娘達の母の故郷、南アフリカのサバンナに向かった、医師のネイト・サミュエルズ。家族関係が上手くいっていない娘達二人のご機嫌を取ろうとするが、イマイチの反応。
現地に、旧友のマーティンの歓待を受け、サバンナを案内してもらうサミュエルズ一家。様々な動物を見て回り、とある村に辿り着くのだが、そこには人っ子一人いなかった、、、
監督は、バルタザール・コルマウクル。
『101レイキャビーク』(2000)
『湿地』(2006)
『ザ・ディープ』(2012)
『2ガンズ』(2013)
『エベレスト 3D』(2015)
『アドリフト 41日間の漂流』(2018)等がある。
出演は、
ネイト・サミュエルズ:イドリス・エルバ
メレディス・”メア”・サミュエルズ:イヤナ・ハーレイ
ノア・サミュエルズ:リア・ジェフリーズ
マーティン・バトルズ:シャールト・コプリー 他
昔、何かの漫画で読んだのですが、
(「バキ」だったかな?)
「人間は、日本刀を持って、はじめて猫と互角である」
と言った達人がいるそうです。
事の真偽はどうであれ、
猫でさえ、そう言われている程なのだから、
況んや、ライオンをや!!
本作の題名は『ビースト』。
一昔前、
格闘家のボブ・サップの愛称が「ビースト」でしたが、
この映画に出て来るのは、
勿論、ボブ・サップでは無く、
サバンナの野獣、
しかも、百獣の王たるライオンの事です。
で、
本作をシンプルに言うと、
キレたライオンにストーカーされ、
お父さん、困っちゃう
という映画。
霊長類が相手でも、
ポリスですら、何もしてくれないのに、
相手は野生生物、
しかも百獣の王。
日常の延長で、
バカンス気分でサバンナに来たファミリーが、
一転、地獄に叩き落とされるのです。
まぁ、
本作はいわゆる、
モンスターパニック映画。
とは言え、
ホラー映画のモンスターの様に、
相手に、理不尽な耐久力や、破壊力がある訳ではありません。
あくまでも、
リアリティよりな恐怖。
例えば、
『ジョーズ』(1975)とか、
『クジョー』(1983)とか、
最近で言えば、
『クロール ー凶暴領域ー』(2019)とか、
その辺の雰囲気の作品です。
でも、そんなリアルさが、
本作の面白さでもあるのです。
『ビースト』は、
実際にアフリカの動物保護区にて、
全篇ロケを行っており、
また、
撮影方法も、
「長回し」を多用しています。
これにより、
実際に、自分もそこに居るかの様なライブ感があり、
「志村ー後ろー」じゃありませんが、
カメラがパンしている最中に、
不意に映ったライオンが、
おもむろに突進して来た日にはもう、
観ているだけのハズのコチラも、
のけぞらずにはいられないのです。
シンプルな作り、
しかし、だからこその王道。
サバンナでライオンのストーキングを楽しむ(!?)作品、
それが『ビースト』なのです。
あ、ちなみに、
本作のライオン連中は、全てCGなのだそうです。
いや~、
昨今の技術って、本当に、凄いですねぇ
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『ビースト』のポイント
サバンナでライオンのストーキング!!
オールロケなのに、ライオンは全部CGという驚愕
父と娘達、信頼と愛を取り戻せ!!
以下、内容に触れた感想となっております
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父と娘の信頼回復の物語
モンスターパニック映画『ビースト』。
アフリカの動物保護区で、オールロケを行ったのに、
実物のライオンは出ていなくて、
オールCGという驚愕ぶり。
つまり、
ライオンとの絡みのシーンは全て、
役者の一人芝居というのが驚きなのです。
そういう意味では、
『第9地区』(2009)とか、
『エリジウム』(2013)
『チャッピー』(2015)
『ハードコア』(2016)など、
特殊効果を駆使した作品に沢山出ていた
シャールト・コプリーが出演していたのは、必然なのかもしれませんね。
さて、
そんな本作、
本筋は、ライオンのストーキングに怯える描写ですが、
ストーリー面において語られるのは、
父と娘達が、家族としての信頼を回復させる物語です。
娘達の母親と別居した為、
そのガンの兆候を見逃し、
彼女を死においやった、
家族を見捨てた、
と、
娘に思われているネイト。
確かにね。
事実だけを見れば、そうだよね。
しかし、
人と人との関係は、
理想通りには成らないのが、現実。
それが、愛する人であっても、
お互いにコミュニケーションが取れるからこそ、
意思疎通に齟齬が起きる事も、よくあります。
後から考えても、
何が悪かったのか解らない、
いや、
解っているのですが、
回避しようがなかったという事態が起こり得るという事は、
子供には理解し難いです。
でも、
そこで諦めてニヒルになるのか、
ヤベェって、必死になって関係回復に努めるかで、
その後の家族関係が変わってきます。
本作では、
関係改善に努めますが、
それが上手くいかず、苦慮してしまうという話。
そんな、ちょっとギクシャクした雰囲気の家族が、
不意に、
キレたオスライオンに襲われ、
非日常の恐怖に叩き落とされるという展開です。
さて、
人間、窮地に陥った時に、その真価が発揮されると、
ストリートファイターのリュウも言っていました。
本作では、結構、
ヤベェから、~~はやるな、
と、釘を刺された事をやり、
更には、ドイツもコイツも、単独行動を繰り返します。
ホラー映画では、
モロに、死亡フラグな行動なのですが、
本作においては、結構、結果オーライで事態が好転しています。
何故、単独行動や不用心さが咎められないのか?といいますと、
本作においては、
窮地に陥って、互いを認め合う寛容さを発揮しているのですね。
ホラー映画やSF映画ならば、
単独行動をした仲間が居ようものなら、
「お前、ふざけんなよ」と、ギスギスした空気になります。
命懸けなら、尚更ね。
しかし、本作の場合、
相手の単独行動を、
それが、起きてしまった後に責めもせず、
容認して応援すらしているのです。
それは、信頼関係であり、寛容さ。
本作で、
何故、不仲家族に、そういう絆があったのか?と言いますと、
そこは、
困難において、
例えば、
ライオンに麻酔銃(の針)を素手で打ち込む妹(ノラ)だったり、
知り合いを単独で助けに行ったり、
見ただけで銃の組み立て方を覚えるという機転を利かせた姉(メア)だったり、
怪我人の治療に勤しんだり、
ライオンが徘徊する夜の闇に出て行き、
また、
自らが囮となって、ライオンとタイマンした父(ネイト)だったり、
家族が、
それぞれ、相手の勇気を知るからこそ、
友好関係が築けたと言えます。
作品の前半、
廃校近くのライオンの群れを見学したサミュエルズ一家。
そこで、
オスは、群れを襲う外敵に対処する役目だと知らされます。
その意味で、
ネイトの奮闘は、ライオンのそれであり、
「ディアボロ(悪魔)」と呼ばれたライオンは
群れ(家族)を喪った復讐に駆られているからこそ、
逆に、外敵として処理される対象になってしまっているのです。
この、
ラストシーンでのタイマンで、
人間の方が、象徴としてのライオンの雄の役割を担うという逆転現象が、
ディアボロが、
ライオン外の存在に成ってしまった事の証であり、
それであるが故に、
群れから外れた「ハグレもの」として、他の雄ライオンに狩られてしまうのです。
家族の信頼回復の物語を、
ライオンのストーカーの復讐に絡めて描いたという点で、
なかなか、
凝ったストーリーで、
興味深く、面白かったと、個人的に感じました。
『ビースト』は、
シンプルな作りでありながら、
オールロケだったり、
ちゃんと考えられたストーリーだったり、
そういう、
生真面目な作りだからこそ、
キチンと、エンタメとして面白い作品に仕上がっているのではないでしょうか。
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