赤い館村に引っ越してきたメアリはおっちょこちょいな女の子。ある日、猫に誘われ迷い込んだ森の中で美しい花を見つける。それは、魔女すらも探し求めるという幻の花「夜間飛行」であった、、、
監督は米林宏昌。他の作品に
『借りぐらしのアリエッティ』(2010)
『思い出のマーニー』(2014)がある。
前2作はスタジオジブリの作品だが、同制作スタジオ解散にともないジブリを退社。
新たに設立されたスタジオポノックという会社にて本作『メアリと魔女の花』を作っている。
新しいチャレンジという訳だ。
原作はメアリー・スチュアート著『メアリと魔女の花』である。
主人公メアリ役の声優に杉咲花。
『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)
『無限の住人』(2017)等、最近の話題作に出演している。
共演に、神木隆之介、天海祐希、小日向文世、大竹しのぶ等出演している。
長年スタジオジブリで仕事をしてきた米林宏昌監督。
その絵のタッチ、とりわけ若者キャラは何も言わなければ宮崎駿作品だと間違える人もいるだろう。
そして、この『メアリと魔女の花』は、内容も過去の宮崎駿作品を彷彿とさせるものがある。
少女の一夏の冒険を描いている
本作。それは宮崎駿がかつて描き、そして、
観客が「こういう作品を観たい!」と長年思っている内容
を正確に具現化した作品と言えるだろう。
ドキドキワクワクもありつつ、さりとて敵は極悪人というわけでも無く、
家族連れでも安心して観る事が出来る。
とがった面白さがあるわけではないが、非常に安心して楽しめる本作。
疲れた日常にはこういう清涼剤の様な作品が丁度いい。
興味があるなら是非観て欲しい作品だ。
以下ネタバレあり
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ホウキは大切に!
かつて胸ワクワクのアドベンチャー作品を発表していた宮崎駿監督。
しかし、最近は哲学的な方向に寄っている感がある。
しかし、ファンはもっと、ストレートなアドベンチャーが観たいのではないのだろうか?
その要望を汲み取ったのが本作『メアリと魔女の花』である。
また、宮崎駿作品といえば飛行シーンが印象的。
そして、本作『メアリと魔女の花』でも飛行シーンに力を入れている。
その「動き」に関してはまだまだダイナミックな魅せ方が追求でき、発展途上な感じをうけた。
しかし、それでも面白いシーン、というか流れがあった。
とにかく、メアリはよく墜落する。
ジョセフ・ジョースターばりに空を飛ぶ度に落っこちるのだ。
メアリ自身は割と頑丈なので事なきを得ているが、この「まだ上手く空を飛べない、降りられない」という描写は、新しい環境で四苦八苦する監督自身が「飛行シーンを入れるケドまだまだ修行中なんです」と言っている様な感じがして面白かった。
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声優の話
『メアリと魔女の花』のメインの声優はほぼ全て俳優陣が占めている。
主演の杉咲花。最早定番の感がある神木君。
そして、マダム役の天海祐希、ドクター役の小日向文世などは特に上手く演じていた。
しかし、ちょっと違和感があったのが、老人役の声だ。
何しろ、俳優の声には「張り」がある。
声だけ聞くと若々しくて「画面のキャラクター」よりも20歳は若く感じてしまった。
実年齢はキャラクターと大差無いハズだがそれでも声だけで若く感じさせるとは、俳優の凄さを実感させる。
ちなみに黒猫ティブ役は大谷育江。
ピカチュウの人、と言えばだれしも納得するだろう。
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絵の話
『メアリと魔女の花』は絵も綺麗だ。
人物と背景が調和しているのがいい。
私個人の意見としては水彩画の様な優しいタッチの植物の描き方が大変いいと感じた。
コンピューターグラフィックを多用したハイライトキラキラもいいが、手書きに拘った感のある風景描写もやはりいいものだ。
また、今流行の「影無し演出」に逃げていないのもいい。
数多の映画を観てきた人にとってはストーリーが少し物足りないかもしれない。
しかし、基本に忠実な面白さを正面から描いた『メアリと魔女の花』。
カレーやトム・ヤム・クンに慣れた現代においては、
こういう真面目なお茶漬けの様な作品は逆に貴重で大変美味しい。
拡く皆に観て欲しい。
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さて、次回は『ツイン・ピークス』第17章について解説したい。