かつて、警察の爆発物処理班にてエース級の活躍をしていたフォン。しかし彼は、勤務中の事故で左足を失ってしまう。
体を鍛え、義足でも問題無く任務が出来ると確信したフォンは現場復帰を希望したが、上層部はこれを却下。怒りも露わに過激に抗議するフォンから、友人や恋人も距離を置くようになり、彼は警察を辞職し、行方をくらます。
数年後、爆弾テロの現場にフォンの姿が見えた、、、
監督は、ハーマン・ヤウ。
香港の映画監督。
監督作に、
『八仙飯店之人肉饅頭』(1993)
『エボラ・シンドローム 悪魔の殺人ウィルス』(1993)
『タクシーハンター』(1993)
『イップマン 誕生』(2010)
『イップマン 最終章』(2013)
『SHOCK WAVE ショック・ウェイブ 爆弾処理班』(2017)
『ホワイト・ストーム』(2019) 等がある。
出演は、
フォン:アンディ・ラウ
ドン:ラウ・チンワン
ポン:ニー・ニー
マー:ツェ・クワンホー 他
かつて、
アーノルド・シュワルツェネッガーが主演の映画『トゥルーライズ』(1994)という作品があり、
その製作費は120億円。
「一分一億円」と言われた作品です。
監督は、ジェームズ・キャメロン。
アメリカでテロリストと戦う映画ですが、
色んな意味で、
現在では不可能な作品と言えます。
それはそれとして、
『バーニング・ダウン 爆裂都市』です。
本作は、
同監督、同主演の『SHOCK WAVE ショック・ウェイブ 爆弾処理班』という作品を、
設定とストーリーをリセットし、
莫大な製作費(44億円)を投じ作り直した作品だそうです。
つまり、
題名的には「続篇」ですが、
作品としては「リメイク」作と言えそうです。
私は前作を観ていないので、
本当にそうかは分かりませんが、
その謳い文句を信じるしかないですね。
そんな本作、
つまり、
元ネタがあるって事ですが、
その影響でしょうか、
派手で、ストーリーは意外性があって、
テーマも面白いけれど、
色々と「惜しい」ところもある作品
と思いました。
上映時間は2時間超え、
しかし、
意外とあっという間に時間は過ぎます。
それもそのはず、
何か、結構端折っている、
バッサリ演出、編集をしています。
場面の切り替えが、やや唐突。
大人なら、
内容を推し量って、
「成程、過去の回想か」「こことここの時間軸が繋がっているのね」と、
判断する事は可能ですが、
映画を観慣れていない人は、
ちょっと、混乱してしまうかもしれません。
ですが、
そのストーリー展開は、
結構好みです。
以下、内容に触れた感想となっております
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フォンは、元は爆弾処理班のエースでありながら、
片足を失った事で、
上層部からは事務作業を命じられます。
それなら、
隊員の体力測定テストで試して下さいと懇願するも、
「障害者を使って、失敗されたらコチラが困る(察しろや、ボケ)」と言われます。
いやぁ~
現代においても、
こんな事言う時代錯誤な方が居るもんですねぇ。
ビックリしちゃいました。
勿論、フォンもブチ切れ、
「仕事中の事故(で足を失ったん)だぞ!!」
「一度位チャンスを与えても良いじゃないか!!」と、
上司に怒鳴り散らします。
「お前が掛合わなかったんだろう!?」と親友のドンに絡んだり、
「その足じゃ、任務は無理でしょ」という恋人のポンには、
「お前まで、そんな事言うのか!!」と八つ当たり。
最早、
世の中全てに噛みつく、
十五歳の反抗期の狂犬の様な暴れっぷり。
で、
警察を辞職して、
テロリストとして活動する様になってしまうんですねぇ。
ぶっちゃけ、
判官贔屓というか、
会社に都合の良いように使い捨てにされ、
壊れたら、はい、さようなら、と
ほっかむりを被って知らんぷりされるのは、
実際、よく有る事です。
よく有る事ですが、
いざ、自分の身に起こったならば、
愕然として、目の前が真っ暗になります。
多くの人は、
そこで諦めてしまいますが、
バイタリティのある人は、
ここで逆に、叛逆心を駆り立ててしまうんでしょうね。
なので、
「長いものには巻かれろ」的な日本人の感覚からすると、
勿論、テロは駄目ですが、
諦めない心で、
自分じゃなくて、
世界を変えてやる!!みたいな
「傍迷惑なバイタリティ」を見せられると、
応援したくなっちゃいますよね。
本作、
フォンが、
「ホテルの爆発現場で記憶喪失状態で発見される」という状況を利用し、
ストーリーの時間軸を前後させ、
また、
記憶自体に、
虚偽と真実を巧妙に織り交ぜている所に、
展開の面白さが詰まっています。
警察を辞職してから数年後、
テロリストとして現われながらも、
記憶喪失状態になったフォン。
それを見た、
元恋人のポンは、
「偽記憶」を植え付ける事で、
自分(警察)に都合の良いように利用しようとします。
つまり、
フォンはテロリストなのですが、
「潜入捜査でテロの内偵をしている」という
「偽の経歴」を作って、
それを後催眠にて思い込ませて、
テロ組織「復生会」の情報を得ようとしているのです。
まぁ、いわゆる、洗脳ですね。
組織を恨んで去った者を、
今度は、
組織の為に、偽の記憶を植え込んで、利用しようとする。
この極悪非道ぶりが、
堪りません。
フォンは、
頭を打った事で、
海馬の記憶領域に損傷を負ったという設定です。
過去のエピソード記憶の多くは失っても、
歯磨きや、車の運転など、
習慣として体で覚えた行動は、覚えていると、
作中では説明されます。
そんなフォンは、
結局、どっちを選ぶのか?
世をはかなんだ、テロリストとしての道か?
警官として、人の為に尽くす道か?
ここで、
野蛮な行為だが、
信念に生きるテロリストよりも、
他人に利用され、オモチャにされても、
敢えて、警官としての使命を全うする道を選ぶ事に、
儚さと無情さを感じますね。
と、こう書くと、
無類の名作の様に思えます。
いや、
確かに、本作は面白いのですが、
中途半端にお金を掛けているので、
泥臭さが無いけれども、
超高級でも無い、
みたいな、
どっちつかず感があるんですよねぇ。
肉体を使った追跡アクションは凄いですが、
ガンファイトとか、
CGの爆破シーンとか、
ん~、迫力あるけれど、
なんか、ゲームの1シーンを観ているようで、
イマイチ乗れ無いなぁ、と、
個人的には思ってしまいました。
CGのシーンは、
冒頭の核爆発が、一番凄かったのが、
その後のシーンが目劣りする要因でもあるでしょう。
で、
その冒頭で、
「この爆破を防いだ警官が」云々と言っているので、
まぁ、これがネタバレとなり、
「どうせ警官を選ぶんでしょ」と観客にモロバレで、
フォンの悲壮な選択に緊張感が無かったりします。
まぁ、お約束の展開なのですが、
そこは、伏せていて欲しかったなぁ、と思いましたね。
ストーリーや構成や、
テーマは面白い。
でも、
ちょこちょこ、
気になるツッコみ所がある。
評価が難しい作品である『バーニング・ダウン 爆裂都市』ですが、
本国の興行収入は良いので、
これはコレで、アリなのではないでしょうか。
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『バーニング・ダウン 爆裂都市』のポイント
記憶の混濁と時間軸をずらしたエピソードを散らしたストーリー展開
テロリストとなるか、警官となるか
派手だけど、何処か、見劣りするCG
前作であり、リメイク前の作品である『SHOCK WAVE ショック・ウェイブ 爆弾処理班』が、コチラ
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