映画『ハロウィン KILLS』感想  恐怖の拡散、煽動と暴動の果てに行き着く場所とは…!!

2018年、ハロウィンの夜。
再び現われた「ブギーマン」ことマイケルをデストラップに嵌め、火を放ち、ローリーは因縁に決着を付けた。
…ハズだった。しかし、傷を負い、病院へ向かうローリーと入れ違いに、消防団が鎮火へ向かってしまう。ガスと電気を遮断し、消火作業を行う消防団員。デストラップを免れたマイケルは、彼達を襲い皆殺しにする、、、

 

 

 

監督は、デヴィッド・ゴードン・グリーン
前作『ハロウィン(2018年版)』に続き、本作を監督。
他の監督作品に、
『ボストン ストロング~ダメな僕だから英雄になれた~』(2017)等がある。

 

出演は、
ローリー・ストロード:ジェイミー・リー・カーティス
カレン:ジュディ・グリア
アリソン:アンディ・マティチャック

フランク・ホーキンス:ウィル・パットン
若き日のフランク:トーマス・マン

トミー:アンソニー・マイケル・ホール
リンジー:カイル・リチャーズ
リー:チャールズ・サイファーズ
マリオン:ナンシー・スティーヴンス
ロニー:ロバート・ロングストリート
キャメロン:ディラン・アーノルド

マイケル・マイヤーズ/ブギーマン:ニック・キャッスル&ジェームズ・ジュード・コートニー 他

 

 

今年の秋は、ホラーの秋。

死霊館 悪魔のせいなら、無罪。
キャンディマン
『ハロウィン KILLS』(本作)
アンテベラム
マリグナント 狂暴な悪夢
ダーク・アンド・ウィケッド
ラストナイト・イン・ソーホー

と、連続して公開されるホラー映画の中でも、
ハロウィンにドンピシャ合わせて来た本作が、
その本命とも言える作品です。

 

そんな本作、
「ハロウィン」シリーズの12作目であり、

立ち位置としては、
一作目の『ハロウィン』(1978)の直接の続篇として制作された、
前作の『ハロウィン(2018年版)』から続く作品となります。

パリピのコスプレSEXナイトなイメージの、
ニッポンのハロウィン。

しかし、
本作の舞台のハドンフィールドは、
再び血の惨劇に塗れる事になるのです!

 

第一作目の『ハロウィン』は観ていなくても大丈夫ですが、
ストーリー的に続いている、
前作である『ハロウィン(2018年版)』は観ている事が推奨されます

しかし、作品のテーマが興味深いので、
本作は単独でも、ノリで楽しめる構成となっております。

 

さて、
前作は予想以上のヒットとなったようで、
アメリカのホラー映画のオープニング興行収入としては、
IT/イット”それ”が見えたら、終わり。』(2017)に次ぐ成績だったとのこと。

これを受けて、
当初の予定通り、
『ハロウィン(2018年版)』
『ハロウィン KILLS』(本作)
『ハロウィン ENDS』(2022年公開予定)の三部作での公開となります。

なので、ストーリー的には、
本作のみでは、完結していません。

 

で、です。

前作『ハロウィン(2018年版)』は、
ホラー映画の続篇企画として完璧に近い内容で、
ぶっちゃけ、綺麗に完結したので、
その、更に続篇は、蛇足ではないのか?と思う所がありました。

「前作で倒したハズの殺人鬼が、実は生きていた!!」
的な展開は、
往年の1980年代~90年代のホラー映画シリーズのご都合主義展開を思い出しますし。

なので、
期待半分、不安半分で観に行った訳ですよ。

 

これが、再び、凄く面白かった

同じ「ブギーマンのホラー映画」を扱いながら、
本作は、前作とはテーマを変えて作っていました。

そんな本作で語られるテーマとは、

ホラー映画における、
モンスター、恐怖とは何か?

 

というモノです。

 

前作の『ハロウィン(2018年版)』は、
面白かったのは、面白かったですが、

ブギーマンが、
あんまり人を殺さなかったのが、
若干、消化不良気味でした。
あまりにも不謹慎な発言ですが、映画の感想での発言として見逃して下さい

それに対して本作は、
スラッシャー映画の本領発揮、

あんこパンパンの鯛焼きの如くに、
頭から尻尾まで、
殺戮を繰り広げます

この時点で、
既にホラー映画ファンとしては満足感があります。

 

そして、かつて、
40年前の第一作目の『ハロウィン』にて、
ローリー以外に生き残った登場人物であり、
他の「ハロウィン」シリーズでも、しばしば登場するキャラクターが、

本作では、オリジナルキャストにて復活出演しています。

そんな彼達が、
再び惨劇に見舞われたハドンフィールドを守ろうと、
一致団結してブギーマンに対抗するというのが本作のストーリーライン。

 

漫画の「バキ」シリーズでは、

主人公より、
脇役が活躍している時が面白い、と言われています。

本作では、

ホラー映画では、
木っ端として蔑ろにされがちな脇役達が、
大活躍するのです。

 

その扱い方も興味深い所であり、
本作が盛り上がった部分であると言えます。

 

ノリで言えば、
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』(2009)的な面白さがあります。

シリーズものの中間の作品ならば、
盛り上がりに欠けると思いきや、

エンタメのバトルに振り切って、
抜群に面白くなった
そんな印象です。

 

まぁ、ちょっと絶賛で褒めすぎた感がありますが、

そこは、
ホラー映画ファンの戯言と思って下さい。

元々が、
ホラー映画は「B級」映画の括りなので、
その区分における最高級の作品であると、理解して観て頂けると幸いです。

 

『ハロウィン KILLS』なかなかどうして、面白いです。

 

 

  • 『ハロウィン KILLS』のポイント

ブギーマンの殺戮ショー in ハロウィンナイト

恐怖の拡散、煽動、暴動、生贄

恐怖の倒し方とは?

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 

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  • 恐怖の拡散、煽動、暴動、そして生贄

前作『ハロウィン(2018年版)』では、
若干、抑え気味だった殺戮シーン。

本作『ハロウィン KILLS』では、
その鬱憤を晴らすかのような、はっちゃけぶりで、

派手でバリエーション豊かな殺害方法に加え、

マイケル・マイヤーズの
悪趣味かつグロテクスで、
独特のセンス溢れる死体の飾り付け in ハロウィンナイトがお披露目されます。

犠牲者を一息に殺さず、
なるべく、苦痛を長引かせている感じもまた、
残酷極まります。

 

そんな、典型的なホラー映画のモンスターであるブギーマンですが、

本作では、
もう一つ、モンスターが描かれており、
それが、
本作におけるテーマであり、
メインとなっております。

それは「恐怖」そのものです。

 

本作では、
主役のローリーは負傷し、
ある種の狂言回しとして、
ストーリー的には、一歩引いた立ち位置となっております。

それに代わり、
メインのストーリーラインとなるのは、

マイケル・マイヤーズの殺戮シーンと、

そのマイケルに対抗せんとする、
かつての惨劇(1978年)の生き残り達(サバイバー)の活躍です。

 

しかし、
このサバイバーが曲者で、

ハドンフィールドを恐怖に叩き落としたマイケルの帰還を知った彼達は、

「今度こそ、一致団結してブギーマンを倒そう」と、
皆を煽動、

町を巡り、
住民に忠告と協力を促し、
マイケルの被害者で溢れる病院にて決起を促します。

「Evil Die Tonight !!」(悪魔を今夜、殺せ!!)と。

 

しかし、
恐怖に駆られ、集団心理で暴徒化し、
無関係の人間を追い詰め、
死に至らせるのです。

そこで、我に返った登場人物の一人が言います。
「俺達が、モンスターになっちまった」と。

 

狂言回しのローリーは劇中で言います。

「マイケルは、恐怖の象徴である」
「自分が、その恐怖を町に広めてしまった」と、
そして、
「この混乱こそ、マイケルの思う壺だ」と指摘します。

 

本作で描かれるのは、

恐怖=マイケル・マイヤーズと、

その恐怖を過剰に恐れるあまり、
自らがモンスター化し、自滅する人間の業です。

恐怖の拡散煽動暴動生贄
そして、恐怖に屈した末の敗北である自死

この過程を克明に描いた事が、
本作のホラー映画の傑作の所以であると言えます。

 

簡単に纏めると、

拡散:マイケルが再び町に現われたとしるサバイバー

煽動:マイケルに対抗しようと、忠告、協力を促す

暴動:「Evil Die Tonight」と殺人鬼に殺される前に、殺せ!!と暴徒化する集団

生贄:殺戮とは無関係の男を追い詰め、集団心理で殺してしまう

自死:生贄の死によって一度は醒めるが、その罪の贖罪として、再びの生贄としてマイケル・マイヤーズの死を捧げようとするが、逆に殺され、結果として、自死となる

と、いう流れです。

 

ホラー映画における死亡フラグ、

モンスターを過剰に恐れる人、
逆に、モンスターを狩ってやろうと血気に盛る人、

本作では、そこにフォーカスを当て、

「恐怖」に対する、
人間の普遍的で、愚かな反応を描く事に成功しているのです。

 

故に、
その役目は、
最終的に決着を付ける主人公であるローリーでは無く、

本作で、
ある意味主役として描かれる、

敗北が運命付けられている「脇役達」なのです。

 

本作では、
暴動に翻弄された者、
或いは、
恐怖を狩ろうとした者は、
その殆どが、逆に殺されてしまいます。

殺人鬼に勇気をもって対抗して、
活躍するとみせかけたサバイバーや、
煽動に乗ってしまった住民達は、

マイケルの返り討ちに遭う事で、
逆の意味で、ド派手な活躍(死にっぷり)をします。

まぁ、
ホラー映画における、木っ端の脇役としては、
ある意味、正しい活躍の仕方ですが。

 

  • 恐怖をどうやって倒す?

狂言回しのローリーは言います。

「マイケルは、本来なら死ぬ傷を負って、何故まだ生きているのか?」
「恐怖は、暴力では倒せない」と。

 

これは、
ホラー映画の「お約束」であり、
制作者も観客も、敢えてツッコまずにいた部分なのですが、

そこに、本作ではメスを入れようとしています。

恐らく、
その決着を付けるのが、
次回作の『ハロウィン ENDS』(仮題)でのローリーの役割だと思われます。

 

血と暴力によっては、
逆に「恐怖」に力を与えるばかりで、倒す事は出来ない。

それは、
本作にて描かれている通りです。

「それでも、今夜マイケルを殺さなくてはならない」
そう、ローリーは言いますが、
では、
どうすれば、恐怖を倒す事が出来るのでしょうか?

 

血と暴力では失敗。

法と司法の失敗の結果、
マイケルは再びハドンフィールドに現われた。

警察は、
暴徒の前に無力化してしまった。

「愛」でもって、恐怖を倒すか?
それは、
カレンが犠牲者を救えなかった事で失敗している。

 

本作において、
脇役達の主役的な立ち位置なのが、
ローリーの娘のカレンです。

彼女のタイムラインそれが、
恐怖に敗北する、その過程そのものとも言えます。

彼女は、
夫の死に困惑し、
出奔した娘に悩み、
尚も動こうとする母を宥めつつ、
暴動で無関係な人が襲われるのを防ごうとして失敗し、
その根源であるマイケル・マイヤーズをリンチの輪(デストラップ)に誘い込みますが、

最後には、
マイケル邸にて、
窓に反射する自分の現し身、それは、
血と暴力に頼ってしまった自分の心の闇=マイケル・マイヤーズを見てしまい、
死に至る事になります。

 

マイケル邸にて、
マイケルは窓から何を眺めていたのか?

作品の冒頭から続く問いかけであり、
フランクはそれを、
「マイケルは、窓に映る自分の、心の闇を見ていた」と喝破しますが、

それが、
ラストにて伏線として回収される様は流石でした。

 

マイケルが、心の闇の「現し身」ならば、

その反射である、
自分自身が死ねば、
相手諸共、消滅する?

ローリー自身も、
そんな相討ち狙いの「死なば諸共」発言をしていましたが、
そんなオチになるでしょうか?

そもそも、自らの死を犠牲とする事が、
果たして解決になるでしょうか?

 

では、
恐怖の「封じ込め」はどうでしょうか。

フォークロア(民間伝承)は、
事の詳細は敢えて禁忌として隠し、
教訓という形で、
本質のみをボカして後の世に伝えているという節があります。

つまり、
不都合な情報を、知らんぷりとして忘却してしまおうという訳です。

 

しかし、それは、
時間の経過が必要ですし、

何より、
ホラー映画というものは、
もとより、その封じ込めた禁忌が暴かれる事で物語が始まるものなので、

そういう意味では、
予め、無効化されているとも言えます。

 

恐怖が自らの「現し身」というのなら、

その恐怖自体を受け入れる事が肝要なのでは?

しかし、
いくら多様性が叫ばれる現代においても、

まさか共同体の中に、
殺戮モンスターを許容する場所などあるでしょうか?

 

マイケルが、
マイホームに固執するというのなら、
そこに、引き籠もってもらうか?

それとも、マイケル邸自体を消失させる事で、
恐怖の消失を狙うのでしょうか?

 

考えれば考える程、
解決策が遠のく感じがします。

う~ん、
シンプルに対決して、
決闘で決着かもしれませんが、

もしかして、
やっぱり共倒れにて、
恐怖の伝説を、
犠牲による英雄譚にすり替える線なのかもしれません。

 

ただ、
恐怖に対抗するのは、

暴力では無く、

勇気と無我、そして無私。

次回作で描かれるのは、
そんなローリーの姿なのかもしれません。

 

 

本作は、

煽動により、
小さな声がよってたかって集まる事で、
共同体の中の弱き者、
叩きやすいものを見つけた時、

自らの恐怖を誤魔化す為に、
相手を生贄として死ぬまで叩くモンスター

=無責任の群集心理を描いています。

 

これは、現代の社会の病巣を反映したものであり、

いわゆる、
アメリカの元大統領のトランプの煽動だったり、
プロレスラーの木村花さんの自殺だったり、
小室さん叩きだったり、

それこそ、
枚挙に暇が無い程、繰り返されています。

 

恐怖に屈するという人間の業を描いた『ハロウィン KILLS』。

完結篇の次回作で、
どの様な展開を観せてくれるのか?

今から、期待して待ちたいです。

 

 

コチラは、前作の『ハロウィン(2018年版)』です

 

 

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