映画『ファントム・スレッド』感想  個性派同士のマウント合戦!!しかし、結婚とはそんなもんさ!?

 

 

 

1950年代、ロンドンの高級仕立服店「ハウス・オブ・ウッドコック」の主人、レイノルズ。常連客の仕事をこなし、恋人と別れ、気分転換で別荘へ行く。その別荘地のレストランで、給仕のアルマと出会い、彼女に惹かれたレイノルズは食事に誘う、、、

 

 

 

 

監督はポール・トーマス・アンダーソン
名前が似ているが、映画『バイオハザード』シリーズのポール・W・S・アンダーソンとは別人である。
監督作に、
『ハードエイド』(1996)
『ブギーナイツ』(1997)
『マグノリア』(1999)
『パンチドランク・ラブ』(2002)
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007)
『ザ・マスター』(2012)
『インヒアレント・ヴァイス』(2014)がある。

 

主演のレイノルズ役にダニエル・デイ・ルイス
アカデミー賞を3度も受賞している、スリー・タイムス・チャンピオンだ!!
主な出演作に
『存在の耐えられない軽さ』(1988)
『マイ・レフトフット』(1989)
『ラスト・オブ・モヒカン』(1992)
『ギャング・オブ・ニューヨーク』(2002)
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007)
『リンカーン』(2012)等がある。

他、出演に
アルマ:ヴィッキー・クリープス
シリル:レスリー・マンヴィル 等。

 

 

個性派監督、ポール・トーマス・アンダーソン。

個性派俳優、ダニエル・デイ・ルイス。

この二人による映画、『ファントム・スレッド』。

勿論、個性派映画なのです。

 

ポール・トーマス・アンダーソン監督と言えば、
過去作から続いて偏執的なキャラクターを描き続けています。

そんな監督が、
今回はファッション業界を描く?
ちょっと、オシャレ映画なのか?

と思われるかもしれません。

とんでもない!

今回も偏執的なので、ご安心を。

 

むしろ、
ファンションは題材として使っている印象。

とは言え、細部に拘る作品作り。

キッチリと、
アカデミー賞の衣装デザイン賞を受賞しています。

 

 

さて、
ファッションを題材・舞台として描くのは、

男女の鞘当て。

 

奇妙で極端、
意地と個性がぶつかり合いますが、

本作で描かれている事は、

ごく普通の(?)男女の恋愛関係の展開。

 

何となく、身に覚えがあるが故に、

それとなく親近感が湧く映画であります。

 

細部に拘り、
衣装は豪華絢爛、
極まった演技で強烈な個性を演じる、

これで面白くない訳が無い。

『ファントム・スレッド』は、そういう映画です。

 

 

  • 『ファントム・スレッド』のポイント

強烈な個性を発散する俳優の演技

絢爛豪華な衣装の数々

恋愛関係あるある

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • 名優、ダニエル・デイ・ルイス

徹底した役作りにて、
狂気とも紙一重の圧巻の演技を魅せる、ダニエル・デイ・ルイス。

モヒカン族を演じる時は、
野外でのサバイバル技術を習得し、

ボクサーを演じる時は、
プロボクサーと殴り合い、

リンカーンを演じる時は、
彼の書簡を読み込んだと言います。

徹底リサーチの鬼

それが彼の演技を支えているのですね。

本作にて俳優を引退するという、ダニエル・デイ・ルイス。

恐らく、
その役作りは、気力、体力を大きく削るものなのでしょうね。

 

そして、本作の監督である、ポール・トーマス・アンダーソンも個性派作品の映画監督。

毎回、
偏執的なキャラクターを、
狂気とは紙一重に作り上げている印象です。

 

それを踏まえて本作を観ると、

なんだか、レイノルズというキャラクター、

仕事に徹底して拘りを持ち、
日常のルーティンを守り、
全身全霊を込めて作品作りに没頭する、

どうやら、
ダニエル・デイ・ルイス、
そしてポール・トーマス・アンダーソン自身の分身なのではないいのか?

そう思ってしまうのは、私だけでしょうか?

 

自身がモデルと思われるキャラクターを演じてしまった。

これを俳優業の終わりとするには、丁度きりがいい、
そう、ダニエル・デイ・ルイスは思ったのかもしれません。

 

  • 男女関係

よく言われる事があります。

「結婚は忍耐」だと。

しかし、本作はそれを無視し、
お互いにマウントを取り合った結果、
二人の想いが融和するまでを描いた作品といえます。

とは言え、
ハッピーエンドというよりは、

何処か歪さを感じ、
さらに、それは一時的なものの様な印象すらありますが。

 

仕事に拘り持ち、一財産とプライドを築いているレイノルズ。

日常のルーティンを守り、
気心の知れた姉との生活を、寸分の狂い無く続けて行く事が何よりも大事だと思っています。

「これが自分のやり方だ」と言わんばかりに、
これまで付き合った女性達に「オレ流」押し付けて来たのでしょう。

 

しかし、
その色に染まらぬ強烈な個性を持ってレイノルズの日常を侵食してゆくのがアルマというキャラクターです。

アルマは、
レイノルズの生き写しであり、その日常の砦である姉のシリルとは正反対の人物。

ただ単に、相手の意に染まるのでは無く
自分という物を知って欲しい、
さらには、一番の必要として欲しいと願います。

 

「オレ流」を押し付けるレイノルズに、
一々反抗して「自己流」を主張するアルマ。

サプライズが嫌いな相手にサプライズを仕掛け、
わざと嫌いなバターで料理をして、相手の反応を窺います。

これは、怒らせる事が目的ではないのです。

怒らせる事によって、生の反応を引き出し、
仕事もシリルも忘れて、自分を一番に見て欲しいという願いのあらわれ、いわば手段なのですね。

 

こういう恋愛の面倒臭い事、

実際にやったり、やられたりした人も多いのでは無いでしょうか?

最初はお互い猫を被って、
いわば遠慮した感じで付き合っていても、

段々本心が知れるにつれて、お互い生の感情がぶつかり合って来る

そうなると、
相手を試したくなるのですね。

 

恋愛や結婚において相手とどう付き合うか?

それは3つのスタンスがあります。

1:相手に合わせる
2:自分に合わせてもらう
3:お互い過度な干渉はしない

本作では、
レイノルズのアルマも、
お互い「2」を選択しているから、個性がぶつかり合っているのですね。

 

しかし、面白いのは、
割れ鍋に綴じ蓋といいますか、
この二人が意外と相性が良かったという事です。

 

アルマは、
仕事に全霊を捧げた後の、弱ったレイノルズが好きだと言います。

普段の高圧的な態度とは違い、
その時は自分を必要としてくれるからですね。

ならばとアルマは、
自分の手で、任意に「レイノルズを弱った状態」に仕立て上げようと思い付き、
食事に毒キノコを混ぜ込みます。

その、毒キノコ入りのお茶を飲んで、レイノルズはダウン。

アルマはここを先途とばかりに、
張り切って看病し、
誰にも触れさせるものかと意気込みます。

一歩のレイノルズは、ベッドで倒れている時、
死んだ母の面影と対面するのです。

 

これは勿論、幻。

高熱で弱った時には、
脳が変な物を見せるのです。

しかし翌朝、
レイノルズはアルマに「君無しでは居られない」とプロポーズします。

まぁ、結局は、
結婚なんて、幻が見せたものに惑わされる、一時の気の迷いと言っている様な印象を受けます。

さらに、このシーン、
ギリギリで出来上がったらしいウェディングドレスが背景にありますね。

アルマは嫉妬か、ウェディングドレスから、
レイノルズが芯地に縫い付けた「NEVER CURSED」(呪われる事無く)という布をはぎ取っています。

そのドレスがプロポーズの場面にあるという事は、
ある種、呪われた結婚だと暗示しているのですね。

 

結婚して、
自分のやり方をさらに押し出すアルマに、
ルーティンを破壊されて苛立つレイノルズ。

シリルに
「仕事に集中出来ない、耐えられない」と愚痴を吐きますが、
その舌の根が乾かぬ間に、

「この家は死者の家だ」と嘆き、
変化する必要性を説きます。

仕事の為か?自分の為か?はたまた、愛の為か?

レイノルズは、
日常のルーティンを守りたいという気持ちと、
変化したいという気持ちの、
二律背反を持っているのですね。

 

しかし、
アルマが再び毒キノコの料理を作った時、
レイノルズはそれと気付きながら、口にします。

以前、自分を試した時と同じく、
わざとらしく、嫌いなバターで作った料理、
つまり、自分は試されていると、レイノルズは気付くのです。

 

自分を頼って欲しい、必要として欲しいと願う、アルマ、
相手の希望を敢えて受け入れるレイノルズ、

先ほど、
「恋愛や結婚においては3つのスタンスがある」と言いましたが、
実は4つ目もあるのです。

それは、
4:お互いが相手の事を想い、相手に合わせあう

 

歪んで、極端で、歪ではありますが、
本作で描かれるは愛の理想の形

紆余曲折の果てに、辿り着いた境地を描いているのです。

 

…とは言え、
結婚とはこれもまた「途中」。

それが長く続くかといえば、
そうでは無いのが現実、

だから、難しいのですがね。

 

 

 

ファッションという題材にて描かれるは、

個性派同士の愛の形。

歪で極端でも、
そこに共感出来る部分が誰にでもある。

ある種の幸せの形だからこそ、
そこに羨望を覚える。

監督特有の世界観で
偏執的なキャラクターを描きながら、

しかし、
誰もが共感出来る愛の物語。

だからこその面白さがある、
『ファントム・スレッド』とは、そういう映画と言えるのではないでしょうか。

 

 

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