本『羽生善治論―天才とは何か』加藤一二三(著)感想  藤井四段の快進撃もこの一冊で理解出来る!!?

去る6月20日、「神武以来の天才」と呼ばれた加藤一二三・元名人が引退した。その自他共に認める天才である加藤一二三元名人が、現代の天才である羽生善治三冠(2017年6月27日:記事投稿時)を例に取り、将棋の天才とは何かを語る、、、

著者は加藤一二三。かつての最年少棋士、最年長棋士として将棋界で数々の名勝負を残した。

 

 

 

その、加藤元名人の最年少記録(14歳7ヶ月)を62年ぶりに更新したのが、藤井聡太四段(14歳2ヶ月)である。
奇しくも、藤井四段のプロデビュー戦の相手が加藤一二三元名人であった。

そして、ここから藤井四段の快進撃が始まる。

2017年6月26日、不滅と言われた公式戦連勝記録を塗り替え、その数を29に伸ばした。

この14歳の中学生がなぜここまで強いのか?

その秘密は天才・加藤一二三がもう一人の天才・羽生善治を語った本書『羽生善治論―天才とは何か』を読むと理解出来る。

天才が天才について語った事は、そのまま新しい天才にも当てはまる

 

将棋が分からない人にも、わかり安く書かれてている。
その将棋の天才の秘密、本書『羽生善治論―天才とは何か』で覗いてみよう。

 

以下ネタバレあり

 


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*以降は『羽生善治論―天才とは何か』を参考にして私が推測した藤井四段の強さについて書かれています。
よって、私より将棋に詳しい人が読むと笑止千万かもしれませんが、その点は平にご容赦願います。

 

  • 棋士は天才業

と、本書『羽生善治論―天才とは何か』に書かれている。

さらに、本書で加藤元名人は自分の事を大天才と呼んではばからない。
このメンタリティこそが勝負師たるゆえんであろう。

そして、藤井四段もそれを持っているハズだ。

  • 天才論

加藤元名人は、大天才というものは「無から有を生み出す」者だと言っている。
将棋で言うと新しい戦術を生み出す事だ。

そして、その片鱗は奨励会(将棋プロの登竜門)の時代からあるのだという。

プロ棋士も指した事のない新手が、若い奨励会会員によって先に開発されていたとい事も多々あるらしい。

栴檀(せんだん)は双葉(ふたば)より芳(かんば)し、という言葉がある。
新明解国語辞典によると、「大きくなってからりっぱになる人は、小さい時分からすぐれた所が有るものだ」(「」内抜粋)という意味だ。

加藤元名人は、自分にはその経験があると言う。
そして、羽生三冠もそうだろうと言っている。

将棋のプロは、基本的に同じ人達と何度も戦う事になる。
そこへ、「奨励会」という違うプール(集団)から新しい戦術を持って藤井四段はやってきたのかもしれない。

そこに対戦前、「若輩者の新入り」となめた心持ちで対すると、足をすくわれる事になるだろう。
心理的にも、戦術的にも、実は藤井四段は対戦前から有利を取っているのかもしれない。

  • 盤面外の要素

また、加藤元名人は盤面そのもの意外にも勝敗を左右する要素として「注目度」を上げている。

現在、マスコミが大挙つめかけ、藤井四段の注目度はうなぎ登りである。
これによりさらされるプレッシャーは並大抵ではないが、実は今回の場合は、対局相手の方によりプレッシャーがかかっていると思われる。

普段、プロといえどもその勝敗が一般のニュースになる事は少ない。タイトル戦くらいだろう。
しかし、もし藤井四段に負けてしまったら、連勝記録を献上した相手として全国に名が知られてしまう。
並外れた負けず嫌いの集団と言われる将棋のプロとしては、なんとしてもそれは避けたいハズだ。

加藤元名人も、自分の通算勝利数の更新がかかった勝負では、相手が死に物狂いでかかってきた経験があるそうだ。

対局相手は前のめりでくる。
そこへ、マスコミを大挙引き連れ、藤井四段が現れるのだ。

藤井氏はまだ四段。よって彼の対局相手も普段そこまでタイトルには手が届かない、マスコミ慣れしているとは言えない棋士が多いだろう。

一方藤井四段はプロに成り立て。むしろ今の状況が普通と思っているフシもあるかもしれない。

人に注目されると、「勝ちたい」というより「負けて恥をかきたくない」という邪念が生まれてくる。

つまり、恐らくは若さに任せて伸び伸び指している藤井四段に対し、対局相手は邪念とマスコミで集中力が削がれ普段の力が出せないでいるのだ。

藤井四段自身に実力があるのは確かだろう。
しかし、こういう環境的な運にも恵まれている辺りに、勝負の「流れ」に乗っている様子が見て取れる。

  • 新しい天才

将棋界において、羽生善治氏の存在は絶大である。

数々の偉業、記録を同時代に見られた事は幸運である。

しかしその一方、今後羽生善治氏の記録は破られる事の無い永久不滅のものであると、偉業を称えつつも諦めにも似た寂しさを覚えていたのも確かである。

考えてみれば贅沢な悩みだ。

しかし、今回の藤井聡太四段の登場と活躍はその閉塞感を打ち破るような、「もしかしたら、羽生越え成るかもしれない」という期待と希望を将棋ファンに与えたのだ。

それが、ここまで持ち上げられる理由の一つである。

是非とも藤井四段には、今後も精進を続けていって欲しい。

 

 

本書『羽生善治論―天才とは何か』の内容というより、私の「藤井聡太論」を展開した形だが、同じ天才として論が通ずるものがあると思う。
勿論本書は将棋のみならず、勝負論としても面白いので興味のある方は是非一読をオススメする。


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さて、次回はドラマ『ツイン・ピークス』第5章について解説していきたい。