映画『蜘蛛の巣を払う女』感想  ミステリからアクションへの転換!!新生リスベットの冒険!!


女性を虐待する男に制裁を加える謎の存在、その正体は、天才ハッカーのリスベット・サランデル。そのリスベットに、世界的なAI研究の権威、フランス・バルデルから依頼が来る。NSA(アメリカ国家安全保障局)から、プログラムを奪還してくれ、と、、、

 

 

 

 

監督はフェデ・アルバレス
ウルグアイ出身。
他の監督作は
『死霊のはらわた』(2013)
『ドント・ブリーズ』(2016)。

いずれも、一癖のあるホラー・ミステリです。

 

原作は、
ダヴィド・ラーゲルクランツ
『ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女』。

 

出演は
リスベット・サランデル:クレア・フォイ
ミカエル・ブルムクィスト:スヴェリル・クドナソン
エド・ニーダム:レイキース・スタンフィールド
カミラ・サランデル:シルヴィア・フークス 他

 

 

 

「ミレニアム1」こと『ドラゴン・タトゥーの女』。

それは、突如として現われた、
北欧ミステリの傑作小説です。

スティーグ・ラーソンが描く、
「ミレニアム」3部作の大成功により、
「北欧ミステリ」というジャンルにスポットが当たり、

現在、
アーナルデュル・インドリダソン『湿地』『声』
ユッシ・エーズラ・オールスン「特捜部Q」シリーズ
アンデシュ・ルースルンド『熊と踊れ』

等の、作家、作品に注目が集まっています。

 

「ミレニアム」を書いたスティーグ・ラーソンは残念ながら死去しましたが、
シリーズは切りの良いところで終わっています。

しかし、
大ヒットした作品を捨て置くのは勿体ないと、
新たな著者、ダヴィド・ラーゲルクランツが世界観を受け継ぎ、
新生「ミレニアム」のシリーズを再開させました。

 

さて、本作『蜘蛛の巣を払う女』は、
そのダヴィド・ラーゲルクランツ版「ミレニアム」の第一段、

シリーズで言うと、「ミレニアム4」を映画化した作品です。

そして、冒頭に、特に説明もないので、

「ミレニアム」シリーズをあらかじめ知っていないと、
人物関係が分からず混乱します。

 

完全に、
小説「ミレニアム」シリーズの既読者向け、

或いは、
デヴィッド・フィンチャーが監督した、
映画版『ドラゴン・タトゥーの女』(2011)を観ている事が前提条件になっています。

 

え?

じゃあ、この作品、
初見じゃ楽しめないの?

いいえ、違うんです。
初見でも楽しめちゃうんです。

 

元々、「ミレニアム」シリーズは、
ミステリとサスペンス、その構成でグイグイ読ませるリーダビリティの高い作品です。

しかし、本作、映画版『蜘蛛の巣を払う女』は、
なんとミステリ部分をバッサリ切って
その「グイグイ」部分をフィーチャーした作品、

その結果、

本作は、
スパイ・アクション映画に生まれ変わっています。

 

無敵の天才ハッカー、
リスベット・サランデルのスタイリッシュ・アクションを楽しむ作品になっているのです。

なので、
頭カラッポにして、
ポップコーンを食べながら鑑賞するのに、
最適な作品になっております。

 

その意味では、
サイコ・サスペンス的な雰囲気を持っていた『ドラゴン・タトゥーの女』のイメージで本作を観ると、

拍子抜けしてしまうかもしれません。

本作はどちらかと言うと、
「007」シリーズ、
「ミッション:インポッシブル」シリーズの様なスパイ・アクション

または、
「アンダーワールド」シリーズ
「バイオハザード」シリーズの様な、戦うヒロイン系の映画、

そういうジャンルだと割り切って観る方が、
楽しめる作品なのです。

 

著者が替われば、作品が変わる。

監督が替われば、世界観が変わる。

『ドラゴン・タトゥーの女』とは、
全く違う世界観を新生した作品、

『蜘蛛の巣を払う女』は、
アクション映画として楽しめる作品なのです。

 

 

  • 『蜘蛛の巣を払う女』のポイント

スピーディーなスリベットのアクション

スマホ一つで、世界を牛耳る!?

役者の先物買い

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


スポンサーリンク

 

  • 生まれ変わった「ミレニアム」

面白い小説はないものか?

読書家とは、
その思いのみで、
日々本を読んでいます。

玉石混交、
数々の凡作、駄作の山の中から、
偶に、光輝く玉が出づる

それは、映画も小説も同じです。

 

「ミレニアム」3部作は、
正に、石の中に見つけた玉。

ミステリとサスペンスを基本に、
読書の面白さを存分に味わう事の出来る作品でした。

 

しかし、
作者スティーグ・ラーソンが死去し、
他の人がそれを受け継いでシリーズ4作目を書いた。

興味は湧けども、
何となく、敬遠していました。

「ミレニアム」という傑作の世界観を、
他人に壊されたくない、

そういう守りの心理が働いてしまったのです。

 

とは言え、
映画化されたら、やっぱり気になるもの。

原作を読まずに、
映画を観てみました。

 

…なんと本作、
ミステリじゃない!!

スパイ・アクションになってる!!

原作を読まずとも、
原作とは全然違うんだろうなぁと分かります。

構成が見事な「ミレニアム」シリーズから、
その構成の妙(ミステリ部分)をバッサリ切っているのです。

また、
小説の「ミレニアム」シリーズは、
ミカエルとリスベットのダブル主役。

しかし、
本作の主役は明確にリスベット。

ミカエルはまるで、
用がある時のみ良い様に使われる、冴えない彼氏未満のお友達
みたいな扱いにとどまっています。

 

監督はフェデ・アルバレス。

『死霊のはらわた』では、
痛いホラーを、

『ドント・ブリーズ』は、
サスペンスフルなホラーの傑作を撮りました。

その監督が、
まさかのアクション映画を撮るとは。

 

小説の面白さを、
映像で、どう再現するのか?

それにチャレンジするのでは無く、

敢えて、
全然違うジャンルに作品を変化させてはっちゃけてしまった。

そんな印象を、本作からは受けてしまいます。

 

  • 三代目リスベット、クレア・フォイ

皆さん、
「キン肉マングレート」って知っていますか?

「キン肉マングレート」とは、
漫画『キン肉マン』に登場する、
キン肉マン風のマスクを被ったキャラクターです。

グレートは、
マスク(覆面)マンという設定を活かし、

その中身が入れ替わるという荒技で、
読者を楽しませた存在。

グレートの中身になったのは、

初代:プリンス・カメハメ
二代目:テリーマン
三代目:カオス・アヴェニール
四代目:ケビンマスク

中身が違うので、
ファイトスタイルがそれぞれ違う、グレートが存在するという面白さがあります。

 

さて、
閑話休題。

 

「ミレニアム」シリーズが映像化されるのは、
今回が、実は5度目。

2009年にまとめて公開されたスウェーデン版の「ミレニアム」3部作

2013年に公開された、
ハリウッド版『ドラゴン・タトゥーの女』

そして、本作『蜘蛛の巣を払う女』です。

 

そして、主役とも言えるリスベットを演じるのは、
それぞれ、

ノオミ・ラパス、
ルーニー・マーラ、
クレア・フォイ

の三人。

 

同じ、リスベット・サランデルというキャラクターを演じています。

それなのに、
女優が替われば、役柄がガラりと変わる。

 

危なそうな役を、
体当たりで演じたノオミ・ラパス。

神経質そうな危うさがある、
ルーニー・マーラ。

そして、本作のクレア・フォイ。

黒一色の、
まるで、厨二オタクみたいなファッションセンスでありながら、
それがシンプルながらもスタイリッシュにまとまった格好良さ

そして、
意志の強さ、困惑、動揺などを、
綺麗な青い目で感情を表現する様。

 

三者三様のリスベット、
いずれも違った魅力があります。

 

  • 役者の青田買い

さて、
本作の一番の注目点としては、
新進の役者が揃っている点。

いずれの役者も、
ここからブレイクしていく、
かもしれない人物ばかりです。

 

主演のリスベット演じたクレア・フォイ

TVシリーズの『ザ・クラウン』で女王エリザベス二世を演じ、
エミー賞を受賞しています。

そして、近々公開される『ファースト・マン』での演技にも注目です。

初代リスベットを演じたノオミ・ラパスは、
「ミレニアム」のブレイクで世界に知られる様になった役者です。

クレア・フォイも、
本作を切っ掛けに、
ブレイクするかもしれません。

 

ミカエル・ブルムクィストを演じたのは、スベリル・クドナソン

ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』にて、
スウェーデンのテニスプレイヤー、ビヨン・ボルグを演じました。

 

リスベットの妹、
カミラ・サランデルを演じたのは、シルヴィア・フークス

ブレードランナー2049』にて、
レプリカントのラヴを演じています。

本作とは全然雰囲気の違うキャラクター。

演技の幅を見せたという意味では、
今後さらに伸びるかもしれません。

 

NSAのエド・ニーダムを演じたのは、レイキース・スタンフィールド

『ショート・ターム』(2013)
『ストレイト・アウタ・コンプトン』(2015)
ゲット・アウト』(2017)等に出演。

ハリウッド版の『Death Note/デスノート』(2016)では「L」を演じています。

 

エリカ・ベルジュを演じるのは、ヴィッキー・クリープス

ファントム・スレッド』(2017)で、
オジサンとの結婚生活でマウントを取り合う様が印象に残っています。

 

いずれの役者も、
出演作は多くありませんが、

「あ~、どっかで観た事ある!?」

と、記憶に残っていた人物達。

今後の活躍に期待しつつ、

「早い内から目を付けていた」
「~は、ワシが育てた」

みたいな感じで、
今から応援すれば、
初期からのファンを気取れます
よ、皆さん!

 

 

ミステリ小説の傑作「ミレニアム」シリーズ。

その、
新生作品『ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女』を、

まさかの
ミステリからアクション映画へと新生させた
映画版『蜘蛛の巣を払う女』。

 

ミステリ部分がスポイルされましたが、

スタイリッシュなバトルヒロインの活躍を堪能しつつ、

出演者に注目して観たりする事で、
また、違った面白さも見つけられる作品なのだと思います。

 

 

現在公開中の新作映画作品をコチラのページで紹介しています。
クリックでページに飛びます

 

コチラが、『蜘蛛の巣を払う女』の原作本です


 


スポンサーリンク