エス・エフ小説『われらはレギオン2 アザーズとの遭遇』デニス・E・テイラー(著)感想  ねずみ算的に増えて行く!?同一人物達のスペースオペラ!!

 

 

 

複製人(レプリカント)のボブは、宇宙に拡がった。ファースト・コンタクトを果たしたボブは、その種族、デルタ人を観察する。一方、滅亡へのカウントダウンが始まっている地球からの避難計画も進行、植民星も見つかり、順風満帆に見えるのだが、、、

 

 

 

著者はデニス・E・テイラー。
本シリーズの第1巻、『われらはレギオン1 AI探査機集合体』にてデビュー。
本書は、それに続くシリーズ第二作目である。

 

 

前巻では波瀾万丈の展開にて、
宇宙の大冒険に繰り出したボブ。

第二作目となる本巻はその正統な続篇、
前巻の続きをそのまま楽しめます。

 

さて、今回は、導入部が必要ない続篇ならでは、

初っ端から、物語は展開して行きます。

 

まだるっこしい世界観の説明などは無し。

気になる続きが続々と進んで行きます。

 

そう、
本作の特徴と言えば、

同時多発展開する数多の事例。

異星種族の観察、
地球からの脱出計画、
敵対レプリカントとの戦闘、などなど、、、

 

それぞれで一冊のSFが書けるネタを、
惜しげも無く一つの物語で堪能できます。

そして、
本巻で新たに展開されるのは、

生物が滅亡し、
鉱物が収奪され尽くした星系の謎。

 

様々なエピソードが同時進行しつつ、
徐々にこの謎がメインに踊り出て来る印象です。

 

さらに、
本シリーズの特徴としては、

多数の同一人物による数多の大冒険。

 

本巻でもその印象が強いですが、

むしろ、強いどころかエスカレート!

 

最早、

途中でメモしなければ見失う程に登場人物が増えていきます。

しかも、
それが主に同一人物の複製というね、、、

 

この登場人物の把握が、煩わしい反面、面白くもあります。

さらに、
本巻は増えた登場人物の確認の為か、

巻末に登場キャラクターが50音順にて収録されている親切仕様。

 

細かい所ですが、
こういう心配りは嬉しい所。

 

さて、そのレプリカント主人公のボブのキャラクターは、
ちょっとオタク気味。

ちょいちょいスタートレックネタなど、
如何にもオタク的なネタを挟んできます。

 

この、
陽気で楽天的、
基本的に社交的なオタク気質なボブ(と彼の派生人物)のキャラクターを愛せるかどうかが、

本書を気に入るかどうかの要因の一つとなります。

 

とは言え、
その基本は、

色々ごった煮の
エピソード満載スペースオペラ!!

 

なので、
ぶっちゃけ、何も考えないでも単純に楽しめます。

やっぱり、
読んで面白い作品が正義なのだ!

そいういう事を思い出させてくれる作品、

それが『われらはレギオン2 アザーズとの遭遇』なのです。

 

 

  • 『われらはレギオン2 アザーズとの遭遇』のポイント

基本はストレート、でもネタはてんこ盛りのスペースオペラ

多数のエピソードの同時進行

多数存在する、ボブ派生のレプリカントのキャラクターの把握

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • ボブの宇宙

『われらはレギオン2 アザーズとの遭遇』。

本作は、前作『われらはレギオン1 AI探査機集合体』を継承し、その直接の続きとなっています。

その本書の特徴と言えば、
数多のエピソードの同時進行。

原生異星生物の観察、
植民星を探す冒険、
敵勢レプリカントとの戦闘、
地球での折衝、
そして、地球からのエクソダス、
さらに、本巻のメインとなる、
宇宙の惑星を収奪し尽くす「アザーズ」との遭遇と対決 etc…

この、
一つのエピソードでも一冊のSF小説が書けるネタを、
同時多発的に展開するのが本シリーズの魅力。

さらに全てのエピソードの視点人物(主人公)を、
「ボブ」という人物のレプリカント(複製人)
つまり、一人の人物が全て担っているのが、一ひねり効いた面白さを演出しています。

 

惜しげも無くネタを突っ込み、
それを突飛な設定にて補完する、

このアイデアが本書を特別なものにしています。

 

さて、
その物語が展開して行き、

ボブの活動範囲が拡がるにつれ、
それに比例してボブのレプリカントがドンドン増えて行きます。

最早、
普通に流すだけで読んでいたら、
「あれ?このボブは何をしているボブだっけ?」と混乱してくること確実

何せ、ボブのレプリカント同士は性格がほぼ同じなので、
キャラの作り分けが厳密ではないからです。

この混乱を乗り越えて、
個人的にメモを取るなり、
巻末の系統図を参考にするなりして、
「ボブの宇宙」(ボビヴァース)の系統樹を把握する事が、

本シリーズの煩わしくも、楽しい部分なのです。

 

とは言え、
それが面白いのは、本書が物語だからこそ。

実際に、
一人の人物の複製人が人類が進出する宇宙において、
その全ての責任を(自主的にですが)担っているのは、
健全とは言えません。

(まぁ、本書では、同一人物のレプリカントと言えど、その性格が微妙に違うという設定はありますが)

例えば、安倍晋三が全宇宙に進出して、
各所で総理づらされたら嫌でしょう?

それと一緒です。

まぁ、フィクションはフィクションで楽しむとして、

この後、
他のレプリカントである
ブラジルの「メデイロス」や
オーストラリアの「ヘンリー」、

そして、今後レプリカント化すると予想される
「バターワース」や「ブリジット」が、

「ボブの宇宙」にどの様な多様性をもたらすのか?

その辺も今後の注目ポイントだと思われます。

 

 

 

基本は古き良きスペースオペラ。

冒険あり、
戦闘あり、
研究と探索あり、
恋あり、
謎あり、
交渉あり、と、

色々な要素がごった煮で、正にエンタテインメントの見本の様な作品、『われらはレギオン2 アザーズとの遭遇』。

ネタを沢山詰め込んでいるのに、
それが無駄になっていない豪華さ、

このSFの満漢全席みたいな美味しさが本作の特徴です。

これでシリーズ第2巻。

ラスト、どの様な終わり方を迎えるのか?

次巻も、期待しつつ待ちたいです。

 

 

前巻について語ったページはこちら

 

書籍の2018年紹介作品の一覧をコチラのページにてまとめています

 

*こちらは前巻

 


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