映画『ハッピー・デス・デイ 2U』感想  解くべきでは無い謎を解明してしまったら、どうなるか!?

ツリーは、タイムループを抜けた。翌、19日の火曜日、カーターとツリーが部屋でいちゃついている場面に、ルームメイトのライアンは出くわす。バツが悪い彼は、量子論に基づく自分の実験装置の確認に行くが、大学側から研究の中止を言い渡される。意気消沈するライアンは、謎のベビーマスクに襲われ死んでしまうが、気が付くと、19日の火曜日の朝に戻っていた、、、

 

 

 

 

監督は、前作『ハッピー・デス・デイ』と同じく、
クリストファー・B・ランドン

 

出演は、
ツリー:ジェシカ・ローテ
カーター:イズラエル・ブルサード
ライアン:フィー・ヴ
サマール:スラージ・シャルマ
ドレ:サラ・ヤーキン
ダニエル:レイチェル・マシューズ
ロリ:ルビー・モディーン 他

 

 

 

誕生日、
殺人鬼に襲われて、死んでしまう日がループする!!

 

この一発ネタが帰って来た!!

たった、2週間で!!

 

はい、
日本では、前作の公開から、
たった2週間で続篇の公開という、異例のつるべ打ちをカマしてくれた、
それが本作『ハッピー・デス・デイ 2U』です。

まぁ、
明らかに、
本作(パート2)に合わせて、
前作を急遽日本公開した、という時系列だと思います。

 

とは言え、
前作は、一発ネタとして、
個人的には大変楽しめた作品でした。

そんな作品に、続篇を作る。

一回で終わるハズだったネタに、
続きがあったという、

驚きと期待が、
相半ばする本作。

どんな作品なのでしょうか?

 

前作は、
ホラー的な雰囲気のガワを被った、
ブラックコメディ的な作品でした。

なんと、本作では、
そのガワが変更、

SFのガワを被っています。

 

なんか、
量子論とか言ったら、
SF的な雰囲気が、出るんじゃね?

そう思ったのか、
本作は、
ある意味、本来のループものという設定と寄り添った形になっております。

 

しかし、
SFというのは、勿論ガワなので、

観ている方としては、
ぶっちゃけ、
何も考えずとも良いのです。

結局は、

ツリーが何回も、
不屈の闘志で死を繰り返す

 

それが、
「ハッピー・デス・デイ」シリーズのキモであるのです。

 

なので、
まぁ、ぶっちゃけると、
前作とやっている事は一緒

なので、
あくまでも、
サプライズとしての、映画の新鮮さは、前作の方が上。

とは言え、
前作と主な出演者は全く同じという徹底ぶりなので、
同窓会的な面白さがあります。
(2週間ぶりの同窓会ですが)

 

前作を観ていない新規が楽しめるのか?
と言えば、

まぁ、正直に言うと、
前作の方が面白いので、そっちを先に観てね、
とオススメします。

前作を観て、
また、あの世界観の話を観たい。

そういう人向けのファンムービー、

『ハッピー・デス・デイ 2U』は、
そういう作品と、言えるのかもしれません。

 


 

  • 『ハッピー・デス・デイ 2U』のポイント

SFのガワを被ったブラックコメディ

ループの原因が判明!?

続篇における、キャラクターの変化

 

 

以下、内容に触れた感想となっております。

 


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  • 一発ネタに続篇を作ると言う事とツリーのキャラクター性

誕生日に殺人鬼に襲われ、
死んでしまう日がループする。

この一発ネタを、
SFでも、
ホラーでも無く、
ブラックコメディとして仕上げた、

そのアイディアが光った作品、
ハッピー・デス・デイ』(2017)。

『ハッピー・デス・デイ 2U』は、
その続篇ですが、

一発ネタに続篇をどうやって作るのか?

そこに、
観る前から興味がありました。

 

結論から言うと、
ネタとしては、
前作とやっている事は、
全く一緒

今回は、
「殺人鬼に襲われる」という側面より、

「ループを脱する変数を探す」為に自殺を繰り返すという側面がフューチャーされるので、
観た感じがSF的な印象になっている、

そういう変更点はあります。

 

そういう設定面での変更と、
前作のラストからの引き継ぎがあり、

多少、ツリーの性格にも変化が見られます
あくまで、多少ですが。

 

前作が好きで、本作を観る人は、
やっぱり、
ツリーのキャラクター性の面白さを期待して観る事になる部分もあると思います。

しかし、
前作では、タフなビッチだったツリーが、

本作では、良い娘ちゃんになってしまっているんですよね。

まぁ、
成長しているのは喜ばしいですが、
前作のハチャメチャなツリーが好きだったので、
その点は、
嬉しさ反面、映画的には、残念な面もあります。

 

なので前作では、
「ビッチ死すべし」みたいな感じで、
コメディチックに、死のループを観る事が出来ましたが、

本作では、ツリーの性格が(多少)良くなっているので、
同じ描写でも、
「頑張れツリー」と、
まぁ、笑いながら、死のループを見守る事になり、

そこに観客が、ツリーに対して共感するという側面が新たに生まれているのです。

 

しかし、です。

前作では、
「死を繰り返す事」=「犯人捜し」であり、
観客は、一緒に、そのミステリ部分を楽しめるという側面がありました。

一方本作では、
「ループを抜け出す変数を探す」という事が、
実際、何をしているのか?
どんな数字を探しているのか、観客には伝わらないので、

ループしているという事実を観せられているだけで、
「ツリーと一緒に成長する」という、
前作が持っていた面白い側面が無くなっているのは残念な面です。

 

  • 謎は謎のまま

本作は、
SF的な設定を盛り込んでいます。

おそらく、
前作が好評であり、続篇の製作が可能になったのでしょうが、

その過程で、
何故、ループが起きたのか、その原因が知りたい
という声もあったのでしょう。

本作は、
それに応えるアンサーとなっているのです。

 

しかし、
前作『ハッピー・デス・デイ』は、

ループの原因を突き詰める事では無く、

ビッチのツリーが死を繰り返すが、
不屈の精神でそれを乗り越える、

という、
キャラクター性と状況的な面白さが、そのキモだと言える作品でした。

なので、
謎の解明というのは、ぶっちゃけ、蛇足なのです。

 

TVアニメシリーズに『THEビッグオー』という作品がありました。

『THEビッグオー』(1999~2000)は、
謎な世界観で、派手なアクションとキャラクター性で魅せる作品でした。

しかし、
謎は謎のまま終わったので、

続きが観たいという声が上がり、
「セカンドシーズン」(2003)として続篇が作られ、
謎が解明されたのですが、

これが、まぁ、面白くなかった。

本作も同じですね。

観客の声に応えて、
後付で謎の解明を施したとしても、

実際、それを観た観客の満足度、期待度を超える事は困難なのです。

まぁ、
奇跡の傑作となった、
『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』(1997)なんて例外作品も、あるにはありますが。

 

本ブログでは、何度も引用した言葉ですが、

TVシリーズ『ツイン・ピークス』を監督したデイヴィッド・リンチ曰わく、

謎は謎のまま残しておく方が良い
との事。

謎こそ、
視聴者の興味を惹きつけ、
作品を存続させる最大の魅力なのだと言うのです。

下手な「謎の解明」は、
作品の質を損なう事にもなるのです。

 

  • SFとして本作を観る

その上で、
一SFファンが、SFとして本作を観た場合、
残念な面があります。

 

前作では、
オープニングのタイトルロールがループする事で、
「この作品は、ループネタを扱っています」と、
予め宣言していました。

本作でも、
タイトルロールにおいて、
3つの同じ(に見える)タイトルロールが並行して映され、
それが統一されるという描写がなされます。

これを観ただけで、
SFファンなら、
「ああ、今回は、並行世界ネタなんだな」と、
推測出来ます。

 

本作でも扱われた、
量子論による、
多元宇宙論に基づいた、並行世界ネタというのは、

SF的な映画や漫画、小説作品でよく見られるもの。

簡単に、ザックリ言うと、
可能性の数だけ世界は存在し、選択によって世界の有様が分岐し、増えてゆく
という感じです。

漫画『ドラゴンボール』の人造人間篇を思い出してもらえればいいと思います。

トランクスがタイムマシンにて過去に戻り、
歴史を変えたが、

それは、未来を変える事では無く、
新たに「悟空が生き残った世界」を作る事になった、

というアレです。

 

本作では、
量子論の実験が、
ツリーのループを生む事になったという解釈。

その上で、
作品の冒頭では、
並行世界より表われたライアンが、

実験をするライアンを殺そうとやって来るという、
並行世界ネタで、物語が進んで行きます。

 

しかし、
「ハッピー・デス・デイ」シリーズは、
誕生日がループする、
という設定に拘ってしまったのか、

本作は、導入部が終わると、

結局、
ツリーのループものという、
前作と同じネタを繰り返してしまうのです。

 

前作と同じネタをループさせるというのは、
ある意味、
本作の趣旨を、メタ的に体現していますが、

私個人としては、
当初の方針通りに、
並行世界ネタで押して行った方が面白かったのではないのか?
と、思います。

 

並行世界ネタで「ハッピー・デス・デイ」の続篇を作るなら、

並行世界より次々に現われる、
様々なツリーが、
ツリー自身と対決する、

みたいな感じになって、
より盛り上がったのではないでしょうか。

『ハッピー・デス・デイ』を生き残ったツリー、
ビッチなままのツリー、
真面目なツリー、
戦闘を繰り返して、格段に強くなっているツリー etc…

これなら、
様々なツリーが観られて、
前作でツリーのキャラクター性に惚れたファンの期待にも応える事になりますが、
どうでしょう。

 

まぁ、
同じネタとして、
ジェット・リー主演の映画『ザ・ワン』(2001)とか、

『ジョジョの奇妙な冒険』の第7部、
大統領のスタンド「D4C」の能力と被りますが、

ネタ被りを気にしていたら、
SFは作れませんヨ!!

 

それを踏まえた上で、指摘しますが、

前作、ツリーはその台詞にて、最低でも「16回」以上は、死のループを繰り返している様でした。

しかし、
本作では、ツリーの台詞にて、死のループは「8回」(うろ覚えですが)だったと言っていました。

つまり、
厳密に言えば、
本作のツリーは、
前作のツリーとは、別の並行世界のツリーと言えるのです。

この事からおそらく、
当初は、本作でのツリーの活躍は、
ループでは無く、並行世界ネタだったんだろうな、
と、思います。

 

  • お気に入りのシーン

さて、
本作での私のお気に入りのシーンの一つに、

ダニエルが、
実験連中の一人、サマールを話をする場面があります。

 

オッパイを強調する服を着ているダニエル、

サマールは目線が胸に釘付けですが、
そんな彼にダニエルは、
「何処に向かって話しかけてるのよ、このサモア人」と、
辛辣かつ、差別的な発言をします。

この台詞、
自分に言われたのか!?と、ハッとした人も多いのではないでしょうか。

ツリーは前作より、比較的に良い娘になっちゃいましたが、
ビッチ路線は、ダニエルが引き継いだ形です。

 

許してあげて、ダニエル!

だって、サマールを演じたスラージ・シャルマは、
『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(2012)という作品にて、パイを演じた人なのだから。

(オッ)パイに目が行くのは、
仕方の無い事なのです。

 

 

ともあれ、
相変わらずのツリーの死にっぷりが観られるので、

前作でジェシカ・ローテのファンになった人なら、
本作も楽しめる事は間違いありません。

でも、
ジェシカ・ローテに注目して観ると、
彼女、
歩いている時は普通なのですが、
走っている時は、右足を引きずっているんですよね。

何か、撮影中に怪我でもしたんでしょうか?
ちょっと心配。

映画的には、
ループを繰り返したので、
身体にダメージが残っていると(勝手に)解釈して観ていました。

 

ともあれ、
一発ネタだった作品に、
続篇を作ってくれただけでも、有り難い。

本作『ハッピー・デス・デイ 2U』が好評なら、
さらなる続篇もあり得るとの事ですが、
如何に?

期待はせずに、
待っていようと思います。

 

 

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