人気キャスター、メーガン・ケリーは、トランプ大統領候補とも丁々発止でやり合う程のやり手だった。
その、メーガンの所属するFOXニュースに激震が走る。なんと、リストラされた元人気キャスターのグレッチェン・カールソンが、CEOのロジャー・エイルズをセクハラで訴えたのだ。
激怒するロジャー。一方、メーガンは密かに内部調査を始める。そんな状況下、野心家の若きキャスター、ケイラ・ポスピシルは葛藤を胸に抱えていた、、、
監督はジェイ・ローチ。
監督作に、
『オースティン・パワーズ』(1997)
『ミート・ザ・ペアレンツ』(2000)
『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』(2015)等がある。
出演は、
メーガン・ケリー:シャーリーズ・セロン
グレッチェン・カールソン:ニコール・キッドマン
ケイラ・ポスピシル:マーゴット・ロビー
ロジャー・エイルズ:ジョン・リスゴー 他
美女軍団と言ったら、
どこぞの国の「喜び組」を想起しますが、
本作でメインを張る、3人の女性達は、
正しく、美女軍団と言える女優です。
新旧、と言ったら怒られますが、
所謂、パッキン美人を集めた本作。
そして、まさかの、
『チャーリーズ・エンジェル』(2019)と同日公開。
3人の美女が悪と戦う、
という情報のみで、間違えて本作を観た人も居るかもしれませんね!?
まぁ、
そんな戯れ言は置いておいて、
『スキャンダル』です。
さて、
先ず本作、
豪華3大金髪美女が出演とあって、
この3人が協力して、
脂ぎったデブオヤジをキャン言わせる作品なのかな?
と、期待すると思われます。
しかし、
然に非ず。
本作は、
脚本家が、色々な情報を集め、
さも、本当の事の如くに作った映画というエンタテインメント。
しかし、
実話がベースとしてあるので、
「3人が力を合わせて、権力のある巨悪に挑む」
みたいな解り易いカタルシスがある訳では無く、
あくまでも、
「CEOをセクハラで訴えた」という事件における、
三者三様の有様を描いたという作品です。
なので、
3つのストーリーラインのある作品、と言えます。
そんな本作、
形としては、
男性社会において、
女性が如何に理不尽な仕打ちを受けるのか、
という事を描いた作品なのですが、
それだけに留まりません。
本作で描かれる「戦い」というものは、
権力者の「空気」を読むという事、
つまる所、
「忖度」との戦いと言えるのです。
そういう意味では、
権力者を「キャン」言わせた本作は、
それなりの爽快感があります。
まぁ、実際は、
ロジャー・エイルズが2017年に急死した為に、
グレッチェン・カールソンはFOXニュースと手打ちし、
口をつぐんだのですがね!
こういう、
実話をベースにした作品を観る時、
それが、どの程度事実に即しているのか、
又、
実際の事件の顛末は、
どの様な展開を迎えたのか、
そういう事を、
独自に調べてみる事も、
映画を観る楽しみの一つと言えます。
映画そのものというよりも、
この作品が事実をベースにしており、
実際には、何が起きたのか?
その周辺を含めて、
楽しむ作品、
それが『スキャンダル』と言えそうです。
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『スキャンダル』のポイント
権力者に忖度すべからず
一人の人間の持つ多面性
メディアのパワーと弊害
以下、内容に触れた感想となっております
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忖度すべからず
本作は、
その表面上の形として、
男性社会において、
女性が、如何に理不尽な仕打ちを受け、
無理難題を、日々、強いられているか、
その事を描いています。
権力者は、
それを傘に着て、
女性をエロ目線で睨め回す。
本作のベースとなった出来事、
グレッチェン・カールソンがロジャー・エイルズを訴えたのは2016年であり、
アメリカにおいてすら、
未だに、男女差別は根強いのだと実感させられます。
勿論、
本作は、そんな女性の社会進出における問題を扱った作品なのですが、
主題は、それだけに留まりません。
結局の所、
権力者に忖度する事が、
事態の悪化とエスカレートを招く事を描いていると言えます。
自分の野心の為、
或いは、保身の為、
権力者の、
多少の我が儘を大目に見るのか、
冗談交じりのエロ話を笑って見過ごすのか、
理不尽な要請を承認するのか、
忠誠心を見せろという、直言を避けた相手の言葉を忖度し、相手と肉体関係を結ぶのか、
皆が、
少しの事を「見逃す」度に、
権力者は、ますます増長してゆく事になるのです。
「モリカケ」「桜」「検事長」など、
本邦でも、
権力者の腐敗というものが、生々しく感じられる昨今、
本作で描かれる、
ある種のステレオタイプな事例が、
決して、他人事では無いと思い知らされるのです。
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トランプ大統領誕生!?
そして、本作で面白いのは、
ロジャー・エイルズを、
決して、「悪」そのものとして描いてはいない点です。
口も、性格も悪いですが、
仕事が出来、語りは魅力的、
敵も多いが、味方も多く、
ある種のカリスマがあるタイプですね。
グレッチェン・カールソンが訴えた時、
最初は怖がり、忖度して名乗り出なかったセクハラ被害者も、
この機会に恨み晴らさで置くべきかとばかりに、
次々と名乗り出ていました。
一方、
「セクハラ被害」を、「根拠の無いネガティブキャンペーン」と捉え、
社内でロジャーを擁護する人も居ました。
容疑をかけられた時に、擁護してくれる人がいるというのは、
やはり、
上司に媚びを売るというだけでは無く、人間的に魅力があってこそだと思います。
さて、その上で本作の注目ポイントは、
過去、メディアのパワーにより、
数々のキングメーカーとして君臨したロジャー・エイルズ、
先の大統領選では、
アンチトランプだった事です。
脂ぎったセクハラデブオヤジのロジャーが、
もし、
あのタイミングで訴えられていなかったら、
もしかしたら、
トランプが大統領になっていなかったかも…
もしそうなら、
世界の情勢が、確実に今と違ったものになっていたハズです。
それを考えると、
グレッチェン・カールソンと、
彼女同様、セクハラ被害を訴えた女性達が、
世界を変えたと言っても過言では無いのです。
最早、
脂ぎったオジサンが、自分の得手勝手で好き放題する時代では無いという事を描いた『スキャンダル』。
映画としての面白さもありますが、
その周辺について色々考えられるのが、
面白い部分なのではないでしょうか。
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