映画『アイス・ロード』感想  驀進のリーアム・じーさん!!クリスマス前にやって来た、オレのトナカイはトラックだ!!

カナダ北部、カトカのダイヤモンド鉱山にて、事故が発生!!メタンガスの爆発により、坑道に26人の作業員が閉じ込められた。空気の残量的に、タイムリミットの30時間以内に坑口機材を届けなければならない!!
しかし、3トンの機材を空輸するのは無理。残る陸路は、4月になり、閉鎖されたハズの氷の道、ウィニペグ湖の上を走る「アイス・ロード」を渡るしかない。白羽の矢が立ったマイクとガーティの兄弟達が、3台のトラックにて、その決死のミッションに挑むのだが、、、

 

 

 

監督は、ジョナサン・ヘンズリー
脚本家として、
『ダイ・ハード3』(1995)
『ジュマンジ』(1995)
『ザ・ロック』(1996)
『アルマゲドン』(1998)などに関わる。
監督作には、
『パニッシャー』(2004)
『キル・ザ・ギャング 36回の爆破でも死ななかった男』(2011)がある。

 

出演は、
マイク・マッキャン:リーアム・ニーソン
ガーティ・マッキャン:マーカス・トーマス
ジム:ローレンス・フィッシュバーン
タントゥー:アンバー・ミッドサンダー
トム:ベンジャミン・ウォーカー 他

 

 

 

TVドラマの『水戸黄門』ってあるじゃないですか。
昔、TBSでやっていた、シリーズもののヤツです。

あの「水戸黄門」シリーズって、
全国を回って、
悪漢に印籠をかざして、
「ひかえおろ~」って話ですけれど、

今は無いんですが、昔は、雪の描写もあったそうです。

何故、無くなったのかと言うと、
噂によれば、
何代目かの水戸光圀を演じた俳優が、
「寒いのが嫌」と言ったので、
冬の撮影が無くなったそうです。

 

さて、
秋が駆け足で過ぎ去って、
冬の寒さを感じる昨今。

そんな季節を象徴する様に、
本作『アイス・ロード』は、一面の雪景色。

また、映画は、
舞台設定とは別の所で撮影する事が多いですが、

本作は、なんと

カナダのウィニペグ湖にて、
実際に、アイス・ロードを作って撮影しているという狂気の沙汰

 

そんな危険なミッションに挑むのは、

1952年生まれ、
御年、69歳のリーアム・ニーソンだ!!

 

いや~、元気だな~

水戸黄門ではありませんが、
私は、絶対に嫌ですね、そんな寒い所でロケするのは。

しかし、
70歳間近になっても、
アクション映画でブイブイ言わせているリーアム・ニーソンなら、
そんな苛酷な状況でも、
「オレ、出演、スル」と、二つ返事で応えるのでしょうね。

そこに、シビれる、憧れるぅ~!!

まぁ、ぶっちゃけ、
最早、私は、

リーアム・ニーソン主演最新作!!

って煽りだけで、
観に行く中毒患者みたいなモンになってますがね!!

 

さて、そんな本作は、

3台のケンワース社製トラックにて、
ウィニペグ湖の上の氷の道「アイス・ロード」を渡り、
救出機材を届けるというミッション。

リーアム・ニーソンが駆るのは、
クリスマス前にやって来た赤鼻のトナカイならぬ、
赤いトラック。

これで、
プレゼント(救出機材)を届けるという、
謂わば、本作のリーアムは最早、
サンタクロースと言っても過言では無いでしょう!?

 

まぁ、展開としては、
ある程度予想通りというか、

予期せぬトラブルが発生し、
それに対処して、
困難を乗り越えてミッションに挑む

という、
いつものハリウッド映画的ストーリーです。

 

仕事をクビになった、
マイクとガーティの兄弟が、
報酬目当てで危険なミッションに挑んでいるのですが、

それはそれとして、
水戸黄門ではありませんが、

義侠心というか、
弱きを助け、強きを挫く、
勧善懲悪ストーリーが、身に沁みます。

 

困っている人を助けて、
自他共に認めるヒーローになりたい、
それは、誰もが憧れる所ではないでしょうか。

凝った作品も、勿論面白いですが、

やはり、
時には、こんな王道展開が観たくなる、

その主演が、
リーアム・ニーソンならば、尚更です。

老いて健在!!
リーアム・じーさんの活躍が堪能出来る!!

そんな『アイス・ロード』です。

 

  • 『アイス・ロード』のポイント

実際のカナダ、ウィニペグでのロケ

どんなトラブルが発生しても、機転と手際と根性で諦めるな!!

上級国民と下級国民

 

以下、内容に触れた感想となっております

 

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  • 迫真のカナダロケ

CGの違和感が無くなり、
合成技術が発達した昨今。

撮影が、
スタジオロケや、
別の場所で行われる事が、
当たり前となっているのが、

最近の映画撮影事情です。

 

しかし、本作『アイス・ロード』は、
何を思ったか、
実際に、カナダのウィニペグ湖にまで行って、撮影しています。

本作には、
アメリカのケンワース社製のトラックが出て来ますが、
どれもが、本物の車体、
それが、転んだり、爆発したりしているのです。

そして、その車窓から映し出される背景は、
全て実際の景色、

グリーンバックでの合成一切無しという、
100パーセントの自然なのだそうです。

 

また、地元の
ウィニペグ湖に、
実際に2キロのアイス・ロードを作る事に成功、

その内1キロメートルは、
地平線まで道が続いている様に見えて、
ロケーションとしては最高だったと言っています。

 

小型機で、空を飛ぶ時、

小型ボートで、海を渡る時、

そんな時、
自然の大きさをふと思うと、
この小さな機械が故障したら、
忽ち、自分は死の危険に晒されると気付き、

なんて寄る辺の無い、
足下が、グラグラするような感覚に陥ります。

 

本作でも、
氷の上を、トラックで渡るのですが、

いつ割れるのか分からない、

また、

氷の上で取り残される孤独感というか、
寄る辺無さに、

自然の大きさに絶望し、圧倒される、

そんな感覚を得られます。

 

それも、実際に、
現地でロケをしたという説得力の成せる業なのだと思います。

 

  • どんなトラブルでも、ネバーギブアップ

また、本作では、
リーアム・ニーソン演じるマイクが、
割れた湖の中に水没した弟ガーティを助ける為、
氷点下のウィニペグ湖に潜るというシーンがあります。

流石にその場面は、
現地ではありませんが、

なんと、そのシーンは、
アイスリンクに氷を張って、
そこに穴を空けて、
実際に、低温の水の中に、
演じた本物の役者が潜って撮影したそうです。

 

いや、そこは、温水プール使いなよ、
60過ぎたお爺さんがやる事じゃないよ、

と、思いますが、
流石、そこはリーアム・ニーソンと言った所。

 

そんな場面に象徴される様に、

本作は、
どんなトラブルに遭遇しても、
不撓不屈のネバーギブアップ精神で、
機転と手際と根性で乗り切るというのが、
肝というか、
テーマであると言えます。

 

水没間近のトレーラーを引っ張ったり、
アイス・ロード上で横転したトレーラーを起こしたり、
閉じ込められた荷台から脱出したり、
故障したトラックから、荷台を受け継いだり、
スリップするタイヤに滑り止めを噛ませたり etc…

 

本作には、
様々な人為的、突発的なトラブルが多発します。

観ている側としては、
「え?どうすンの、それ?」と思ってしまいますが、

劇中のマイク達、登場人物は、
考えるよりも先に行動、
手際の良さと、不撓不屈の精神で、
トラブルに対処してゆきます。

 

これが、気持ちが良いというか、
職人芸を観る傍観者の関心」という気持ちになります。

そして、
このネバーギブアップ精神を見習って、

我々観客も、
現実の生活に、その勇気を反映させたい

こういう王道ストーリーを観ると、
そんな決意に、身が引き締まる思いがしますね。

 

…それを、続けられればいいんですけどね☆

 

  • 上級国民と下級国民

そんな『アイス・ロード』、
テロリストとか、国家的な陰謀とかは出て来ませんが、

ストーリー展開として、

雇う側の上級国民が悪役、
雇われる側の下級国民がそれに反骨する、という立ち位置になっています。

 

ダイヤモンド鉱山にて、メタンガスの爆発が発生、
それにより、作業員が閉じ込められますが、

元々は、
ガス発生を知らせる警報器を停止していた事が原因。

これは、
一々、ガス警報で作業を停めていたら、
効率が悪いという、経営者目線の理屈。

そして、
日当100ドルアップで、
現場の作業員に、目を瞑らせるという悪行。

 

お金を貰っていたら、
それは共犯でしょうか?

しかし、
立場の弱いものを、
金と権力で黙らせるという構図自体が、

命より、効率を重視している感があり、
理不尽さを感じます。

 

実際の、現実の我々の仕事でも、

個人の感情より、
組織の利益を優先し、
様々な無理難題がまかり通っています

それを思うと、
現場の作業員をも共犯者に仕立て上げ、
声を上げさせなくしているこの状況を、

部外者が不正と断ずる事に、
抵抗を覚えます。

 

また、
それを救出する人間も、

仕事をクビになったマイクとガーティの兄弟。

イラク戦争でのPTSDで失語症のガーティと、
それに付き合う兄のマイク。

そして、
鉱山に閉じ込められた兄を救う為に、
救出メンバーに加わったタントゥーも、

これまた勤めていた会社をクビになり、
警察署の留置場に入れられていたという、訳アリ人物です。

 

会社の現場マネージャーは、

警報器を停めていて、
ガス爆発事故を起こした事がバレるとヤバい!
という事で、

救出隊の邪魔をし、
作業員を見殺しにして、口止めする事で、
自らの保身を図ります。

 

こんな映画やドラマみたいな、
コテコテの作り物の悪役みたいなヤツ、
いる訳無いジャン、

と、
映画を見始めた、
10代の頃の私は思っていました。

しかし、
物語で、典型的な悪役として、
繰り返し描かれる「保身を図る上役」というのは、

いつの時代、
どんな場所にでも実在するからこそ、
消える事なく、描かれ続けているのです。

 

そして、
立場の弱い者は、

黙らされて、
上級国民のエサとなり、
理不尽な仕打ちで被害を被る事が殆どです。

それ故に、
典型的な下級国民として描かれるマイクの不撓不屈の精神が、
現実を生きる我々には、ある種のファンタジーとして、
憧れ、感情移入する対象として、
応援したくなるのです。

しかし、
我々も勇気を持って、
面倒くさがらずに、
困難やプレッシャーに対抗し、
せめて、声を上げ、行動する事が、
肝要なのではないでしょうか。

リーアム・じーさんの様にね。

 

ラストシーン、

ミッションの成功報酬にて、
ケンワース社製のトラックを手に入れたマイクは、

会社勤めに戻ったタントゥーに会いに来ます。

スポーツ用品とかを運んでいるというマイクに対し、
タントゥーは「すっかり落ち着いちゃって」と羨ましそう。

そしてマイクは言います
「上司も、タイムカードも無しさ」と。

 

「落ち着いた生活」というのが、何を意味するのかは、人それぞれ。

会社勤めの人間が、
明日も知れぬフリーランスを見て、
「落ち着いている」と称する事もあるのです。

そして、その勝利こそが、
困難を乗り越えた先の報酬なのです。

 

トラブルにも挫けず、
上級国民の理不尽さにも屈せず、
不撓不屈で困難に対処する、
ネバーギブアップ精神を謳う作品である『アイス・ロード』。

典型的な、
勧善懲悪のハリウッドアクション映画ですが、

それ故、王道の面白さもある。

そういう作品なのではないでしょうか。

 

因みに、
本作で、何も知らない会社の社長CEOのトマソンを演じた、
マット・サリンジャーは、

かの有名な、
小説『ライ麦畑でつかまえて』を書いた、J・D・サリンジャーの息子なのだそうです。

会社の社長を演じた人が、
反骨精神の象徴たる作品を作った小説家の息子というのもまた、

面白いですね。

 

 

 

 

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