孤独のグルメ Season2 第十一話
足立区北千住のタイカレーと鶏の汁なし麺
監督:宝来忠昭
脚本:田口佳宏
出演:
井之頭五郎:松重豊
鈴本:長谷川博己
女性店員A:佐津川愛美
女性店員B:上野なつひ
吉田美由紀:とよた真帆 他
ふらっとQUSUMI:久住昌之
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*タイムラインはBDソフト準拠となっております
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ドラマパートあらすじ
足立区北千住にやって来た井之頭五郎。
千住と言えば、日光街道と奥州街道の最初の宿場町。
松尾芭蕉もここから奥の細道を歩き出したとか。
と言っていた五郎さん、早速、
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「それにしても、腹が、減った」(01:10:45)
ポン、ポン、ポォン。
「店を、探しましょうか」
宿場町ということで、ならではの飯を探す五郎さん。
しかし、通りがかったタイ料理の店から女性が出てくるのを見かけ、足を止める。
「女子ってタイ料理好き、多いよなぁ、俺も好きだけど」
そして思い出す五郎さん。
回想。(01:13:18)
知人の吉田さんの買い物に付き合った五郎さん。
二人で喫茶店で一休み。
「おかげで、いい雑貨手に入ったわ」と吉田さんは満足げ。
「それにさぁ、ちょっとデート気分だったしね」
と五郎さんをからかう。
その吉田さんの知人がアジア系のカフェをやるという。
その相談に乗ってくれないか、と五郎さんは頼まれていたのだ。
そして、その友人は、タイ系だと言う。
「うん、丁度良い。タイ雑貨の現地調査にもなって一石二鳥」
「ようし、宿場町の飯には程遠いが、ここにしよう」
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タイ国料理 ライカノ(01:15:02)
店内を見渡すに女性ばかり。
しかし、もう一人だけ男性客がいる。
「おお、あそこにも一匹狼」
その眼鏡とループタイの男性の隣に座る五郎さん。
隣の眼鏡の男性はメニューを眺めて迷っている。
「女の方が意外にスパッてメニュー決めて来るんだよなぁ」
他の席の女性客はあっという間に決めるが、
眼鏡の男性は「ちょっと待ってもらっていいですか?」とまだ迷っている。
その、男のほうが優柔不断な様子を見て、再び思い出す。
「ん?」
回想。(01:16:54)
メニューを眺め、何のケーキを食べるか迷っている五郎さん。
「ねぇ五郎ちゃん、いつまで悩んでるの?」
「もうちょっと待って」
しかし、「時間切れ」とメニューを取り上げた吉田さん、
自分には黒糖バナナチーズケーキ、
五郎さんにはフォンダンショコラバニラアイスを勝手に注文する。
「本当、男って優柔不断なんだから」
と言い捨てられる、、、
人の事を笑えない五郎さん、おもむろにメニューをめくる。(01:17:27)
隣の男性は遂に注文。
どうやら、番号で注文するシステムらしい。
一仕事終えた様に、満足げに頷く男性。
五郎さんは男性の注文をメニューで確認してみる。
「そうきましたか」
男性と目が合った五郎さん、軽く会釈する。
「ならばこちらは」
と、メニューを本格的に眺める五郎さん。
しかし、サラダも、飯物も、麺も一杯あって攻め手が決まらない五郎さん。
頼みの綱のオススメシールすら迷いの種になっている。
「ん、まずい、ただ全部見ちゃった」(01:19:30)
ふと気付くと、隣の男性がこちらを見ていた。
「こっちの気持ちが読まれてる、負けられん」(01:19:35)
奮起する五郎さん「整理しよう」
「まず、野菜を入れよう」
「そこに、タイらしい辛さも欲しい」
「うん、そんな感じで攻め込むとするか」
五郎さん「すい(ません)」と手を挙げて注文しようとするが、
声を掛ける前に、既に店員さんがスタンバっていた。
37番のカイラン炒め、56番の牛肉とタイスパイシーハーブ、89番のライスを注文する。
そして、
3番:タイ北部ソーセージと
7番:タイ東北部ソーセージの違いを尋ねる。
3番:5種類のハーブと香辛料が
7番:お肉が多め、ニンニクとパクチー入り。
しかし、五郎さん
「説明を受けても、イマイチピンと来ないなぁ、オススメシールを信じよう」
五郎さん、7番とタイティーを頼み注文を終える。
(その間、隣の男性は聞き耳を立て、自分もメニューで五郎さんの注文を確認していた)
女性客の多い店内で五郎さんは思う
「戦友がいなかったら、相当心細い事になっていたかも」と。
その、隣の男性の注文が来る。(01:22:11)
香りを嗅いで、満足げな様子。
「イカ、エビ、鳥、良いバランスじゃないか」と五郎さん。
男性はゆっくり味わっている。
「ほう、立てた戦略が上手くいっている様だ」
「美味そうに食べるなぁ」と男性を評する五郎さん。
男性の独白。(01:23:30)
「美味い、ニンニクがガツンと効いてるぞ」
「んん!?」何かを感じ取った五郎さん。(01:24:44)
それは、シンパシーか?
第六感か?
再び目が合い、会釈する二人。
気のせいか?と五郎さんは首をかしげる。
男性は帰ったらしい。
「束の間の戦友が去り、男独り」
先ほどまで男性がいた席に新たに女性客が座り、直ぐさま注文をする。
「やっぱり女性、スパッと注文する」
「最初から決めて来てるんだろうなぁ女子は」
「常連か、何かで読んで来たか」
「先ずは、メニューを組み立てる楽しみ、食の戦略を楽しんだ方が、良いんじゃないのかぁ」(01:24:44)
そうこうする内に注文の品が来る。
先ずは、タイ野菜(カイラン)の炒めから、頂きます。(01:25:32)
「空芯菜(クーシンサイ)っぽいなぁ」
シャク、シャク「うん、うん」シャク、シャク「美味い」
タイ東北部ソーセージ焼き。(01:26:25)
「ちょっとオツマミ臭いなぁ」
「もっとこう、フランクフルトみたいにガブッと行きたい気分なんだが」
「でも、ドイツよりも断然、味が濃いぞ」
「濃い分、こっちの方がおかずっぽい」
牛挽肉とタイスパイシーハーブ。(01:27:08)
「これが楽しみなんですよ」
「ほう」うん?
フン、フン!と咽せる五郎さん。
「おお、辛い辛い、あ、後から来る、辛さが追っかけて来る」
タイティーを飲んで一旦落ち着く五郎さん。(01:27:46)
額に汗がにじんでいる。
「ムエタイだったら、いきなりハイキックもらっちゃった様な感じ」
「コイツは牛挽肉かけご飯にするべきだな」
五郎さんはライスと一緒に食べる五郎さん。
「正解、この戦法、あたり」
「いい、これいいゾ、スパイスのキック力を和らげながら絡め取って行く感じだ」
「でも、やっぱり来るなぁ」オァハ「辛っ」
五郎さん、隣の女性が辛い物を平気で食べている様子に、
「きっと生物学的に男より刺激に強いんだな」
と驚く。
ご飯を半分残している五郎さん。
「やっぱり、タイカレーは行っときたいかなぁ。ライスもあることだし」
「すい(ません)」と言う間もなく、
やっぱり店員さんが待機していた。
「ハイ」
78番のタイカレーを頼む。
何となく、隣の女性達の会話に聞き耳を立てる五郎さん。
そうしている内、
注文の煮込み鶏肉とジャガイモカレーが来る。(01:31:14)
容器にも注目しつつ、いかにもタイカレーな色に五郎さんの期待が膨らむ。
「ジャガイモ、デカイ」
「うん、そうそう、タイカレーって、優しい味なんだよなぁ」
「さっきの牛挽肉が攻めのエスニックなら、タイカレーは守りのエスニックだ」
「うん、柔らかい、絡め手で攻めて来る」
「カレー味チキン、嬉しい」
「うん、いい、コレ、美味い、今日の戦略外れ無しだ」
「カレーは強い。何処の国の誰と戦っても、最後には自分の世界に引きずり込んで、勝つ」(01:33:39)
「そして俺も、この香りに抗えず、気が付けばがっついている」
ハァとお腹をさする五郎さん。
隣の麺を食べている女性を眺める。
「麺にも気になってるのがあるんだよなぁ」
「すい…」
今度は店員さん、待機していなかった。
「すいません」
「ハーイ」と店員さん、「まだ召し上がるんですか!?」と驚きの様子。
そんな店員さんに、92番を注文する。
その92番は汁なし麺 鶏肉トッピング。(01:35:15)
「タイの汁無し麺、お初」
むちょっ、むちょっ、と混ぜる五郎さん。
「あ、何だろう、甘辛醤油?思ってたのと違う」
「初対面なのに直ぐに打ち解けて来る様な味だ」
「確かに異国風なのに、何とも丁度良い味付け」
ハァご馳走様でした。
お会計に席を立つ五郎さん、
「店員さんも有り難う御座いました」と言うが、
「あ」と一言、再び席に戻る五郎さん。
回想。(01:37:04)
フォンダンショコラバニラアイスを食べる五郎さん。
「ねぇ五郎ちゃんってさぁ、男なのに甘いもん好きだね」
まぁ「甘い物に男も女も無いと思うが」
吉田さんが言うには、
その友達がアジアンカフェやりたいと言い出したのはタイのスイーツに嵌ったからとの事。
五郎さん、デザートも食べるべくメニューを眺める。
「やっぱり、ココナッツミルクなんだろうなぁ」
「てことは、カノムトイ、という奴か、焼きプリンか」
五郎さんの選択は、カノムトイ、
店員さんもにこやかに対応。
2つがセットとなっているカノムトイ。(01:37:52)
容器を触った五郎さん、「熱っつ」と、思わず一言。
「あ、甘い、美味い、熱々」
「さて、こっちは、アレ?味が違うような…?」
「見た目は同じなんだが、気のせいかな?」
はぁ、美味かった、と漸く食べ終えた五郎さん。
「ちょっと深入りして食い過ぎたが、今日の戦は俺の大勝利と言えよう」
退店(01:39:44)
「久しぶりのタイ料理、楽しかったなぁ」
と満足げな五郎さん。
松尾芭蕉の像を見て思いを馳せる、
「ここから芭蕉が、歩いて東北かぁ」
と言い、一礼して去って行く五郎さんであった。
が、「アレ?今日、俺って何の用事で北千住に来たんだっけ?」と自問自答。
「あ、そうだった、このまま帰る所だった」
用事を思い出し、行く場所、見る物を確認した五郎さん、
「間に合うかなぁ」と思いつつ、悠々と歩み去って行くのであった。
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ふらっとQUSUMI(01:41:06)
タイ国料理 ライカノに訪れた久住さん。
*2013年当時のデータなので、現在も営業中なのかは要確認
本場タイ国産のメニューは、料理だけで130種類以上。
メニューの多さに久住さんもお悩み中。
「参ったなぁ、全然決まらないな、コレ」
結局、先ずはタイのビールであるシンハービールを頼んだ久住さん。
「しょうがないなぁ」と、一杯。
先ずはグリーンパパイヤのサラダ(ソムタム)を食べる。
*パパイヤの実を削って千切りにしたものを、
お酢に漬けたパプリカ、レモングラスの葉を溶かしたスープなどで仕上げている。
「美味しい」
「歯応えが凄いイイ」
「もっと甘い物を想像してたら、すっぱ辛い。タイだねぇ」
一番人気という空芯菜の炒め。
砂糖、唐辛子、タイ風ガーリックで絡めています。
「これは初めて食べるぞ」
「中華料理の空芯菜と全然違うんですね」
「もっとね、香ばしいって言うか、それで少し辛くて、でもマイルドな辛さ」
辛いものにビールが合う、そして進む久住さん。
鳥肉のグリーンカレー。
鳥肉、たけのこ、ピーマン、パプリカと具沢山。
「これは女子好きするカレーですね」
そして春雨魚貝類のサラダもコリアンダーをまぶして食べた久住さん。
「焼きそばみたいに食べちゃうな」
そして、タイのビールに辛いものが合う。
「辛いから、辛いからって飲んでるっていう、あー辛い」
と、饅頭怖いっぽく言う久住さんでした。
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声に出して言いたい!五郎さんの名台詞
今回の「声に出して言いたい」五郎さんの名セリフは、
「先ずは、メニューを組み立てる楽しみ、食の戦略を楽しんだ方が、良いんじゃないのかぁ」(01:24:44)
これぞ、『孤独のグルメ』の井之頭五郎の哲学。
何も考えずに、決めつけで食事を注文する輩と同席した時には、
是非ドヤ顔でこのセリフを決めたい。
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感想と解説
本エピソードは、その殆どがタイ料理屋、ライカノの中で展開されます。
しかし、隣の男性客との絡み、五郎さんの回想、男性から見た女性観、女性から見た男性観と、なかなか内容は盛り沢山となっています。
五郎さん曰わく、
「女性って辛い物好きだよなぁ、敵わない」
「案外、女性の方がメニューとか、スパッと決めるよな」
と、女性のイメージを語ります。
そして、五郎さんの知人の女性、吉田さんは
「本当、男って優柔不断なんだから」
「五郎ちゃんってさぁ、男のくせに甘い物好きだよね」
と、男性のイメージを語っています。
まぁ、実際は全て人それぞれ何ですが、
自分の思う通りの事が目の前で起こったら、
それを都合良く拾い上げ自説の根拠とし、自説を強化してしまう、
という事が起こってしまいます。
いわゆる、「偏見」という奴ですね。
今回のエピソードでは、
その偏見が確立してゆく様が見られて、興味深いストーリーとなっています。
メニュー選びに迷う男性客。
彼氏が出来たら、即ダイエットを止めたという、無駄を省いた即決ぶりを語る隣の女性客。
五郎さんと吉田さんの思う、男女のイメージ通りの事が「ライカノ」内で展開され、
度々五郎さんが回想に引き込まれる様子は、特徴的な演出です。
過去の回想と、現在のライカノが、
時間が直線で繋がっているというよりは、
並行して存在しているイメージなんですね。
そう言えば、こんな事を言った、
こんな事を言われた、
その回想通りに現在をなぞる五郎さんの様子に、何だかちょっと奇妙な感じを受けます。
勿論、本人は自分の選択だと思ってやっているのですが、
自意識というものは、無意識的に過去の出来事に影響を受けているという事を物語っているのです。
自意識と意思決定、その難しさを感じさせますね。
また、面白いのは、
五郎さん、男がメニュー選びに迷うのは、戦略なのだと言っている点です。
メニューを即断する女性に対して、五郎さんは思います
「先ずは、メニューを組み立てる楽しみ、食の戦略を楽しんだ方が、良いんじゃないのかぁ」(01:24:44)と。
これは、五郎さんが持つ哲学であり、
その実、『孤独のグルメ』というドラマ自体のテーマでもある重要なセリフです。
とは言え、
ふらりと入った店で、メニューを見て、メインを選び、そこからバランス良く注文を展開する事に面白さを感じる人もいれば、
先に食べるものを決めておいて、無駄な労力を省いた方がいいと考える人もまた、いるのです。
この、食のスタンスの違いを、男女差という形で分かり易く表現した、
今回のエピソードはそういう話なのだと思います。
さて、それとは別に、普通に注目なのは、五郎さんに先んじて座っていた隣の男性。
眼鏡にループタイ、演じているのは長谷川博己。
この人物、実は同じTV東京系列で2011年に放映されたドラマ『鈴木先生』の主人公、
鈴木先生をモチーフにしたキャラクターなのです。
(一応、エンドロールの名前は「木」じゃなくて「鈴本」になっています)
この作品、
担任の鈴木先生と、中学2-Aの生徒との間で交わされる、
教育と信念と性に関する丁々発止のぶつかり合いが素晴らしく面白い作品なんですが、
長谷川博己演じる鈴木先生、
生徒や他の先生と対する時は冷静に見えても、
その心の中はフル稼働の独白の長ゼリフに溢れた饒舌なキャラクターとなっています。
謂わば、
料理に対して五郎さんが抱く情熱と同じ物を、
鈴木先生は教育に向けているのですね。
その意味で、この二人は正に同じ志向の人物。
五郎さんが鈴木先生(ドラマ内では鈴本ですが)の独白を、
まるで「ガンダム」のニュータイプの様に感じ取ったのはこういう背景があったのです。
好きな作品2つの思わぬコラボレーションに歓喜しましたね、私は。
因みに、
今をときめく土屋太鳳さん。
彼女の連続ドラマレギュラー初出演作が、
その『鈴木先生』だったんです。
『鈴木先生』のメインキャラであるミステリアス&チャーミング少女「小川蘇美」を演じた事が後のブレイクに繋がったと、
私は今でも思っています。
この回のゲストは他に、吉田役のとよた真帆さん、
そして、店員Aを演じた佐津川愛美さんと、かなり豪華ですね。
佐津川愛美さんと言えば、
映画の『ヒメアノ~ル』と『貞子vs伽耶子』のイメージですね。
これらも面白い作品なので、興味がある人は是非ご覧下さい。
色んな意味で盛り沢山だった今回のエピソード。
印象深いです。
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