映画『グレイテスト・ショーマン』感想  アウトサイダーでも自己主張して何が悪い!!

 

 

 

貧しい出身ながらも裕福な家柄の妻を迎えたバーナム。博物館を買い取るが閑古鳥が鳴いていた。ある日、娘二人の発言「生き物を飾らなきゃダメよ」という言葉にヒントを得たバーナムは方針転換、見た目がユニークな出演者を集めたショーを開催する、、、

 

 

 

 

監督はマイケル・グレイシー
オーストラリア出身。
柔術が強そうな名前ですが、本作が長篇初監督作品。
次回作は『NARUTO(仮題)』だそうです。

 

主演のP.T.バーナム役はご存じヒュー・ジャックマン
ミュージカルの出演経験もあり、
映画『レ・ミゼラブル』(2012)の記憶も新しい。
他、出演作に
『X-メン』(2000)
『プレステージ』(2006)
『リアル・スティール』(2011)
『プリズナーズ』(2013)
『チャッピー』(2015)
LOGAN/ローガン』(2017)等がある。

共演にミシェル・ウィリアムズ、ザック・エフロン、レベッカ・ファーガソン、ゼンデイヤ、キアラ・セトル等。

 

ミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン』。

まず最初に、『ラ・ラ・ランド』の制作スタッフの新作、という売り文句で宣伝されていますが、

被るのは音楽スタッフのみで、監督も出演者も作品のテーマも別物

 

なので、混乱なきよう。
(勿論、本作の音楽は素晴らしいという事は確かです)

さて、『ラ・ラ・ランド』は恋愛ストーリーが基本でミュージカルはオマケでしたが、
本作『グレイテスト・ショーマン』は

程よいタイミングで歌と踊りが挿入されます。

 

ガッツリ歌っていた印象ですが、サウンド・トラックを見ると収録されている楽曲は9曲(アレンジ含めて11曲、作中の子役の歌は未収録のようです)。
意外と少なく感じます。
ですが、

この作中歌9曲がどれも素晴らしい

 

特徴的なのは、主演バーナム役のヒュー・ジャックマンのみならず、色んな出演者が歌っている事。

そして最も印象的な楽曲が、一見脇役の髭女が歌う「THIS IS ME」である事が面白いです。

 

 

バーナムは髭女やのっぽやデブなどの個性的な面々を集めてショーを開催、芸術家筋には嫌われますが、観客は大喝采です。

本作はそのバーナムの半生のサクセスストーリーを描きますが、なんと

主役のバーナム、実在の人物です。

 

勿論映画なので、ストーリーはアレンジされていますが、貧乏から成り上がって行く様は観ていて爽快です。

しっかりとしたストーリーとテーマ。
そして、ミュージカル映画としての印象的な音楽の数々。

観ていて楽しく、見終わってハッピーな気分になれる。
その名に違わぬ『グレイテスト・ショーマン』のパフォーマンスに酔い痴れる作品です。

 

 

  • 『グレイテスト・ショーマン』のポイント

パフォーマンスの高い歌とダンス

向上心と功名心の狭間

虐げられし者が胸を張って生きる誇り

 

 

以下、内容に触れた感想となっています

 


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  • 飽くなき向上心と功名心の境目

『グレイテスト・ショーマン』の主役は実在の人物をモデルにしたF.T.バーナム(1810~1891)。

バーナムは派手なパフォーマンスとイメージ戦略という、現代までアメリカが得意としているショービズの先駆けといえる存在の様です。

映画では彼の半生をエンタテインメントとしてアレンジしており、
栄枯盛衰を経て自らの幸せを見つけるまでを描いています。

貧しい生まれのバーナムは、後に妻となる裕福な子女チャリティを喜ばせる為に発奮、サーカスの興業で一財産を築きます。

しかし、飽くなき向上心を持つバーナムはチャレンジを忘れません。

娘が「成り上がり者」と侮辱されるのを見て、上流階級をも納得させる興業を打とうと本格派歌手のジェニー・リンドをプロデュースします。

しかし、ここが「信条」の難しい所で、
「手段が目的化する」と言いますか、
妻(家族)を幸せにする為に生きてきたハズが、名声を得る為に仕事をする様になり道を踏み外してしまったんですね。

自分でも気付かぬ内に、向上心が功名心にシフトしているんです。

この、自分を信じて突き進んでいたハズの道を、いつの間にか踏み外して迷ってしまうのはよくある事なのです。

むしろ、殆どの人間がそういう「気付かぬ自己撞着」に陥っているのが現代の社会と言えるのではないでしょうか。

バーナム自身は、自分が道を踏み外している事に気付いたので事なきを得ます。

ですが人間、ギャンブルも人生も勝っている時はなかなか降りられないもの。
自分が道を踏み外限界、ギリギリの引き時を弁えないと破滅が待っているのです。

まぁもっとも、イケイケドンドンで成り上がりから大統領にまでなったドナルド・トランプみたいな希有な人もいますが。

 

  • これが、私だ

ストーリー面を引っ張ったのはバーナムですが、本作『グレイテスト・ショーマン』のテーマを端的に表すのは、
髭女レティ・ルッツの歌う劇中歌「THIS IS ME」です。

バーナムがショーの為に集めた人材、
髭女や小人、シャム双生児やアルビノ達は、その特徴的な容姿の所為で世間から奇異の目と悪意にさらされ、ひっそりと生きる事を余儀なくされていました。

そこに人生は無く、自分は価値の無い者だと世間から思い込ませられていたのです。

しかし、そんな彼等も遂に立ち上がります。
その宣言が「THIS IS ME(これが、私)」なのです。

上流階級の無関心の目線、
レイシストが浴びせる無理解の悪意、
この圧倒的な無理解による無関心は人の尊厳を踏みにじります

それに対し、「私はここに居る、これが私なのだ」と宣戦布告。

無理解と無関心に対抗し、虐げられし者達が自らの存在と居場所を高らかに宣言するのです。

何か新しい事をしようとする時や、常道以外の手段を用いた時、世間はそれを「無理解と無関心」により排除しようとします。

差別を経験した事が無くても、そういう「無意識の妨害」みたいな事を経験した人は多いでしょう。

しかし、それでも勇気を持って進んで行かねばならない

その意味と意義を奮い起こさせる、「THIS IS ME」はそういう楽曲であり、それこそ本作で描きたかった核となるテーマであると思うのです。

 

 

キアラ・セトルが歌う「THIS IS ME」のリハーサルの様子。

0:58~ 歌開始
1:58~ え?何するの?と困惑気味の皆の衆
2:20~ 一気にヒートアップ
2:47~ 顔真っ赤
3:56~ ヒュー・ジャックマンの手を握る
4:06~ 思わず声が出るヒュー・ジャックマン
4:25~ 踊って誤魔化すヒュー・ジャックマン
4:36~ キアラ・セトルのドヤ顔

 

  • スタッフ、出演者補足

売り文句の『ラ・ラ・ランド』のスタッフであり、本作でも音楽を担当したのはベンジ・パセックジャスティン・ポール
今後更に活躍が期待出来ると言えましょう。

バーナムの妻チャリティを演じたのは、ミシェル・ウィリアムズ
ブルーバレンタイン』や『マンチェスター・バイ・ザ・シー』の印象で夫婦が物別れに終わるかとヒヤヒヤものでした。

空中ブランコ乗りのアン・ウィーラーを演じたのはゼンデイヤ
婦女子を演じた『スパイダーマン:ホームカミング』とは全く印象が違います。
因みに身長180センチ。

歌姫ジェニー・リンドを演じたのはレベッカ・ファーガソン
劇中歌「NEVER ENOUGH」では、歌声のみで圧倒的なパフォーマンスを見せました。
が、実は歌の部分はローレン・オルレッド(Loren Allred)の吹き替えなのです。

 

 

ワタクシ、他の映画でも「NEVER ENOUGH」を聴いた覚えがありますが、それを思い出せなくて現在モヤモヤしております。

そして、髭女のレティ・ルッツを演じたのはキアラ・セトル
先日、映画のプロモーションで来日しておりました。
ブロードウェイで活躍しており、映画は『幸せをつかむ歌』(2015)に続き本作が2本目の出演です。
ミュージカル出身という事で、あの圧倒的なパフォーマンスにも納得です。
女性で素顔にはヒゲはありませんよ

 

 

バーナムのサクセスストーリーを軸としながら、虐げられし者が誇りを持って立ち上がる様子を高らかに謳った作品『グレイテスト・ショーマン』。

確かにバーナムは、最初は金儲けの為に人を集めたのかもしれません。

しかし、結果として彼は、社会からアウトサイダーとして排除された人間に居場所と誇りを提供したリーダーであったのです。

これは、私が「X-MEN」シリーズでいつか見たいと思っていた光景です。

一匹狼のローガンが、世間から差別の目で見られるミュータントを率いるリーダーとして、いつかプロフェッサーの後継者の役割を担って欲しいと思っていました。

「X-MEN」シリーズからヒュー・ジャックマンは降りましたが、意外な所で今回、その勝手な希望が叶って嬉しい思いがします。

社会や人生に疎外感を感じても、それでも、自分は生きているんだと主張せねばならない。

その勇気を持つ事を後押ししてくれる、
『グレイテスト・ショーマン』とはそんな映画なのです。

 

 

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さて次回は、後押ししてもらうのは復讐!?映画『悪女/AKUJO』について語ります。