靴職人一家のミゲルは音楽好き。しかし、一家はミゲルの高祖父(ひいひいじいちゃん:4代上)が音楽にて家族を捨てた過去がある為、音楽は御法度だった。ある日、憧れのミュージシャン、エルネストこそ高祖父だと知ったミゲルは霊廟にて彼のギターを弾いたところ、、、
監督はリー・アンクリッチ。
アニメーションスタジオ・ピクサーにて多数の映画作成に関わる。
監督作に
『モンスターズ・インク』(2001)共同監督
『ファインディング・ニモ』(2003)共同監督
『トイ・ストーリー3』(2010)等がある。
主な声の出演は(役名:オリジナル声優:日本語吹き替え)
ミゲル :アンソニー・ゴンザレス :石橋陽彩
へクター :ガエル・ガルシア・ベルナル:藤木直人
エルネスト:ベンジャミン・ブラット :橋下さとし
イメルダ :アラナ・ユーバック :松雪泰子
『トイ・ストーリー3』にて2010年の第83回アカデミー賞で長篇アニメ映画賞、主題歌賞を受賞したリー・アンクリッチ監督。
彼の最新作『リメンバー・ミー』でも、2018年、第90回アカデミー賞長篇アニメ映画賞、主題歌賞を受賞するという快挙を成し遂げました。
観賞前から期待が高鳴りますが、先ずはピクサースタジオ恒例の上映前短篇。
なんと、今回は
アナと雪の女王の短篇アニメ。
いつもは短篇もピクサーですが、今回はウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオが制作している様です。
しかも、
上映時間が22分、結構ガッツリあります。
あ~
アナさん美白だな~
エルサ相変わらず可愛いな~
オラフ大活躍だな~
と、季節外れのクリスマスネタを、ゆるい感じで楽しみましょう。
そして始まる本篇『リメンバー・ミー』。
ぶっちゃけ、開始5分でアナ雪の記憶が吹っ飛びます。
冒頭の「切り抜き絵」風のアニメーションも凝ってますが、
圧巻なのはその質感。
ぬめぬめ!つやつや!!キラキラ!!!
ホント、ぶっちゃけあり得ない。
最早、実写を超えたリアルさがあると言えましょう。
肌のテカリ、極彩色の世界観の凄さ、メキシコ文化の再現、
そして何より、陰影の細かさ、
これ程までに凝った作りのビジュアル、
アニメでは見た事ありません。
正に、現時点での最高峰と言えます。
そして、制作は安心・安全のピクサー・スタジオ。
ストーリーも
子供から大人まで間違い無く楽しめます。
「死者の日」にギターを弾いたミゲルは、どういう訳か生者なのに死者と同じになってしまう!
「死者の日」が終わり朝日が昇りきる前に生者の国へ帰らなければなりませんが、
ミゲルはこれ幸いとばかりに、憧れの高祖父、エルネストを探し始めます、、、
…万人の観賞に堪え得るストーリー、これがどれ程難しいか。
それを、毎回当たり前の様に観せてくれるピクサー・スタジオには頭が下がります。
凄いビジュアル、
面白いストーリー、
そして印象的な音楽も相まって
最後には感動の涙が流れます。
正直、主人公があんまり可愛く無いなぁ、
と最初は思いますが、観ていると全然そんな事が気にならなくなります。
観て損は無い、
それどころか、迷う位なら必ず観るべき作品、
それが『リメンバー・ミー』です。
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『リメンバー・ミー』のポイント
キラキラ、つやつや、圧倒的ビジュアルの説得力
子供から大人まで楽しめるストーリー
ノリが良く、そして感動を誘う音楽
以下、内容に触れた感想になっております
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邦題、『リメンバー・ミー』
本作『リメンバー・ミー』は邦題です。
原題は『COCO』。
何となくカレーを想起しますが、
ミゲルの曾祖母(ひいばあちゃん)のママ・ココから来ています。
「ココ」というのは名前の愛称。
ママ・ココの本名は作中では不明ですが、
メキシコでは愛する人を愛称で呼ぶ文化があるそうです。
で、流石に邦題も「ココ」にすると意味不明になりますので、
日本オリジナルで『リメンバー・ミー』にしたんですね。
これは、本作のテーマとも関わる単語であり、
そして主題歌の題名でもあります。
ぶっちゃけ、原題よりも良いと思います。
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ひいひいばあちゃん…って誰!?
『リメンバー・ミー』では家族が沢山出て来ます。
そして、「ひいばあちゃん」とか「ひいひいばあちゃん」とか言われtも、
「え、何ヒィヒィ喘いでるの?」と一瞬人物関係が分からなくなったりします。
なので、ミゲルから遡る形で登場人物の名前を書いてみます。
ミゲル(主人公)
→父
→エレナ(祖母:口うるさいお婆ちゃん)
→ママ・ココ(曾祖母:ひいばあちゃん:しわくちゃのお婆ちゃん)
→イメルダ(高祖母:ひいひいばあちゃん:故人、ガイコツ、靴職人一家の基礎を作った人)
このイメルダの夫が音楽をしており、家族を捨てたといわれる存在なのですね。
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第二の死
本作『リメンバー・ミー』にて出色の設定は「第二の死」という概念です。
死者は「死者の日」に家族の元へと変えることが出来ますが、
その家族にも忘れられ、お供え物がされなくなると、「霊魂の消滅=第二の死」を迎える、という設定です。
人間は、社会的な生活を営んでいる場合、
誰しも二つの生を生きています。
個人の主観的な生と、
他人から見た客観的な生です。
主観的な生とは、本人が認識している自分自身の事ですね。
客観的な生とは、他人から見たその人の事。
つまり、イメージとか、評判とか、思い出、記憶といったものです。
人はしばしば、
自己認識と他人の期待、イメージとの齟齬に苦労します。
生きている間は、その齟齬をすりあわせたり、
イメージを刷新したりして過ごす事になります。
本人が死亡すると主観的な生が終わる事になります。
しかし、本人が死んでも他人の持っているイメージや評判、記憶といった「客観的な生」は生き続けます。
『リメンバー・ミー』では、その概念を
「死者の日」の黄泉がえりと合わせて上手くストーリーを作っているのですね。
こういう概念は一般的なキリスト教圏よりも、
我々の様に多神教であり、アニミズムを普通に受け入れている国民性の方が受け入れ易いと思いますが、皆さんは如何でしたか?
「故人は死んでも、生きている者の心の中で生き続ける」
とは、言葉にすると月並みで陳腐に聞こえますが、
もしかして祖先や死者は、こんな風に我々を見ているのかもしれないですね。
(因みに、眉毛が繋がっているガイコツは芸術家のフリーダ・カーロ(1907~1954)。メキシコの現代絵画を代表する女性芸術家である彼女は、有名人故に皆に忘れられずにいるのですね)
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死者の日、あれこれ
本作『リメンバー・ミー』では「死者の日」が重要なモチーフとなっています。
これについて、簡単に解説してみます。
「死者の日」は11月1~2日にかけて行われる、日本で言うところの「お盆」みたいな風習です。
とは言え、おどろおどろしいものでは無く、
あくまでお祭りとして賑やかに楽しむ物となっています。
10月31日が前夜祭であり、ハロウィン。
1日に子供の霊が、
2日に大人の霊が帰って来ると言われます。
祖先のガイコツを飾る習慣、
そして、他者のガイコツをも飾る様になり、
それが伝承され、さながらガイコツ祭りの様になっていった様です。
家族は、写真や故人の好きだった物をお供えした祭壇(=オフレンダ)を用意して霊を迎えます。
オフレンダやお墓の前には、霊が迷わない様にマリーゴールドの花びらが撒かれます。
映画の冒頭でも描写された旗はパペル・ピカドという切り絵細工。
ピクサーというか、
ディズニーお馴染みのイカレた表情をしているダンテと呼ばれたシュロ犬。
シュロ犬は邪悪な霊を排除し、死者の霊をあの世に導くと言われています。
(ダンテという名前は、地獄参りを行った『神曲』の作者を彷彿とさせます)
そのシュロ犬ダンテが変身するのが、アレブリヘ。
観光客用の民芸品として20世紀に作られたものだそうです。
意外と歴史は浅かった。
観る前はあまりパッとしない印象だった『リメンバー・ミー』。
しかし、その地味な印象を吹っ飛ばすインパクト、
鮮やかな陰影と極彩色の世界、
まさかのどんでん返しと感動のストーリー、
(イメルダが舞台で歌ったシーンでは、思わず涙が流れました)
そして、印象的な音楽、
そのどれもが高水準。
そして、家族みんなが楽しめて、家族みんなを大切に思える映画。
素直に良い映画だねと言える、『リメンバー・ミー』はそういう映画です。
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さて次回は、メキシコと異文化交流が済んだなら、今度は中国だ!?小説『折りたたみ北京』について語ります。