間は、
その大部分が「ひつじ」ではあるでしょうが、

ショーンの様に、
波瀾万丈を起こすと、
「ひつじ」でも人生が楽しくなるのではないか、

『映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!』を観ると、
そんな想いが込められている様にも感じます。

 

 

 

ストップモーション・アニメーションで、
サイレント・ムービーを作る。

「動画」の面白さを追求した形式であるが故に、
老若男女、洋の東西を問わず楽しめる本作。

単に、動き、画の面白さもありながら、
細かい所で楽しめる部分も多数あります。

 

例えば、
「ファーマゲドン」というテーマパークの名前は、
「ハルマゲドン:Armageddon:最終戦争」という大仰なものが元ネタだという所に気付く人は、
それだけで笑えます。

また、その「ファーマゲドン」のスペルが解る人なら、
クライマックス、ロボットに「ファーマゲドン」の電飾看板を投げつける場面で、
ラストの「ON」を何故、投げつけないのか?と疑問に思うでしょう。

その直後、
ロボットが塔から落下する場面で、
「ON」が一緒に落下する事で、
(落下する時、字が反転して「NO」となっています)

サイレント・ムービーにおいて、
叫び声を演出するというアイディアに、
成程と唸らされます。

 

子供向けと侮るなかれ、

全てのシーンに、
丹念に意味を持たせている、
故に、格別に面白い作品、

『映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!』は、
そういう作品と言えるのではないでしょうか。

 

 

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