1989年、ベルリンの壁崩壊。それと時を同じくしてベルリンにてミッションに臨んだロレーン。ロンドン、MI6の上司とCIAの男の前で、10日前のそのミッションの顛末をロレーンは語り出す、、、
監督はデヴィッド・リーチ。
アクションに拘りがある。
『ジョン・ウィック』(2014)にて、チャド・スタエルスキと共同監督を行う。
『デッドプール2』の監督の予定でもある。
主演のロレーン役はシャーリーズ・セロン。
美人だが何故かアクション映画が多い。
主な出演作に
『モンスター』(2003)
『イーオン・フラックス』(2005)
『ザ・ロード』(2009)
『スノーホワイト』(2012)
『プロメテウス』(2012)
『荒野はつらいよ~アリゾナより愛をこめて~』(2014)
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)
『ワイルド・スピード ICE BREAK』(2017)等。
共演に、ジェームズ・マカヴォイ、ソフィア・ブテラ、ジョン・グッドマン、トビー・ジョーンズ、エディ・マーサン等。
『アトミック・ブロンド』はアクション映画である。
なんと、
ほとんどのシーンで美人女優のシャーリーズ・セロン自身がアクションをしている。
美人が無双するのを見たい人にはオススメだ。
そして、本作はスパイモノでもある。
MI6(イギリス)
CIA(アメリカ)
KGB(ソ連)
DGSE(フランス)といった各国の情報機関が出てくる。
一応、そういう組織があると、名前だけでも知っておけば楽しめる。
当時のベルリンは東がソ連、
西がイギリス、フランス、アメリカの分割統治をしていた。
そして、東西の境界線に「ベルリンの壁」があった。
こういう知識もあればより楽しめるだろう。
まぁ、スパイと言っても情報戦で戦う部分より、腕力でものを言わせる部分が多いので、そのつもりで観て欲しい。
また、舞台は壁崩壊直前のベルリン。
東と西での色彩、風景の違いに注意して観るのも楽しい。
典型的イメージと言えばそうだが、同じ場所、同じ時代なのに別世界の様な雰囲気の東西ベルリンを過剰な強調で描いているのも面白いところだ。
ヴァイオレンス風アクションにスパイ風味を添えて美人が暴れ回る。
このフレーズにピンと来たら観て損はないだろう。
以下ネタバレあり
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アクションの質
本作『アトミック・ブロンド』のアクションシーンは、ほぼすべてシャーリーズ・セロン自身がやっているという。
唯一、窓からホースで飛び出して下階に飛び降りるシーンはスタントを使ったらしい。
正直、危ないシーンはスタントがやって欲しいという気持ちもあるが、最近のアクション映画は役者自身が演じる事が多い。
ハリウッドのバトル系アクション映画の流れとして、
筋肉モリモリ肉体派の主人公の時代~
テクニック重視の無敵のスパイの時代~
テクニック+神経症の仕事人の時代
的な流れがある。
そして、『ジョン・ウィック:チャプター2』や本作『アトミック・ブロンド』で観られるアクションは新しい流れ、ヴァイオレンス寄りである。
華麗なアクションテクニックというより、瞬間的な奇襲と躊躇せぬ残虐性で相手を制圧する、どっちかというと喧嘩人的なアクション主人公となっている。
『アトミック・ブロンド』自体はアクションバリバリでは無かったが、終盤のノーカット風に撮ったビルでの死闘など、主人公側にもダメージ描写があり、血みどろで掴み合う様なアクションがあった。
これからのアクション映画はこちらの路線に行くのか、
それとも、また別の方向へ行くのか、
どうなるか楽しみだ。
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舞台設定説明
1989年11月9日、ベルリンの壁崩壊。
第二次大戦後、1945年~1991年3月15日まで、米英仏ソの4カ国の軍が駐留していた。
それまで、ドイツ自体がその4カ国の分割統治となっており、第二次大戦後の冷戦、西側諸国対ソ連という対立軸の最前線におかれていたのがドイツなのだ。
(西ドイツは1955年に主権回復)
特に、首都のベルリンは複雑だ。
東ドイツ内にあったが、首都機能のあった大事な土地という事で、そのベルリン自体をさらに4カ国で分割統治していたのだ。
そして、そのベルリンをさらに東と西で分割していたのが、1961年に建設されたベルリンの壁であったのだ。
(どうやら西から東へは楽に通れても、東から西へは厳しかったらしい)
『アトミック・ブロンド』ではその複雑なベルリンを舞台に、
MI6(イギリス:秘密情報部)
CIA(アメリカ:中央情報局)
DGSE(フランス:対外治安総局)
KGB(ソ連国家保安委員会)
という、各国の情報機関が鎬を削っているという設定なのだ。
因みに、「007」シリーズのジェームズ・ボンドは「MI6」所属のエージェントである。
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つまり、どう言う事!?
アクションメインだと思って観ていたら、なんか「オチが分からなかった」という人もいるかもしれない。
解説してみたい。
以下、オチの解説ネタバレ
MI6所属の主人公ローレンは「世界中の各国機関のスパイ・リスト」の奪取と「二重スパイ、サッチェルの殺害」を命令されていた。
「スパイ・リスト」を手に入れた勢力が有利になるし、
「サッチェル」は情報を東側に流していたらしい。
ローレンは現地で独立して活躍するMI6のパーシヴァルと強力する様に言われるが、彼は独自の行動を取っている。
その独断行動でパーシヴァルは「スパイ・リスト」の確保に成功。
そのスパイ・リストで、ローレンがサッチェルだと知る。
パーシヴァルはサッチェル=ローレンを殺す為、
MI6本部には無断で(相手にバレるかもしれないから)ローレン殺害の罠を張る。
ソ連側に情報を流し、「スパイ・リストを記憶しているスパイグラス(人名)」の殺害のドサクサにローレンが死ぬ事を企む。
(ソ連側は西側にスパイグラスを渡す訳にはいけないのでスパイグラスを襲わざるを得ない)
その罠を切り抜けたローレンは、パーシヴァル=サッチェルであるかの如く会話をサンプリング(つなぎ合わせ)したテープを作って、彼を身代わりにして殺す。
MI6本部で報告を終えたローレンは、ソ連側と接触し、自分がサッチェルだと知る相手を殺す。
実はサッチェルの流していた「西側の情報」はアメリカが絵図を描いた「東西ドイツ統一への道」へ至る都合の良い情報であった。
その情報にソ連側が踊らされた事で、東西ドイツ統一が促進されたという訳である。
そう、実はローレンは
KGBに情報を流している、
MI6内に潜入している、
CIAのエージェントという三重スパイであったのだ。
結局この映画は、イギリス、フランス、ソ連の各国エージェントを始末して「スパイ・リスト」をも手に入れたアメリカ最強!!と言いたかった映画なのだ。
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信用出来ない語り手
『アトミック・ブロンド』はいわゆる「信用できない語り手」がいる映画である。
まず、冒頭で「ベルリン統一とは関係ない」と言いつつ、実はそれに貢献したスパイの話だし、
そのローレン自体、黒幕的存在であった。
それでも、作中にちゃんと情報が入っていたので理不尽さはない。
フェアさがないとただのどんてん返し映画になってしまうのだ。
それは、冒頭のシーン。
CIA職員カーツフェルドとはお互い初対面の会話をしていたのに、
物語の中盤で、二人は会って、旧知の如く会話していたのだ。
ちゃんと作中に情報が入れてあったので、ああそうかと思い当たって面白くなるのだ。
本作『アトミック・ブロンド』はアクションとしても新たな地平を目指しつつ、舞台設定を確認する事で歴史のお勉強も出来るという画期的なものであった。
スパイ風味もそえつつ「面白いモノ」を作ろうという気概が感じられる作品であり、
さらに進化をし続けるアクション映画の新たな一本であると言えるだろう。
シャーリーズ・セロンのアクション映画、こんな物もありました
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さて次回は『ゲーム・オブ・スローンズ』第一章第2話について語りたい。ぶっちゃけこっちの方が権謀術数に充ちている。