夜明け前、現金輸送車を狙った強盗が発生。強盗団は手慣れたチームワークで手際よく警備員を制圧するが、ふとした弾みで銃撃戦に突入。駆け付けた警官隊ともドンパチを初めるが、火力の差で圧倒し、強盗団は現場から逃走した、、、
監督はクリスチャン・グーデガルト。
脚本家を経て、本作が初監督作。
出演は、
ニック:ジェラルド・バトラー
レイ・メリーメン:パブロ・シュレイバー
ドニー:オシェア・ジャクソン・Jr.
他の出演者に
カーティス・”50セント”・ジャクソン
エヴァン・ジョーンズ 等
邦題は『ザ・アウトロー』。
アウトローって、読み的に「あいうえお」だから
定冠詞の「the」がついたら、
発音は「ジ」じゃないの?
とか思ってしまう私は英語ニワカなのでしょうか?
原題は『Den of Thieves』
翻訳すると、「盗っ人の巣」とでも言いましょうか?
そう、
本作の登場人物は、まさに盗っ人ばかりというか、
ワル者ばかり。
しかも、チョイ悪じゃない、
極ワルオヤジのイキリ合戦、
悪 V.S. 悪 の意地の張り合い、
そんな感じの作品です。
現金輸送車を襲った強盗団。
しかしその実、
その現金輸送車は「空荷」だった。
捜査を担当する地元のロサンゼルス群保安局重犯罪特捜班は頭を捻る。
何故、空の輸送車を襲ったのか?
特捜班のリーダー、ニックは、
数々の未解決強盗事件の主犯と見られるレイ・メリーメンが、先日刑期を終えて出所していた事に着目する。
再び、レイが活動を始めたと推測したニックは強引な捜査を敢行、
強盗団のドライバー役を務めるバーテンダーのドニーを拉致・暴行し、
レイの目的を探ろうとするが、、、
強盗団は躊躇無く銃をガンガン撃ちまくり、
警官の所業の悪さは、ギャングと大差ありません。
しかし、
そうは言ってもお互いプロフェッショナル同士。
性格が悪くても、素行不良でも、
仕事はキッチリやるヤツら。
何処か似た者同士。
しかし、
立場の違いで絶対相容れない者達が、
自らの主張を通す為に、
知略と銃撃戦によるガチンコバトルを繰り広げます。
型破りな男達のイキリ合い。
普通に生きる、
我々小市民とは全く違うからこそ、
そこにシビレる、
憧れるぅ~?
そんな感じの映画、
それが『ザ・アウトロー』です。
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『ザ・アウトロー』のポイント
極ワルオヤジのイキリ合い!!
知略と銃撃戦
悪の末路は哀しいものよ
以下、内容に触れた感想となっております
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犯罪者と悪徳警官
本作『ザ・アウトロー』は映画のジャンルとしては、クライム・サスペンスと言われる物です。
犯罪者やギャングが、
のっぴきならない状況に陥るタイプの作品が多い印象ですが、
クライム・サスペンスにおいて、
警官が犯罪者と対決するタイプの作品では、
概して手段を選ばぬ暴力警官が出演しがちです。
最近でも、
『フェイク シティ ある男のルール』(2008)
『サボタージュ』(2014)
『ボーダーライン』(2015)
『トリプル9 裏切りのコード』(2016)
などの印象深い作品が多く作られています。
これら、先行するクライム・サスペンスを参考にしつつ、
やはり、本作が一番影響を受けたと思われる作品は、
アル・パチーノとロバート・デ・ニーロが共演した
『ヒート』(1995)だと思われます。
『ヒート』も、
警官と犯罪者が、お互いの信念を懸けて戦う、ダンディズム溢れる作品。
立場の違う主演の二人が、
何処か、相手に自分と似通った物を感じつつも、
しかし、敵対し、雌雄を決さずにはいられないという作品です。
それは、
本作の特捜班のニックと、
強盗団「アウトロー」を率いるメリーメンとの関係にも共通ものがあります。
しかし、
『ヒート』では仁義を通し、お互いをリスペクトする感じがあったのに対し、
『ザ・アウトロー』では、互いを「目障りな好敵手」位の感じにしか見ていません。
敬意を持って接するのでは無く、
相手の裏をかいて、鼻を空かしてやろうという魂胆が垣間見えるのです。
これが時代というものでしょうか?
敵対する相手に対しても、仁義を通すのも今は昔。
相手が自分と共通する物を持っていると分かっていても、
それを尊重せず、
互いの力量を比べあうように、挑発を行い合うのです。
それは、
過程を重視する事よりも、
結果を重視する方が重要とみなす時代へと移行した、現代を象徴しているかの様です。
しかし、面白いのは、
強盗団「アウトロー」と、
それに対する特捜班のキャラ付け。
強盗団は、
元軍隊出身者で固められ、
さらには高校時代は同じ部活で鳴らした者同士。
やんちゃな若者がそのまま大人になった、
まるで部活のノリでワイワイやる仲の良さがありますが、
強盗時にはチームワークを重視し、
綿密な計画と計算の下に決行するという、
何処かスポーティな雰囲気すら漂います。
何だか、
犯罪にチャレンジする『ミッション:インポッシブル』みたいな感じでもあるのです。
一方特捜班は、
まるでギャングの様な素行の悪さ。
FBIに悪態を吐き、
酒を飲みながらストリッパーといちゃつき、
女房には三行半を突き付けられます。
強盗団が体育会系の脳筋やんちゃ軍団なのに対し、
特捜班は鼻つまみ者のヤンキー軍団といった印象。
体育会系は、
努力もしないのに態度がデカいヤンキーを馬鹿にし、
ヤンキーは、
問題を起こしても、スポーツをしているだけでチヤホヤされ、不問に付される部活系を妬ましく思う。
こうして対比してみると、
体育会系とヤンキーでは、
傍目に似ていると言われても、
お互い相容れないのは、避けられない運命なのかもしれません。
以下、内容とオチに触れた感想が始まります
しかし、
実はこの強盗団と特捜班のバチバチの鎬合いを嘲笑い、
そこまでのダンディズムすら、オチへの伏線にしてしまうのが本作。
そう、
本作が参考にしているもう一つのクライム・サスペンスは、
『ユージュアル・サスペクツ』(1995)なのです。
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二兎を一緒に、鴨葱で食する!!
『ユージュアル・サスペクツ』は、
生き残りが警察署で、
回想にて事件の経過を語るという手法の作品。
しかし、オチの「実は…」で、
数々の伏線が張ってあったとあとから分かる作品です。
そして『ザ・アウトロー』も、
実は、その系統の作品なのです。
良い所を総取りするドニー。
唐突なオチに見えますが、
思い返すと怪しい場面が多数ありました。
1:
連邦準備銀行の下見に、ドニーが居る。
チームとして動く強盗団が、
下見すら危険と言われる連邦準備銀行にドニーを連れて行っています。
ドニーはドライバー。
いわば、チームの中では新参の外様、下っ端であるドニーが、
そんな場面に立ち会うでしょうか?
2:
連邦準備銀行に忍び込む実行犯がドニー。
作戦の最重要ポイントである、
処理済みの紙幣をくすねる役を、ドニーが行います。
最も危険であり、
最も重要な、絶対に失敗出来ないポジションに、
新参者をあてがうでしょうか?
3:
作戦決行後に、特捜班に捕まったドニーが直ぐゲロる。
作戦が成功した直後に、
その作戦を不意にする様な事をするでしょうか?
時間稼ぎくらいするのでは?
この後、
4:
ゴミ収集車の怪しい動きと、
5:
車に残されたドニーが鋭い目力を発した場面で、
「あ、これは腹に一物あるな」
と、観客の深層心理に、何となく刻まれます。
そう、
学生時代はニックやメリーメンと同じくフットボールをしていたというドニー。
彼のポジションは、キーパー。
試合を、一番後ろから俯瞰して眺める事で、
完璧に支配していたのです。
まるで、
かつてドイツ代表で鳴らした、オリバー・カーンの様に!!
全てがドニーの描いた絵図の通りに進んだという本作。
実行犯のリーダーはメリーメンであっても、
計画のアイデアはドニーであったので、
下見や重要ポジションを任されていたのですね。
それを象徴するのが、
最後の最後、エンドクレジットに出てくる画像。
エンドクレジットが始まると、
二つの頭を持つ鷲(?)だか蛇(?)だかの紋章が映されますが、
その映像を「引き」で映すと、
それは100ドル紙幣だったと判明します。
本来ならば、鷲の紋章が印刷されている場所に、
双頭の鷲(と思われるもの)が描かれているのですね。
これはつまり、
ニックとメリーメンという、
二匹の鷲だか蛇だがが、雄々しく戦っていても、
その戦いを俯瞰して眺めると100ドル紙幣であり、
ドニーはその争いをすらネタにして、
美味しく頂きました、
という映画の展開をたった一つの場面で語っているのです。
ダンディズム溢れる男の意地の張り合いを、
クライム・サスペンスとして描いた作品。
…と思わせておいて、
実はオチにどんでん返しが待っている作品、
『ザ・アウトロー』。
予告編の映像や、
「映画史の残る銃撃戦」という惹句、
『ザ・アウトロー』という突っ込み処満載の邦題も含めて、
そういうオチの意外性を際立たせる伏線だったのです。
内容の面白さに加え、
気持ち良く「してやられた」感を味わう事が出来る作品、
それが、
『ザ・アウトロー』なのです。
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本作との共通点も多い、ダンディズム映画の『ヒート』
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