随筆『中学生棋士』谷川浩司(著)感想  トッププロが語る天才の生まれる秘密!!才能が開花する秘訣!!

 

 

 

加藤一二三、谷川浩司、羽生善治、渡辺明、藤井聡太。自身も中学生棋士だった谷川浩司九段が天才とは、将棋の才能とは、そして藤井聡太とかつての中学生棋士達について語る。

 

 

 

著者は谷川浩司
永世名人(十七世名人)の資格を持つ。
14歳で四段となり、21歳で最年少の名人となった。
日本将棋連盟において数々の役職を歴任している。

 

本書『中学生棋士』は、

今話題の藤井聡太四段の強さの秘密、
彼の様な「天才」とはどの様にして生まれるのかという持論、
そして自身もそうであったかつての中学生棋士達の話

 

を著している。

何しろ、自身も天才と言われた現役トッププロの中の人の話である。

これが面白くない訳がない。

時期柄、

藤井聡太四段の話の部分が多い。

 

しかし、藤井四段の分析をするという事は、

一方で谷川九段自身の勝負観を語ることでもあり、勝負師の思考に触れる事が出来る。

 

これは、「天才」や「才能」について語った部分にも存分に見られ、勝負において必要なものは何か、対戦において勝利するとはどういう事なのかをかんがえさせられる。

将棋に限らず、対戦型の競技が好きな人は勿論、人生においての立ち回りについても、その指標となる名言に満ちた著作である。

 

 

以下ネタバレあり


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  • 藤井聡太論

谷川九段は藤井四段の強さをどう見ているのか?

まず、谷川九段は藤井四段の強さは詰将棋にて形成されたと言っている。

藤井四段は現在(2017/09/27)「詰将棋解答選手権」を小学校六年生当時から三連覇しているという。
そして、「詰将棋」こそは将棋の基礎体力の部分を成し、終盤の寄せを見分ける力を養うものと説く。

これは、「光速の寄せ」と呼ばれるほど終盤の詰めが強い谷川九段自身の言葉であるが故に説得力がある。

そして、藤井四段はバランス良く、将棋の総合力が高いとも言っている。
これは藤井四段の事を話す場合によく聞かれる事で、若いながらも落ち着いた将棋を指している事の表れだろう。

また、インタビューや文章寄稿時の語彙力の高さにも注目している。

これは私の想像だが、恐らく藤井四段は幼少時から将棋に触れ続け、将棋のインタビューにてどう語ればいいのか、雑誌にはどんな文章を書けば良いのかという「将棋脳」が発達しているのではないか

一芸に通じれば全てに通ずる。
先人達の受け答えを吸収し、自然に語彙力までも身に付け、それを自身の「将棋脳」の形成に役立てているのではないかと思う。

 

  • 天才はどの様にして生まれるのか?

そして、藤井四段の事を語りつつ、自身の感覚を交えて「天才」とは何か、どの様にして生まれるのかということを解いている。

「天才」とは生まれながらの才能の事か?
谷川九段はそれに否を唱える。

藤井四段の家庭はごく普通の家庭だという。
将棋のトッププロは数学が得意な人間が多いそうだが、両親はむしろ文系、芸術系な方面の方々だそうだ。

ただ、幼少時の藤井少年が夢中になった将棋。
その興味を阻害する事なく、のびのびと伸ばしていく環境を整えていたという事らしい。

谷川九段はそれこそが大事だと言う。
そして、何かを始めるには、より年若い内に始める事が肝要だと言う。
後の才能の開花に影響すると言うのだ。

若年時、何かに没頭した時の集中力と成長度合いは大人とは比べ物にならないものがある。
それが、幼少時から続けたものなら尚更という訳である。

そしてそれが、強制されたものでなく、本人の情熱によって長く続けられるモノ。
そこに天才が生まれるのだと言う。

谷川九段は、才能の正体は「情熱の維持と鍛錬の蓄積(p.124より抜粋)と解く。
つまり、旧い諺で言うならば、「継続こそ力なり」といいう事である。

 

これを聞くと、「もう自分(や自分の子供)は手遅れだ、、、」とお嘆きになる面々もいるかもしれない。

しかしである。

嘆くばかりで何もしなかったら、それこそ成長が望めない。
何かをしようと「思い立ったら吉日」。
せめて今日から始めて、それを継続していけば、いつか芽が出る時がくる(かもしれない)のだ。
ローマは一日にして成らず」である。

 

  • 勝負師の名言集

「天才」と「才能」の話だけでは無い。
私の様に対戦型の競技が大好きな人間からしたら、示唆に富む言葉も多数ある。

「運がいいことを当たり前だと思うようになったら、その運は逃げてしまう。常に感謝の気持ちを忘れるな」(p.72より抜粋)

上は谷川九段が先輩に言われ、肝に銘じている言葉であるという。

他にも示唆に富む言葉が、本著には多い。

 

勝負論としても楽しめるし、
人生論としてもその指標を見せてくれる。

本書『中学生棋士』は、その題名に収まらないほどの含蓄があり、読む人毎に色々な収穫があるだろう。

 

 

 


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さて、次回は『トラクターの世界史』について語りたい。題名からして既に魅力的な含蓄を含んでいる。