メイナー農場の動物たちは、今は亡き豚のメイジャーの理念を受け継ぎ、人間を追い出して革命を起こした。農場の名前も「動物農場」とし、全ての動物が守るべき「七戒」を定め自由と平等と平和の国を築いたはずだったのだが、、、
著者はジョージ・オーウェル。
伝説の名著、『一九八四年』の作者だ。他の著書に、
『カタロニア賛歌』等がある。
本書『動物農場』は
おとぎ話風の痛烈な社会風刺である。
作者の念頭には、とある国家が厳然とある。
しかし、本書『動物農場』が凄いのは、特定国家、特定社会に限らず、
あらゆる権力の腐敗に通底するものを描いている所だ。
昔の作品、おとぎ話と捨て置けない。
現在の日本、いや、
正に自分の置かれている立場は動物となんら変わらない
という事を見せつけてくる。
耳が痛い所では無く、誇張抜きで震え上がる恐ろしい作品である。
全ての人間が読むべき名著と言えるだろう。
以下ネタバレあり
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今回のハヤカワ文庫新訳版の『動物農場』には「作者の序文」と「訳者の解説」が記されている。
どちらも素晴らしいので、私がここで今更解説をする事は屋上屋を架すと言える。
しかし、読んだ人間それぞれが独自に何かを思う、それが文学の醍醐味だと思うので、敢えて私もこの『動物農場』について思う事を語りたい。
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本書のモデル
本書『動物農場』はソビエト社会主義共和国連邦、通称ソ連を意識して作られている。
『動物農場』に出てくるブタのメイジャーはレーニン。
スノーボールはトロツキー。
そして、ナポレオンはスターリンという訳だ。
しかし、その歴史的背景を知らずとも面白いのが本書の凄い所だ。
勿論、私も知らずに楽しんだ口である。
むしろ、『動物農場』を読んでソ連の歴史を確認したタイプである。
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闘争せよ!
著者・ジョージ・オーウェルの念頭には「ソ連の社会主義」に対する批判があり、その意図が作品に込められている。
しかし、『動物農場』により想起される社会状況はそれに留まらない。
中には、資本主義社会の風刺だと捉える人もいるだろう。
私などは、かつて働いていた職場を思い出した。
社長はYESマンを周りに侍らし、YESマンはYESマンを重用し、上にはおべっかを使い下をこき使っていた。
現場を省みず言葉巧みに「社内ルール」をどんどん付け加えてゆき、自らは自分が作ったルールの「書類仕事」とやらに邁進する。
まさに『動物農場』のブタヤロウそのままであった。
本書の「ボクサー」なんかは、正に資本主義のエサそのものであろう。
真面目なヤツほど卑劣漢の喰いモノである。
私もずっと体調が悪かったのだが、仕事を辞めたら快方に向かった。
あのまま続けていたらボクサーの様に死んでいただろう。
だが、である。
この様な状況を作り上げたのは、下で働く人間にもある種の責任があるのだ。
経営者の横暴を放っておいてはいけない。
おかしい所はおかしいと言わなければならないのだ。
しかし、それには多大なエネルギーがいる。
何しろ、自分を正しいと思わせたい尊大なヤツが相手である。
何を言っても無駄な時もあるだろう。
逆に自分がおかしいと吹聴される事もあるだろう。
クビをちらつかせてくる場合もあるだろう。
それでも、声だけ大きいYESマンに負けて本来の正しいルールを見失ってはいけない。
何故なら、闘争を止めたとき、相手の増長は天井知らずに膨らんでゆくからだ。
だから、究極的にはその対処は4つに絞られる。
諦めて、思考停止で従うか、
あくまで闘争を続けるか、
新たに革命を起こすか、
出て行くか、である。
今の時代、一人で生きてゆくのは困難である。
だから、人は会社に入り、強者の庇護をもとめる。
しかし、その代償を多く払いすぎてはいないか?
むしろ、一人で生きるより、さらなる困難を課せられてはいないだろうか?
考え、自らの立ち位置を見失わず、抵抗せよ。
本書『動物農場』はその事の大切さを教えてくれる。
『一九八四年』も必読の名著だ。
しかし、私の頭の中では『華氏451度』とごっちゃになっているのであった。
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さて次回は、こちらもおとぎ話だが方向性は全く違う映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』について語りたい。