ある日、世界12ヶ所に同時に現れた謎の飛行物体。中にいるエイリアンとコミュニケーションを取る為、ウェーバー大佐は言語学者のルイーズや物理学者のイアン達を集める。「あなたは何しに地球に来たのですか?」、、、
『メッセージ』は、1998年に発表されたテッド・チャン著のSF短編「Story of Your Life(日本題:あなたの人生の物語)」を映画化したものだ。
監督はドゥニ・ヴィルヌーヴ。『ブレードランナー 2049』や『デューン』の続編も撮るようで、すっかりSF監督だ。
主演は『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』でエイリアンといちゃついていたエイミー・アダムス。他、出演ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカーと結構豪華だ。
出だしのねちっこい演出、そしてSF設定の数々。これらによって煽られたラストのオチ。
これを受け入れられるかで評価は変わる
個々人が観て、自分なりの評価を下さねばならない作品だ。
ちなみに私は割と好き
以下ネタバレあり
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ねっとり盛り上げ演出
序盤はまずねっとりと盛り上げてくる。
ルイーズ達が謎の構造物に向かうその初回。まず防護服で不安を煽る。特徴的なのが、ルイーズの苦しそうな呼吸音だ。執拗に繰り返えされるその音に、観ているこちらの不安感もいや増す。また、空気の様子を調べるイケニエのカナリア(だと思う)のピーピーうるさい鳴き声がイライラを追加してくる。
重力変化や無機質な部屋もエイリアン(=ヘプタポット)との対面をいやがおうにも盛り上げる。
しかし、実物と対面すると少し落ち着く。見慣れたタコ型エイリアンで、肌の質感も象を思わせる。なんだか優しそうだ。
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文字文化との交流
ヘプタポットは発声による言語表現を持たない。彼らは文字文化であった。その文字はまるで、筆で円をくるっと描いたかのようだ。
この、ヘプタポット文字の表現が素晴らしい。止め、跳ね、はみ出た線のそれぞれに意味があり、円で一つの文を表している。この視覚的説得力、白い靄の中に浮かびたゆたう墨汁が言語へと変換される美しさは、この映画の見どころの一つだろう。
それにしても、ルイーズは一ヶ月程度でその言語をマスターしたと考えるともの凄い。こちとら未だに英語すら不自由ですよ、、、
以下深刻なネタバレに触れます。鑑賞後に見る事をオススメします
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SF的一発ネタ
ねっとり演出や文字表現で脇を固め盛り上げておいて、実は隠していた一発ネタ。「ヘプタポットは何しに地球に来たのか?」「暴走直前の人類を止める事が出来るのか?」というストーリーラインすら隠れ蓑にしたあの演出。アレがこの映画のキモである。
娘の一生は過去ではなく未来の思い出だった。
あなたはいつ気がつきましたか?私はほぼ終わり頃、ルイーズが「あなた誰?」とか言った時でしたよ。ちなみに原作は読了済みです。いやぁこれは健忘症ですよ、、、
さて、こういうネタをやる時、いきなりポッと出のネタはフェアではない。本作の様にちゃんと作中にヒントをちりばめる必要がある。その時にはじめて、ネタが割れた時に心地よいしてやられた感を味わう事が出来る。
娘の絵や、ルイーズとイアンの会話「ヘプタポットは時制を持たない(つまり時の概念が無い)」「他の言語を覚えると、思考も変化する(ルイーズも時間の概念を飛び越える事が出来る)」等がその伏線にあたる。
私はストーリーのオチより、このSFネタを受け入れられるかどうかがこの作品の評価の分かれ目だと思う。
ルイーズはヘプタポット文字を学習する事で、娘の人生の物語を全て知ってしまった。しかし、その結末を知っていようとも、実際に体験するその一瞬毎を大切にしようと、これからの人生覚悟をもって臨むことを受け入れる。
あなたはどうですか?
こちらは原作小説、短編集です。
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まるで『ジョジョ』のプッチ神父の様だ。さて、次回はこちらも異種文化交流、『夜明け告げるルーのうた』について語りたい。