随筆『決断力』羽生善治(著)感想  勝負に生きる者は必読!!勝ちに至る心構えとは!?

 

 

 

将棋をする上で一番の決め手になるものは?それは「決断力」である。対局の中で浮かび上がる数々の可能性。その中から一つを選ぶ、その選択の連続が将棋であり、勝負である、、、

 

 

 

著者は羽生善治
著作に
『羽生の頭脳』シリーズ
『大局観 自分と闘って負けない心』
『直感力』
『人工知能の核心』等がる。

 

2017年12月5日、竜王戴冠。
これにより羽生善治は遂に前人未踏の永世七冠を達成した。

「最強棋士」と言っても過言では無い羽生善治は一体何を思い、思考しているのか?

本書『決断力』には、

羽生善治の勝負に当たっての心構えが余す所無く記されている。

 

勝負の前に何をすべきか?
勝つ為に必要な物は何か?
どの様な思考で戦ってゆけば良いのか?

「将棋」というガチの実戦で磨かれた論理と哲学は

勝負事のみならず、
人生の荒波を泳いで行く為の指標となり得る。

 

将棋というジャンルにおいて、トップクラスの実力を保ち続けている著者の実践的論理的思考法。

本書には、そのエッセンスが詰まっているのだ。

 

 

以下ネタバレあり


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  • 勝負師必携の名著

わたしはゲームが好きである。
特に対人戦が好きだ。

トランプ、麻雀、ボードゲーム、対戦格闘ゲーム etc…
最近はポケモン対戦にハマっている。

対人戦で勝つには、何をすれば良いのか?

まずは「強い行動」を心掛ける事だ。

勝利により近い「勝ちパターン」とは何か?
先ずそれを知る事。

そして、その戦法を採用するのか、
それとも、強い戦法にメタを張る(対処する)のか、
自分に合った方を選ぶのだ。

だが、人間が相手だと、いつも自分に都合の良い場面になるとは限らない。

なので、それに備えて「勝ちへの大局観(道筋)」を予め用意しておく必要がある。

このプランを持っていれば、数少ないチャンスを見つけた時、より勝利への道へ繋がりやすくなる。

これらの事は、私が対人戦をするに当たって漠然と思い描いていた事だ。

そんな折、羽生善治先生の『決断力』を読んでビックリした。
私自身が漠然と思っていた「勝負論」
それをさらに発展拡大して、分かり易く言語化した集大成がそこにあったのだ。

「勝負とはこういう物では無いのか?」
「勝ちへの意識とは?」
「勝負に拘りは必要なのか?」

そういう色々な考え、自分の中で霧に包まれハッキリとは見えなかった道に、
突如サーチライトが当たり、アスファルト舗装した幹線道路が目の前に現れた気分であった。

流石、プロ将棋というガチ対戦を20年も続けた(著作当時)だけの事はある。

私の場合は『決断力』を読んで対戦レベルが一気に上がってしまった
人が苦労して手に入れた物を横から掠め取る様で、正直申し訳無い様な気もするが、事実そうなのである。

対人戦を行っていて、伸び悩んでいる人は勿論、
人とどう付き合ってゆくのかという、コミュニケーションに悩んでいる人、
上司や部下、同僚、取引先や顧客とどう接して行けば良いのか分からない人、
そんな人にも是非読んで頂きたい。

対人戦とは即ち、己を知り、相手を知ること
「将棋」とは、その極地にある「場」であり、
その将棋にてトップを獲った羽生先生の『決断力』には対人コミュニケーションの「いろは」が詰まっているのだ。

 

  • 対戦必勝法とは?

本書『決断力』は200ページの新書である。
しかし、その中身は凝縮している。
正に、省く所など無い名著
目次に格章の副題が載っているが、それを見るだけでも価値がある。

その副題の元、本書による対戦必勝法をまとめてみる。

第一章
勝負に当たっては、精神力が物を言う。
なので、迷いを捨て、シンプルな手を選ぶ事が望ましい。
知識は所持しているだけで無く、実践して初めて活きた物となる。
また、勝負は「格」による雰囲気にも左右される。

第二章
経験に裏付けられた直感力にて、選択の無駄を省いた手は、そのほとんどが正しい。
先入観や凝り固まった価値観からは新しいものは生まれない。
勝負に当たっては事前準備をしっかりとし、大局観を持って臨む
その上で「定跡」から外れた未知の領域へも踏み込む勇気が勝つためには必要である。

第三章
勝負には集中力と、そのコントロールが必要だ。
その発揮には、時と場合により波があり、持続が困難だからこそ、そこにミスが生まれる。
ミスの反省やおさらいは必要だが、検証が済めば後に引きずらない事も重要である。
そして、気力、体力を充実させる事が重要だ。

第四章
数ある情報を全て検証するのは不可能。
選ぶより「捨てる」事で、重要な物を絞り込む
勝負において事前準備による「知識」の習得は必須
データベースを横流しして得た近道は有効だが、自ら遠回りして苦労して得た物は、その過程が他に活きてくる
勝負は相手がいて初めて成立する。
相手を知るコミュニケーションが重要。
また、プランは実践において初めてその有効性が判別出来る

第五章
才能とは、モチベーションの維持、力を持続させる事である。
その為には、細かい成功体験が有効である。
誰でも最初は真似から入る。
そこに、後から自分なりの理解を添えなければならない
また、勉強法は時と共に変化してゆくものだ。

 

ざっと、こんな所であろう。
その詳しい内容は、本文を読めば理解出来る。
興味が湧いたら是非とも読んで頂きたい。

 

野村克也の『巨人軍論』
梅原大吾の『勝ち続ける意思力』
そして、羽生善治の『決断力』。

これらは折りに触れ読み返す勝負論の書籍だが、特に本書は私に合っており何度もページを捲った。

勝負に必要な物は何か?
ベストパフォーマンスを出すにはどうすれば良いか?
相手を知る事の必要性とは?

勝負に迷う時、度々立ち返る羅針盤の様な書籍。
それが私にとっての『決断力』である。

 

以下の二冊も羽生善治の勝負論としてオススメ書籍である

 


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さて次回は、長篇が有名な著者の大局を知る事が出来る短篇集!?小説『イヴのいないアダム』について語りたい。