幻想・怪奇小説『吸血鬼ドラキュラ』ブラム・ストーカー(著)  これぞ最高峰!!最早必須教養の吸血鬼小説!!

 

 

 

英国、ロンドンの地所を購入する相手の事務処理をしに、異国を訪れた弁理士のジョナサン・ハーカー。その国の名は、トランシルヴァニア。行き先を告げる度、地元の人は十字を切って心配する。その行き先の名は、ドラキュラ城、、、

 

 

 

 

著者はブラム・ストーカー
19世紀末~20世紀初頭にかけてイギリスで活躍した怪奇作家。

ダブリン大学のトリニティ・カレッジの先輩に、
『吸血鬼カーミラ』を書いたレ・ファニュ、
後輩に
オスカー・ワイルドがいる。

日本で訳出されている他の著作に
七つ星の宝石』があるが、やはり、
本作『吸血鬼ドラキュラ』の印象が圧倒的に強い。

 

 

世界で最も有名なモンスターの固有名詞

それが、ドラキュラ。

 

この作品以降、
吸血鬼(ヴァンパイア)=ドラキュラという印象を強烈に印象付けた作品、

そう言っても過言では無い。
それが『吸血鬼ドラキュラ』なのです。

 

さて、最早定番の古典として認知されている本作。

いわゆる「古典」の作品は、教養で読むべき作品であり、
ぶっちゃけつまらない作品も多々あります。

この『吸血鬼ドラキュラ』はどうか?

 

平井呈一(訳)、創元推理文庫版の『吸血鬼ドラキュラ』で言うと、

ちゃんと面白い作品なのです。

 

後の二次創作の小説や映画の印象では、ど派手なアクション的な感じもある、
ドラキュラと、その宿敵ヴァン・ヘルシング。

しかし、本作は

あくまでゴシック・ホラー。

忍び寄る恐怖と怪異を描いた作品です。

 

訳文に独特のリズムがあり、
それを気に入るかどうかという好みの問題もありますが、

いわゆる名訳という部類に属すると私は思います。

 

日常を侵食して行く悪意の様子を、
日本語の名文で読める幸せ。

私如きが言うまでも無い事ですが、
本当に面白い作品。

何となく名前は知っているが、
読まずに放置している人にも、ちゃんと面白い作品としてオススメしたい、
『吸血鬼ドラキュラ』、読まずに死ねないですよ。

 

 

  • 『吸血鬼ドラキュラ』のポイント

ゴシック・ホラーの3点盛り

吸血鬼=ドラキュラを印象付けた、圧倒的キャラクター性

友情、努力、勝利

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • 3幕構成のゴシック・ホラー

本作『吸血鬼ドラキュラ』は3幕構成のゴシック・ホラー。

一冊で、3冊分の展開が楽しめます。

基本、全篇が日記や記録文による回顧形式で語られる本作、

第一部:
ジョナサン・ハーカーがトランシルヴァニアのドラキュラ城に囚われ、恐怖の体験をする。

第二部:
謎の衰弱を見せるロンドンのルーシー・ウェンステラを救おうとする、
彼女の婚約者達とヴァン・ヘルシングの奮闘。

第三部:
ジョナサンとその婚約者ミナ、
アーサー、キンシー・モリス、ジャック・セワード、
そしてヴァン・ヘルシングがドラキュラ伯爵と対決する。

という展開をみせます。

これが面白い。

罠にかかり、囚われとなった者の恐怖を描く第一部
平和で幸せな日常が浸食され、汚されてゆく第二部

各々ゴシック・ホラーとして単品でも名作の雰囲気を携えているのですが、

この第一部のキャラクターと
第二部のキャラクターが集合して、

それぞれドラキュラに煮え湯を飲まされ者同士、
人類に対する義侠心にてドラキュラ討伐を誓うという、
何とも熱い展開のリベンジを見せるのが第三部なのです。

 

特に、一部と二部のつなぎの滑らかさ、
そして、キャラクターが結集して悪を討つという少年漫画的な展開、
それぞれのキャラクターの回顧形式で語られる、多角的な視点、

映画や、後の二次創作では見られないこの構成の面白さこそ、
実は『吸血鬼ドラキュラ』が名作たる所以だと思われます。

 

  • 吸血鬼に対抗せよ!!

吸血鬼の特徴や、
吸血鬼への対抗策など、
現在では「当たり前」的な描写が本作では多数見られます。

 

人間以上の怪力、
蝙蝠、狼、霧、虫などに変幻する、
日中は出歩かず、棺桶の中で眠っている、
血を吸い、精気を奪う事で自らは若返る、
相手に自分の血を与える事で、下僕にする、
血を吸われて死んだ者はヴァンパイアとなる、
鏡に姿が映らない、
ニンニクを嫌う、
十字架や、聖餅をきらう、
流水を渡れない、
招かれなければ中に入れない、
眠っている間に心臓を突き刺すば殺せる etc…

 

そもそもの吸血鬼伝説の起こりはいつなのか?
何なのか?

それが分からなくとも、
恐らく大ベストセラーとなった本作が「吸血鬼」のテンプレイメージを規定した事は想像に難くないです。

こういうお約束を古典で見つけるのは、
何か、ちょっと面白いというか、嬉しい感じがするのは私だけでしょうか?

 

 

 

吸血鬼の文学的な嚆矢となった作品は、
バイロン卿の主治医ポリドリが、バイロン作として発表した『吸血鬼(The Vampire)』(1819)。

バイロン卿の別荘、ディオダディ荘にて「怪談を作ろう」という話が契機となって作られたこの作品。

因みにこの時、メアリ・シェリーが手掛けた作品が、
『フランケンシュタイン、或いは現代のプロメテウス』(1818)です。

そして、大学の先輩、レ・ファニュが書いた『吸血鬼カーミラ(Carmilla)』(1872)に影響され、

長年暖めていたアイデアを、作品としたのが、
ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』なのです。

ブラム・ストーカーはアミニウス・ヴァンヴェリという教授から、トランシルヴァニアの伝説を聞き、
そこからドラキュラ伯爵のキャラクターを作り上げていったと本書の解説に書かれていました。

アミニウス・ヴァンヴェリと言う名前、
そして、ブラム・ストーカーの本名、エブラハム・ストーカーという名前を合成した者が、
ドラキュラの宿敵のエブラハム・ヴァン・ヘルシングなのでしょうね。

一言で、吸血鬼モノの起源と言われる『吸血鬼ドラキュラ』でも、
これだけの先人の歴史があり成り立っているものです。

 

これだけの歴史があるからこそ、
納得の面白さがある正に古典的傑作、
それが、『吸血鬼ドラキュラ』なのです。

 

 

書籍の2018年紹介作品の一覧をコチラのページにてまとめています

 


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