映画『ブッシュウィック ー武装都市ー』感想  リアルな臨場感!!ある日戦場が突然に!!

 

 

 

大学院生のルーシーは、恋人を家族に紹介する為に、故郷のニューヨーク州・ブッシュウィックまでやって来た。しかし、地下鉄の駅に降り立った二人は、何やら様子がおかしい事に気付く。そして、突如静寂を破る様に、炎上する男が走って行った、、、

 

 

 

 

監督はジョナサン・ミロ & カリー・マーニオン
他の監督作に
『ゾンビスクール!』(2014)がある。

 

出演は、
ルーシー:ブリタニー・スノウ
スチュープ:デイヴ・バウティスタ 他。

 

 

 

「トンネルを抜けるとそこは雪国であった」

とは、川端康成の『雪国』の書き出しです。

そして、本作『ブッシュウィック ー武装都市ー』はさながら、

「地下鉄から抜けるとそこは戦場であった」

 

そんなポエムをつぶやきたくなる導入部です。

 

里帰りしたハズが、

地上では、
謎の武装集団が、街の住民を拘束、射殺している!!

火の手が上がり、
銃声が鳴り、
無法者が街を闊歩し、
雰囲気がひりついている。

突如、非日常に突き落とされ、
強いられるサバイバル。

 

本作は、その様子を描写しています。

 

そして、
本作の特徴というのは、

長回しが多い事です。

 

公式ホームページでは、
「全篇10カット!」
という触れ込みです。

まぁ、
実際は、
ヘリによる空撮シーンでカットが何回もかかっているので、

それを除いた場面が、
10カットほど(私が数えた所、11カットでした)
という訳です。

しかし、
上映時間、94分で、この長回しの連続、

圧倒的な臨場感があります。

 

まるで、戦場を体感する映画、

『ブッシュウィック ー武装都市ー』は、そういう作品なのです。

 

 

  • 『ブッシュウィック ー武装都市ー』のポイント

日常が突如崩壊する恐怖

長回しの連続による、臨場感

危機に直面した時の、「個」の無力さ

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • 圧倒的臨場感のモキュメンタリー

『ブッシュウィック ー武装都市ー』は、
その冒頭から、
突如戦場におけるサバイバルが始まります。

見慣れたハズの故郷の街が、
見知らぬ他人に蹂躙される、非日常。

平和な日々が突然崩壊した時、
人はどうなるのか?

 

その様子を長回しで撮影する意味。

しかも、
偶に挟まれるカットも、
ドアを抜ける場面だったり、
屋内から屋外へ出る場面だったり、

カットの接続が自然になる様に工夫されています

それはさながら、
ドキュメンタリー。

言うなれば、本作は、
「モキュメンタリー(フェイク・ドキュメンタリー)」の新しい形と言える作品なのです。

 

本来の「モキュメンタリー」は、

映画で例えるならば、
『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』、
『REC/レック』、
トロール・ハンター』の様に、

架空の事件や虚構の出来事を、
ドキュメンタリー形式で撮影したものであり、

あくまでも、その作品を撮影する
カメラマンという第三者目線が存在するという作品です。

 

一方、本作においては、

観る前には、

作品が虚構であるという前提はありませんし、

作品内に、カメラマンの存在というものも確認されません。

しかし、
長回し(カット編集が無い)を連続で観せられる事はさながら、
リアルなニュース映像を観ているような錯覚に陥ります。

それどころか、
本作は、
段々自分がその場に居るかの様な

つまり、
カメラマンの目線が自分の目線であるかの様な感覚になってきます。

 

舞台は、
突如戦場になった、普通の街。

そこで逃げ惑うルーシーとスチュープの後に追いすがる様な感じで、
自分も映画を体験する事が出来るのです。

 

カメラマンの存在を意識させない、
長回しによるドキュメンタリー的な雰囲気の創出、

これが、
まるで自分もその場に居るかの様な臨場感を演出する。

こういう、
新しい形式のモキュメンタリーを作り上げたという点において、

『ブッシュウィック ー武装都市ー』は、
希有な作品であると言えるのです。

 

  • 戦場における、個の意味の消失

『ブッシュウィック ー武装都市ー』は、
シビアな作品です。

その展開からラストに至るまで、
主人公といえども容赦の無い状況に陥ります。

 

本作は、
いわゆるアクション映画ではありません。

なので、
テロリストを打破するヒーローの存在なんてものはありません

あくまで、
戦場に放り込まれた一般人を描いた作品、

個人の動きが大勢に影響を与える事は無く、
ただ、状況に応じて逃げ切る事を最優先にするしか無い

この現実を突き付けてきます。

 

平時においては、
個人の人権は尊く、それを保護しなければなりません。

しかし、

一旦日常のルールが崩れると、
いとも容易く「個」の意思は無視される。

平和な日常に慣れきった
我々、日本人においては、

この現実を努々忘れる事なかれ、

そんな事を本作を観ている間、つらつらと考えてしまいました。

 

 

 

長回しの連続が、
圧倒的な臨場感を演出し、
まるで自分がその場に居るかの様な感覚を生じさせる『ブッシュウィック ー武装都市ー』。

しかし、
そこで体験するのは、
日常を突き破って突如現出する戦場という現実。

その厳しさを最前線で目撃する作品だと本作は言えるのです。

 

 

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