エス・エフ小説『地球礁』R・A・ラファティ(著)感想  差別があろうが偏見があろうが、親すら居なくても子は育つ!!?

 

 

 

デュランティ一家、4人の大人に6人の子供達、そして幽霊?一人。彼等はプーカ人。地球人類と和解し、その風俗・風習を理解する為に送り込まれた。しかし、大人達は「地球アレルギー」に犯され、頼みの綱は子供達に任された、、、

 

 

 

著者はR・A・ラファティ
『宇宙舟歌』
『第四の館』
『蛇の卵』
『翼の贈りもの』等がある。

 

本書『地球礁』は何とも言えない物語だ。

言えることは

奇妙キテレツな面白さがある、という事だ。

 

発想が並外れ、というか

誰もがかつて持っていた子供時代の恐るべき発想をそのまま描いている。

 

そして、それが子供に留まらず、物語自体がある種イカレた雰囲気に満ちているのが面白さになっている。

荒唐無稽?
奇想天外!
唯一無二の物語世界を楽しめる。

 

 

以下ネタバレあり


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  • 宇宙人?妖精?

デュランティ一家はプーカ人である。
一応宇宙人らしいのだが、その真偽はハッキリしない。

もしかして妖精かもしれない。
というか、単に宇宙的な視野を持った別の民族なのかもしれない。

解説によると、アイルランド語(ゲール語)を参考にしている所から、アイルランドと関わりがるのかもしれない。

要は、故郷を離れた流浪人が、別の場所で根を下ろそうという話なのだ。

しかし、世の常で、土地の者は異邦人に厳しく当たる。

その土着の者と入植者との軋轢を「地球礁」と言っているのだろう。

 

  • 子供の発想で世界と関わる

デュランティ一家の大人達は、元から持っていた自分たちの哲学と地球の哲学との差異を摺り合わせる事が出来ずに、「地球アレルギー」に罹っている。

しかし、地球生まれの子供達はそれに耐性を持っている。
というか、自分たちを地球に合わせようという発想自体が無い。

むしろ、世界こそ我々に合わせるべきと考えている。
そしてその為に、自分たち子供6人と幽霊一人以外の人類全員抹殺するのもやむなしとさえ言ってのける。

ぶっ飛んだ発想である。
しかし、これは奇異な発想ではない。
誰でも子供の頃は、自分こそ世界の中心だったハズだ

大人ともなれば、社会と自分の本心とのズレに摩擦が生じ、それがストレス(アレルギー)となる場面が大いにある。

しかし、子供にはそれが無い。
自らの欲望の赴くまま、それが上手くいこうがいくまいが、自由闊達に振る舞う

最期の鬼ごっこの連なりなど、よりストレスの少ない人物がストレスの多い者を狩ってゆくのは、欲望の純度こそが強さだと表しているかの様だ。

大人は「他人(世界)との関わりによってどうするか」と考えるが、
子供は「自分がどうしたいか」で世界と関わっていくのだ。

大人は道を示すが、自らを恃む子供にとってはそれすら必要ない。
自分こそが世界なのだ。

 

奇抜な発想ではある。
しかし、自分だってそんな世界を遙か昔は持っていた。

その事を思い出させてくれる一冊だ。

 

 


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さて次回は、親がいるから子は育つ!!漫画『HaHa』について語りたい。