エス・エフ小説『日本SF傑作選2 小松左京』感想  オチなんて関係ぇねぇ!!SFの大ネタを喰らいやがれ!!

 

 

 

いよいよ本土に上陸した敵軍に、彼は最後まで抵抗の意思を示す。行き会った一般人を脅し食事にありつくが、思わず眠った隙に軍を呼ばれてしまう。彼は逃げ出す。日本の敗戦はあり得ないのだ、、、

 

 

 

著者は小松左京
代表作に
『復活の日』
『果てしなき流れの果に』
『日本沈没』
『虚無回廊』等。

編者は日下三蔵
第一世代のSF作家の代表作を集めた傑作選のシリーズ。
そのラインナップは

日本SF傑作選1 筒井康隆
『日本SF傑作選2 小松左京』(本書)
『日本SF傑作選3 眉村卓』
『日本SF傑作選4 平井和正』
『日本SF傑作選5 光瀬龍』
『日本SF傑作選6 半村良』

と、順次発売される予定。
(本来は星新一も入れたかったそうだが、新潮社との独占契約の為無理との事)

 

第二弾である本書で紹介されるのは小松左京。

そのラインナップは著者のデビュー直後、

60年代の短篇、中篇、長篇をチョイスしている。

 

実に、50年も昔の作品。
しかし、そのSFのネタとパワーは全く色褪せていない。

若かりしパワーというか、

整合性やオチを気にするより、
SFの大ネタを大上段より振りかぶった

 

という印象を受ける作品群である。

後には大阪万博に参加したり、SF新人賞を設立したり、
そのSF界への影響力が大きかった著者のみずみずしい初期作品集。

著者・小松左京を知る切っ掛けとしても面白い作品集と言えるだろう。

 

 

以下内容に触れた感想となっています


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  • 作品解説

本書『日本SF傑作選2 小松左京』は、
著者の60年代に発表された
短篇6篇、中篇1篇、長篇1篇を収録している。

簡単に解説してみたい。

地には平和を
著者のデビュー作。
戦争という感覚が未だリアルに残っていた時代の作品。
今見たら滑稽だと感じる様な特攻精神も、
その時代の若者の犠牲の下に築かれた、現代の平和な時代から見るからこその滑稽さという転倒した関係性が描かれている。

時の顔
時代と舞台を縦横に横断したSFだからこその作品。
時代劇がSFに転換する鮮やかさが見事。

紙か髪か
世界から紙が無くなったら?というワンアイデアをスラップスティック的に描いた作品。

御先祖様万歳
山の中にワームホールがあったら?というワンアイデアで描かれた作品。

お召し
世界から大人がいなくなったら?というワンアイデアで描かれた作品。

物体O
突如、日本に超巨大「O」型物体が落下して来たら?というワンアイデアで描かれた作品。
とんでもない大ネタに挑むシミュレーションSFかと思いきや、オチの投げっぷりに脱力する。

神への長い道
100ページ弱の中篇。
何不自由無くなり、生きる事に飽食し倦怠しきってしまった人類は緩やかに種としての下降線を迎える。
種としての滅亡が予感された人類の最後のあがきの意味と意義を求める者の物語。

継ぐのは誰か?
本書の半分の分量を占める長篇。
「神への長い道」でのテーマを受け継ぎ、
人類は究極なのか?それとも人類の次に来る者が現れるのか?その相手が現れたら、旧い人類は何をすべきなのか?
という様な問いを発し続ける物語。

伝奇SFと言える臭いを持ち、様々なアイデアを奔放に駆使する作品である。

 

 

この作品集で紹介された著者の短篇はワンアイデアを「これ面白いだろ?」と言わんばかりにぶちまけるタイプの物語。
ぶっちゃけ、話のきれいな展開やオチにはあまり注視していない印象だ。

一転、中篇の「神への長い道」はアイデアとオチの作品としてのまとまりとバランスが絶妙

そして、長篇の「継ぐのは誰か?」ではSFのネタを多数詰め込んで面白い読み物の展覧会的な作品となっている。

これら短篇、中篇、長篇の作品作りへの違いは意識したものだろう。
それを際立たせる為に、編者の日下三蔵はこういう並びを意図したものと思われる。

いずれにせよ、物語としての根幹のアイデアを大事にし、そのSF的なネタを自在に奔放に繰り広げている

読み物としての面白さを追求した作家。
それが小松左京なのだ。

 

生賴範義氏の表紙にて『復活の日』の単行本が復活!

 


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さて次回は小説は50年でも古びなくても、漫画家だと才能が枯渇する!?漫画『終わった漫画家』について語りたい。