ドアが開き、中に入る。スクヒはマフィアのアジトに単身カチコミを仕掛け壊滅させた。当局に拘束されたスクヒは身分を抹消され、国家直属のスパイとして生きる事を余儀なくされる。スクヒは反抗し、訓練施設からの脱走を試みるが、、、
監督はチョン・ビョンギル。
日本でリメイクされた『２２年目の告白 ―私が殺人犯です―』の元ネタ、
『殺人の告白』（２０１２）を手掛けた。
主演のスクヒ役にキム・オクビン。
出演作に
『渇き』（２００９）
『高地戦』（２０１１）
『国選弁護士 ユン・ジンウォン』（２０１５）等がある。
共演に、シン・ハギュン、ソンジュン、キム・ソヒョン等。
本作『悪女／AKUJO』はアクション映画。
まずは冒頭から持って行きます。
FPS（主観視点シューティング）にて無双アクションが展開されます。
言うなれば「バイオハザード無双」といった感じのアクションを見せつけます。
主演は女性ですが、体当たりでアクションシーンを演じています。
そして
斬新なのが、アクションにおける視点の切り替えとカット編集。
主観と客観が目まぐるしく入れ替わる様子は、不思議な混乱と興奮をもたらします。
そして、アクション映画をしての面白さは勿論、
韓国映画特有の
一筋縄ではいかない、
ちょっとひねったストーリーが展開されます。
さらには中盤、
韓流ドラマばりのメロドラマも盛り込まれるのです。
「面白いものは、とにかくぶち込め！」という韓国映画ならではのごった煮感、これぞ映画の楽しさだと言える作品、それが『悪女／AKUJO』です。
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『悪女／AKUJO』のポイント
主観と客観の視点が目まぐるしく入れ替わるアクションシーン
虚々実々のスパイ・ストーリー
切ないメロドラマ
以下、内容に触れた感想となっています
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斬新！アクション視点！
本作『悪女／AKUJO』にてまず目に付くのはアクションシーン。
それも、視点とカット割りの拘りです。
まず冒頭は長回し風の主観視点での無双アクション。
バッタバッタと敵を倒すのはＶＲゲーム的な感覚があります。
パット見の印象でまず思い出したのが、『ハウス・オブ・ザ・デッド』ですね。
この冒頭の派手なアクションで観客の心を掴みますが、それより面白いのはその後の「施設脱出」のシークエンス。
この一連のシーンでも主観視点で脱出行が描かれますが、途中から客観視点もシームレスに混じり、
その主観と客観の滑らかな移行（カット割り）が不思議な感覚をもよおします。
扉を開ける手を主観で描写していたと思ったら、
カメラがぐるっと回り周囲の様子を捉え、スクヒの背後に回る。
そしてスクヒの視点を捉え再び主観視点へと移行する。
主観と客観を滑らかに渡るカメラの移動でこれだけ面白いものになるとは、新しいアクションの面白さの発見です。
その後のアクションはバイクアクション、
接近戦での接写など、
兎に角観た事の無いものを提供せんとする気迫溢れる映像になっています。
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虚々実々のストーリーと時制
アクションシーンの面白さもさる事ながら、中盤にて挿入されるのは韓流ドラマばりのメロドラマです。
これが、アクション一辺倒だった展開において、ある種のクールダウンの役割を果たしています。
国家組織の犬としてスクヒを監視するヒョンスは、恋愛感情を利用して彼女に近付きます。
スクヒとヒョンスは絆を深め、結婚します。
（結婚式でお互いの参列者が全員バイトというのが笑え増す）
ですが観客からすると、果たしてヒョンスの思惑な何なのか？
本当にスクヒに惚れているのか？
それともあくまで監視対象としてしか見ていないのか？
その判断が出来ない所にヤキモキします。
敵か味方か解らない、この一筋縄ではいかないスパイ・ストリーは本作の面白さの一つです。
さらには、本作は時制をシャッフルしているのが特徴的です。
冒頭のど派手アクションは派手ですが、理由や目的は明かされません。
その因縁部分やスクヒの過去、性格の有り様などはストーリーが進む毎に、徐々に明かされて行きます。
この小出しにされる過去エピソードにて、段々真相のヒントが出されていくというストーリー構成がサスペンスを盛り上げます。
派手なアクションに目を奪われがちになりますが、
ロマンスとサスペンスを組み合わせた展開や、
謎解きの様に明かされる真相など、
ストーリー部分にも凝った仕掛けを用意しているのです。
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オドロキ！？スクヒは一人だった！！
さて、本作『悪女／AKUJO』の主演はキム・オクビン。
私は観ている間は、てっきり過去エピソードのスクヒとスパイのスクヒは別人だと思っていました。
全く顔が違う、なのに同一人物でした。
何なんだ？
まさか、映画に合わせて本当に整形したのか？
いや、これは目や髪型、眉毛の感じ、つまりメイクで顔がこれだけ変わるという驚きの実例なのです。
まんまとキム・オクビンの演技力に敗北している訳ですよ、私は、トホホ、、、
…どうでもいい事ですが、長髪のキム・オクビンは浅野温子さんに似てますね。
スパイの同僚に松居直美さん似の人もいましたし、何となく８０～９０年代の香りが漂っていた様に思ったのは私だけでしょうか？
『ニキータ』『キル・ビル』『ハードコア』。
先行するアクション映画の面白い部分を取り込みつつ、視点移行の斬新さと、それを支えるカット編集のスタイリッシュさが見事な『悪女／AKUJO』。
それだけでは無く、虚々実々のストーリー部分でも面白さを観せてくれる作品。
兎に角楽しませようと、手練手管を尽くしているのが素晴らしい作品と言えるでしょう。
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さて次回は、端から見れば面白くて楽しい（？）兄弟姉妹のあれこれを描く、映画『犬猿』について語ります。