映画『ブラックパンサー』感想  自己保全とノブレス・オブリージュ!!

 

 

 

太古の地球に落ちた隕石によりもたらされた「ヴィブラニウム」。この鉱石によりもたらされる超科学技術を持つ国、ワカンダの若き王となったティ・チャラ。彼は自分の国王就任の第一の仕事として、門外不出の「ヴィブラニウム」を密輸したユリシーズを追う事にするが、、、

 

 

 

 

監督はライアン・クーグラー
監督作に
『フルートベール駅で』(2013)『クリード チャンプを継ぐ男』(2015)がある。

 

主演のティ・チャラ/ブラックパンサー役にチャドウィック・ボーズマン
マーベル・シネマティック・ユニバース作品には
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)から参加、
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)にも出演する。

他、出演作に
『42 ~世界を変えた男~』(2013)
『ジェームス・ブラウン~最高の魂を持つ男~』(2014)等がある。

 

共演に、マイケル・B・ジョーダン、ルピタ・ニョンゴ、ダナイ・グリラ、マーティン・フリーマン、アンディ・サーキス等。

 

本作『ブラックパンサー』は「マーベル・シネマティック・ユニバース」の作品群に属する一作です。

ですが、「マーベル・シネマティック・ユニバース」の単品作品が凄いのは、

前知識なし、
この作品のみで十分アクション映画として面白い

 

事です。

勿論、「マーベル~」の映画を見続けている人は、細かい設定も気付けて面白いのです。

初見でも、マニアでも、それぞれの立場で楽しめます。

 

ストーリーの方も、単品なだけあってテーマ的に独立した作品として楽しめます。

超科学技術大国であるワカンダは、自身のその素性を隠蔽し、対外的にはアフリカの小国として、ほぼ鎖国状態という国際的な立場をとっています。

しかし、自らの技術力の根幹をなす「ヴィブラニウム」が武器商人によって密輸され、兵器として転売されるに至って新たなる選択を迫られる事になります。

若き王が何を決断し、国をどう導くか。

 

この部分の葛藤が大変興味深いです。

抜群の安定感を持つ「マーベル・シネマティック・ユニバース」の新作、『ブラックパンサー』。

万人が楽しめるアクション映画です。

 

*上映前に流れる『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の予告編に、『ブラックパンサー』本篇のネタバレ映像があります。
気になる人は目を閉じている事をオススメします。

 

  • 『ブラックパンサー』のポイント

技術は独占するべきか、公開するべきか?

国王、CIA、テロリストと立場の違う人間同士の主張

韓国の路上で大破する二台のレクサス

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • まさかのネタバレ!?上映前予告編!!

本作『ブラックパンサー』は「マーベル・シネマティック・ユニバース」の作品群の一作です。

また、時を開けずして、シリーズの総集篇となる『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』が公開されます。

そして、本作の上映前に『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の予告編が流れるのですが、
何とそれが『ブラックパンサー』本篇のネタバレとなっているのです!!

前代未聞である。

ぱっと見では気付きませんが、
『ブラックパンサー』を観ている内に予告編がネタバレだったと気付き、本篇のオチも分かってしまいます。

なんてこったい。

では、その点を解説してみます。

『インフィニティ・ウォー』の予告編で、キャプテン・アメリカを先頭に皆がダッシュして森から草原へと出るシーンが映ります。

そのシーンに、
キャプテン・アメリカの他に、ハルク、ウィンター・ソルジャー(腕付き)の姿が見えますが、
さらにブラックパンサーとオコエ(親衛隊長、野球選手ではありません)の姿も見えます。

つまり、
1:ワカンダが鎖国を解いて出陣する
2:サブキャラのオコエは今回死なない

と、一瞬でわかってしまいます。

特に「1」は、本作のテーマに関わる問題なので、こんな形でネタバレされたのは結構ガッカリです。

(まぁ、物語的には予定調和ではありますが)

 

  • 技術は公開すべきか、秘するべきか?

本作『ブラックパンサー』にてストーリー上のテーマとなっている事は、「ノブレス・オブリージュ」。

「ノブレス・オブリージュ」とはフランス語。
意味は、「身分の高いものには、それ相応の義務が伴う」といった感じです。

身分階級制において貴族が果たす義務についての言葉ですが、
経済的富裕層についても求められて語られる事が多い言葉です。

つまり本作に当て嵌めるなら、
他より優れた技術があるのなら、それを駆使して世の中をもっと良く出来るのではないのか?
他国に対して科学技術で優位性を保つ為に世の惨状を看過するのは、間違いではないのか?

という事を問うているのです。

ユリシーズ・クロウはまだしも、
エリック・キルモンガーが父から受け継いだこの問いは、相手がテロリストであるとしても、無碍には捨て置けない問題提起です。

「ヴィブラニウム」という鉱物資源を独占し、他国を遙かに上回る技術大国であるワカンダは、
対外的には鎖国であるが故に、世界とは「相互不可侵」の状態を保ち、自国を守ってきました。

確かに、国としては、自らの優位性を確保する為、技術や資源を独占する事は正しい判断です。

しかし、スケールを大きく見た場合、
その発想は分野の発展を失する閉じた思考であると言えます。

自分の優位性の確保の為なら、他人の未熟を敢えて看過するという態度だからです。

それよりも、
大いなる力には大いなる責任が宿る」という『スパイダーマン』でも繰り返されたテーマを理解し、
人より先んじ、力のあるものは、義務を果たす事で社会をより良く出来るという事を心掛けた方が、
結局は社会全体が発展し、ひいては自らも安泰となるのではないでしょうか。

 

  • 奇襲、情報独占の優位性

ティ・チャラはキルモンガーの暴虐を止めますが、彼が起こした問題提起は真摯に受け止め、ワカンダの鎖国を解く決断をします。

オーバーテクノロジーをいきなり得る世界が何処に向かうのか?

その中で、ワカンダという国が如何にしてリーダーシップを取っていくのか?

今後のストーリーは社会SFとして面白いものになりますが、
実際の世界ではこの様な事はまず起こりそうにありません。

情報、技術、権力、資源の独占は、即ち「力」であるからです。

それは、国単位で考えると、現実では放棄するなどあり得ませんし(自分は持っていても、人には放棄する様に促す「核」とか)、
もっとミクロに見ると日々の人間関係においても散見される事です。

 

先日(2018/03/02)も、WBCボクシング・バンタム級のタイトルマッチにて、
ルイス・ネリは意図的に体重超過する事で、「不戦敗を選択してまで確実に勝ちに拘る」という方法をとりました。

これは、
体重別で階級が分かれる競技で、体重オーバーで試合を行うという暴挙にて、相手の「想定外の攻撃」を仕掛けているのです。

こういう「想定外からの攻撃」、つまり「奇襲」は特に対人戦においては大変有効です。

 

ルイス・ネリは反則ですが、
そうでなくとも、相手の知らない技術、戦略にて、
相手の対策不足を利用して勝利を得るというのは格闘技のみならず、
囲碁、将棋、対戦格闘ゲーム、ポケモン対戦など対人ゲームでも有効な常套手段です。

しかし、そういう「奇襲」は、「対策の対策」によって忽ち無効化されます。

結局は、地力を養わないと、対戦では勝てなくなるのです。

その地力を得る為には、全体的な情報共有によるレベルアップが一番有効ですが、
人は一時の有効性を手放す事が出来ず、情報共有はなかなか上手くいきません。

 

仕事においても、
部下に方法や技術を教えない上司なんてものは普通に居ます。

「習うより慣れろ」「自分で失敗して覚えた方が身に付く」という言い訳で後輩を育てる事を拒否する輩の本音は、
コイツに自分の知っている事を教えて、自分より有用性を発揮されたら、自分の立場が危うい」と、自己防衛を発揮しているのです。

 

  • 出演者補足

まず、エリック・キルモンガーを演じたマイケル・B・ジョーダン
彼は監督の常連で、過去の二作品にも出演しています。
ムキムキマッチョをさらした彼の今後にも期待ですね。

そして、ユリシーズ・クロウを演じたアンディ・サーキス
CGの中の人」として、
「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのゴラム
『キング・コング』(2005)のキングコング
『GODGILLA ゴジラ』(2013)のゴジラ
「猿の惑星」シリーズのシーザー
「スター・ウォーズ」シリーズのスノーク
などなど、誰もが観たことあるキャラクターをモーションアクターとして演じています。
本作では珍しく素顔で登場、ある意味貴重です。

 

 

 

自分の失敗を子供に教えない親。
テストの「ヤマ」を友人に教えないクラスメイト。

「優位性の確保」は日常の些細な事でも、いくらでも思い当たりますね。

そして『ブラックパンサー』では、明らかにトランプ政権下での米国政府の方針についてもの申しています

自国の利益を顧みず、ウザいくらい他国に干渉してきた米国。

しかし、現在はそのウザさが利益重視に偏重しているきらいがあります。

そんな現在のアメリカとは全く別の道を選択したワカンダ。

もし、もっと情報を共有し、
強き者が弱きを助け、「ノブレス・オブリージュ」という精神で行動できたなら、

世界は今よりもっと素晴らしかろうに、、、

そんな事に思いを馳せる映画、それが『ブラックパンサー』なのです。

 

 

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