映画『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』感想  夢に向かうならば、日常のルーチンワークを乗り越えろ!!

作家志望のジョアンナは、突如思い立ち、ニューヨークに住む事にする。夢を叶える為に!
先立つものが必要なので、人材派遣会社を訪ね、就職先を探すジョアンナ。紹介されたのは、老舗の出版エージェンシー。ボスのマーガレットと面接し、無事、就職が決まった。
しかもそこは、『ライ麦畑でつかまえて』で有名なJ・D・サリンジャーのマネージメントを務めていた、、、

 

 

 

 

 

 

監督は、フィリップ・ラブロー
カナダ出身。
長編映画監督作に、
『ぼくたちのムッシュ・ラザール』(2011)
『グッド・ライ~いちばん優しい嘘~』(2014)
『チャンプ/チャック~”ロッキー”になった男~』(2016)等がある。

 

原作は、ジョアンナ・ラコフ著『サリンジャーと過ごした日々』。

 

出演は、
ジョアンナ:マーガレット・クアリー
マーガレット:シガニー・ウィーバー
ダニエル:コルム・フィオール
ヒュー:ブライアン・F・オバーン
ドン:ダグラス・ブース

ノースカロライナ州ウィンストン・セーラム在住の青年:セオドア・ペレリン

J・D・サリンジャー:ティム・ポスト 他

 

 

 

本好きがマウント合戦する時に、
如何に、過去の名作を読んでいるのか、
という自慢合戦が始まります。

まぁ、
私は殆ど読んでいないので、
全く、その土俵に上がれないのですよね。

そんな私が珍しく読んでいたのが、
J・D・サリンジャーの作品群。

先ずは、有名な野崎孝・訳、白水Uブックスの『ライ麦畑でつかまえて』、
これを読んでハマって

新潮文庫版の、
『ナインストーリーズ』『フラニーとゾーイー』『大工よ屋根の梁を高く上げよ シーモアー序章ー』を連続で読みましたねぇ。

切っ掛けは何だったかな?

アニメの『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(2002~2003)の登場人物、
「笑い男」が読んでいたのを見て、自分も読んだんだっけ?

丁度、その頃に読んだ事は確かです。

 

 

 

 

『ライ麦畑でつかまえて』を読んで思ったのは、
「コレは私の物語」であり、

故に、
自分の唯一無二と思われた悩みは、
しかし、
一般的な、ありふれたものだったのだと、
思い知って、

なんかちょっと、悟らされたな、と感じた作品です。

 

 

 

 

まぁ、
全世界の厨二病患者の心に刺さるのが、
『ライ麦畑でつかまえて』なのですが、

その著者、
J・D・サリンジャーと出版社を取り持ち、
マネージメントを務める、
「出版エージェンシー」の会社に、

本作の主人公、
ジョアンナは就職します。

 

っていうか本作、
ジョアンナ・ラコフの回顧録『サリンジャーと過ごした日々』を原作とした、
実話に基づいた作品」系列の映画。

なので、
本当にあった事を、
映画的にアレンジして、作品化しているんですよね。

 

で、本作で描かれるのは、

新環境で、新しく生活を始める事の、
不安と楽しさです。

 

 

突如、思い立って、
憧れのニューヨークで暮らす事にしたジョアンナ。

友達の家に居候し続ける訳にもいかず、
就職先を探して、
潜り込んだのが、
老舗の出版エージェンシー。

この、
新生活を始める時の、
期待と不安の入り交じった感じがまざまざと描かれて、
何だか、面映ゆい感じがします。

 

で、
ジョアンナは、本当は作家志望なんですが、
充実はしていながらも、仕事の雑務に追われる日々を送ってしまいます。

そうです、
本作でメインテーマとして描かれるのは、

夢を叶える為に、
人生において、何を取捨選択すべきか、

 

その事なのです。

 

こう言ってしまえば、
ちょっと、ハードな内容に思われるかもしれませんが、

しかし、本作の面白さというか、
上品な所は、

奇を衒(てら)わずに、
一般的な常識の範囲内の、
青春の日々を描いている部分なんですよね。

 

映画を観るなら、
ド派手なアクションだったり、
ショッキングなホラー映画だったり、
ドキドキするサスペンスだったり、

そういう作品が、
インスタントに面白いですよね。

 

しかし、
本作『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』の様な、

地に足の付いた、
落ち着いた面白さの作品には、

安心と、
心の滋養が満たされる感覚があります。

 

夢を追いかけたり、
又、
人生に疲れた時に、
本作を観たなら、
ちょっと、勇気づけられる、
そういう作品なんだと言えるのではないでしょうか。

 

 

 

  • 『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』のポイント

新生活を始める期待と不安

夢を叶える為に行う、取捨選択

オシャレなファッションも要チェック

 

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 

 

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  • 夢を叶える為の取捨選択

社会人第一歩を踏み出した若者の青春に1ページを描いた作品、
『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』。

本作で描かれるのは、
若者が夢を叶える為に、何をすべきか?
という事であり、

夢の実現には、
「取捨選択」を成すべきだと、描かれているのです。

 

上手いこと面接を乗り越えて、
老舗出版エージェンシーに就職したジョアンナ。

馴れないタイプや、
J・D・サリンジャー宛のファンレターの処理などに、

悪戦苦闘しつつも、
充実した日々を過ごしています。

また、私生活も、
思い立って、急にニューヨークに出て来たので、
何の用意も無い。

偶然知り合った、
その辺の男と同棲、
キッチンも無い部屋に入居します。

 

しかし、
日々の仕事の雑務の為に、
ニューヨークに来たのでは無い。

作家になるという夢を持っていたハズなのです。

 

出版エージェンシーにて、
ボスのマーガレットの助手であるジョアンナ。

彼女は、
J・D・サリンジャーがマーガレット宛てに掛けてきた電話を取り次ぐのですが、
その時、
サリンジャーと会話します。

ジョアンナが詩を書いていると聞いたサリンジャーは、
「作家を目指すなら、毎日書くべきだ」
「一日15分でも、創作の時間を設けなさい」とアドバイスします。

継続は力なり、ですね。

 

又、
ダニエルに誘われて入ったレストランで、
ジョアンナは、作家のレイチェル・カスクに出会います。

彼女は言います、
「パーティーがあったとしても、出かける時間が勿体ない」
「両親に反対されても、自分の道を貫いた」と。

レイチェル・カスクのストイックさ際立つ台詞です。

 

つまる所、
この二人が言うのは、

夢を叶えたい(作家になりたい)のなら、
創作を、人生の第一目的にすべきである
というアドバイスです。

 

作中、
道を失った彼女は、
自分の原点である、アイスクリームを食べた、ニューヨークの高級ホテルを訪れます。

そこで、
親子連れとすれ違います。
まるで、過去の自分を見るかの様に。

また、
元カレとダンスをする空想を覚えたりもします。

 

結局、
今カレは、
ニューヨークの憧れに乗っかった、
「腰掛け」的な存在に過ぎず、

躊躇いなく、
「お別れ」が言える、
自分の人生に必要の無い相手だったのです。

 

また、ジョアンナの親友のジェニーは、
婚約者に付いて行って、
ニューヨークを去る事にします。

ジョアンナは、夢を諦めるの?と尋ねますが、
ジェニーは「卒業」だと答えます。

 

「夢」とは、
勝利したり、敗北したり、実現したり、諦めたりするだけではない、

ごく、自然に、
「夢」が人生の目的で無くなる時が来る、
それを「卒業」と呼んでいるのですね。

これも又、取捨選択の一つの形です。

 

故に、ジョアンナは出版エージェンシーを辞めます。

マーガレットの様に、
仕事に誇りとやり甲斐を感じていると、

自分も、
そこから抜け出せなくなると悟ったのかもしれません。

様々な理由が重なり
「今を逃せない」と、
ハッキリ、上司に伝えます。

 

実行力、決断力、そして、継続。

本作は、
夢を叶える為に道に邁進し、
その為に、何を優先すべきか、
その取捨選択の重要さと過程を、丁寧に描いているのですね。

 

  • ファッションにも注目

さて、本作『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』は、
そのオシャレなファッションにも注目したいです。

 

先ず、主人公のジョアンナ。

舞台は、1995~6ですが、

25年程前という事を勘案しても、
更に、ちょっとレトロ感があります。

故に、あっさりとしていながら、
上品でシックな出で立ちとなっています。

 

一方のマーガレットは、

何となく、肩周りがイカツイというか、
あの頃の、
ジュリアナ東京的な、
北斗の拳の雑魚の肩パット的な、

そういう、仕事がデキる女的なファッションであり、

ウブなジョアンナと対になっている印象も受けます。

 

まぁ、私はファッションに詳しく無いので、
あまり語るとボロが出るので、これくらいにしますが、

服装周りもチェックしたら、本作は面白いと思います。

 

  • 『ハプワース16、一九二四』のその後

田舎の小規模の出版社で販売される予定だった、
『ハプワース16、一九二四』。

作中では触れられていませんが、
現実では、出版が取り止めになったそうです。

 

どうやら、
書評で酷評され、
ショックを受けたサリンジャーが、
出版取り止めを決断したそうです。

 

アメリカ本国では、未単行本化なのですが、
…しかし、
日本では、単行本として出版されています。

興味のある方は、読んでみてはどうでしょうか?
(私は未読です)

 

 

 

 

 

 

新しい生活を始める期待と不安。

そして、
夢を叶える為に、何を成すべきか、
その取捨選択を描く『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』。

爽やかな青春映画であり、

道に迷った人間にとって、
一服の清涼剤になる作品と言えるのではないでしょうか。

 

また、
その終わり方もオシャレですね。

「ジョン・レノン暗殺事件」(1980)
つまり、
ジョン・レノンを暗殺した犯人のマーク・チャップマンが
警察に捕まるまで読んでいた作品が、
『ライ麦畑でつかまえて』。

故に、マーガレットたちは、
ファンレターに敏感になり、
サリンジャー本人と、距離を置くというスタンスでした。

しかし、
ファンの熱いファンレターに触れたジョアンナは、

それ故、
未読だったサリンジャーの著作に手を出し、
そして、
自分の創作意欲もかき立てる事になります。

 

何かを新しく始めるのは、
怖いです。

しかし、
ルーティンワークに保護された日々よりも、

刺激のある、
新しい事にチャレンジしてもいいのではないのか?

新しい道に進むジョアンナが、

会社では禁じられている、
「サリンジャーにファンレターを届ける」事をしたのは、

そういう決意と冒険が、
込められているのかもしれないですね。

 

 

コチラが原作、ジョアンナ・ラコフの回想録です

 

 

 

 

 

 

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